【解説】太平洋側だけではない津波被害―日本海側も津波に注意を 陸地から震源が近く、短時間で到達することも
今月13日~19日までの期間、国内で震度1以上の地震は、22回発生しました。このうち震度3以上の地震は1回ありました。
▼15日午前6時5分ごろ、茨城県南部を震源とする地震があり、茨城県石岡市や栃木県佐野市などで震度3の揺れを観測しました。地震の規模を示すマグニチュードは4.1、震源の深さは46キロでした。
明治以降、日本海側で発生した津波を伴う地震の中で、最も大きな津波となったのが1993年7月12日の「北海道南西沖地震」です。この地震は、北海道南西沖を震源とするマグニチュード7.8の地震で、震源の深さは35キロでした。北海道から東北地方の広い範囲で震度1~5の揺れが観測されました。震源に近い、北海道の奥尻島には当時、地震計がありませんでしたが被害の状況から、震度6相当の揺れだったとみられています。
また、激しい揺れに見舞われただけでなく、大津波が発生しました。奥尻島では、地震発生からわずか4~5分後には、津波が押し寄せました。奥尻島でおこなわれた調査から、津波の高さは、最大で30mにもなっていたとされていて、青苗地区では、津波と地震後に発生した火災によって、壊滅的な被害となりました。この地震による死者・行方不明者数は230人です。
「日本海東縁部」は活断層が帯状に存在する場所で、過去にもマグニチュード7クラスの大地震が度々発生しています。1993年・北海道南西沖地震、2004年・新潟県中越地震、2007年・新潟県中越沖地震も日本海東縁部で発生したものです。
「日本海東縁部」は北米プレートとユーラシアプレートの、2つのプレートの境界にあり、プレート同士がぶつかり合うことでひずみがたまります。このひずみを解消するために時々、地震が発生します。この場所は陸地からも近く、海域にあたるため、大きな地震が発生すると、陸地でも強い揺れとなるほか、津波も発生することがあります。
2011年東日本大震災以降、日本海側で起こりうる津波に備えるため国は「日本海における大規模地震に関する調査検討会」を設置。この検討会の調査結果によると、日本海側で起きる津波の特徴①「地震の規模のわりに津波が高くなって、津波到達までの時間が早い」。これは、比較的海底の浅い場所を震源とする地震のため、津波が高くなる傾向があります。さらに、断層が沿岸に近いところに多く存在するため、津波が早く到達するのです。
日本海側で起きる津波の特徴②「東北地方の日本海側で発生した津波が中国地方で高くなる可能性がある」。一般的に津波は、震源に近いほど大きくなり、震源から離れていくと小さくなっていきます。
ところが東北地方の日本海側で津波が発生した場合、津波が伝播して日本海に広く伝わっていきますが、日本海中央部~中国地方沿岸にかけては、大和堆などの海底山脈があります。この付近は周辺より、盛り上がっていて、水深が浅くなっている地形です。このため、大和堆などに津波がぶつかり集中し、震源から離れた中国地方で大きな津波となって沿岸に到達することがあります。過去には、1983年・日本海中部地震、1993年・北海道南西沖地震で、震源付近だけでなく、遠く離れたの中国地方の日本海側でも高い津波を観測しています。
北海道から西日本にかけての日本海沿岸に沿って示されている赤い線は、すべて海底にある活断層です。海底の活断層調査は、まだ途上段階で、知られていない活断層は、たくさんあるとみられます。日本海側の沿岸も、どこで地震が発生してもおかしくありません。
地震の専門家・環境防災総合政策研究機構の草野富二雄さんは次のように話しています。
「日本海側で発生する津波は、太平洋側で発生する津波と比べて、陸地から近いところで起きることが多く、津波が到達するまでの時間が早い。テレビやラジオで、津波警報発表を確認してから避難するのではなく、強い揺れを感じたら、すぐ避難してほしい。詳しい情報は避難先で入手するようにしてほしい」