山崎直子さん 独占インタビュー全文
「実は人間は、宇宙でも暮らしていると慣れてきます。私も宇宙はものすごく特別な場所だと思っていましたが、いざ行ってみると、ご飯を食べて、日中は活動して、夜は寝袋で寝て、とそれが日常になってきます。(宇宙は)日常の延長で、あまり特別だと思わないでほしいなと思います」
そう語るのは、宇宙飛行士の山崎直子さん。JAXA(宇宙航空研究開発機構)が主導するビジネス共創プラットフォーム「THINK SPACE LIFE」のイベントにて、日本テレビ「the SOCIAL」榎本麗美キャスターの単独インタビューに応じました。山崎さんが語る、宇宙生活から得られる“コロナ時代の乗り越え方”とは。インタビュー内容を全文掲載します。
(インタビュー:2020年7月16日)
――宇宙生活から得られる“コロナ時代の乗り越え方”を教えていただきたいです。
コロナもなかなか終わりが見えないなかで、不自由な生活が続いていると思います。宇宙船の中と似ているところが多いです。
自由に外に出られないけれども、ネットなどを通じて外の人と繋がることができます。なので、積極的にいつもよりもコミュニケーションを取るということを、宇宙船の中でも、心がけていました。
場所が離れていると温度差が出たり、なかなか真意が伝わりづらいところがあるため、電話なりメールなり補足をするようなコミュニケーションを取ることを心がけていました。
(宇宙では)毎日オンとオフの切り替えが難しくなります。同じ場所で同じ人と接していて、行動範囲が狭くなると、なかなかリフレッシュが出来なくなります。なので、意図的に「今は休む」「息を抜く」「暖かいものを飲む」というふうに、自分でリフレッシュする方法を見つけると良いと思います。
毎日の中で少しずつ変化を見つけながら、この(コロナ禍の)生活は、宇宙船でもそうなんですが、「色々な人に支えられている」ということを感じます。お医者さんはじめ医療関係者の皆さん、社会を保ってくれている皆さん、色々な人たちに感謝を忘れないということを心がけたいと思います。
――実際に宇宙で暮らすとなると、何が重要になってくるのでしょうか。
実は人間は、宇宙でも暮らしていると慣れてきます。私も宇宙はものすごく特別な場所だと思っていましたが、いざ行ってみると、ご飯を食べて、日中は活動して、夜は寝袋で寝て、とそれが日常になってきます。(宇宙は)日常の延長で、あまり特別だと思わないでほしいなと思います。
ただ、重力や環境が違い、勝手が違ってきます。かつ、宇宙船の中だと何かあったときにすぐに助けが駆けつけて来られません。自分たちでより準備をしておくことが大切です。
――コロナの自粛期間中に山崎さん自身が得られたものや再発見したことはありますか。
家の中で自粛をしている生活が続いたとき、最初は“だんだん慣れてきたな”と思うのですが、知らない間にオンとオフの切り替えが難しく、疲れが少しずつたまってきていると途中で思いました。
オンラインでも色々できますが、オンラインならではの疲れ方は、日常のいつもの疲れ方と違うな、と感じました。より自分の五感を使い、自分の体に耳をすますことが大切だと改めて思いました。
?地上と宇宙とがボーダーレス、連続していく時代に入ってくる
――山崎さんから見た、今の日本の宇宙開発と今後の展望は、なにかありますか。
今の日本の宇宙開発は、これからもっともっと利用を広げよう、社会に役立っていこう、という方向にいます。これからだと思います。特に、人が宇宙に行くという時代がすぐそこまで迫ってきています。
そうなると、今まで宇宙とあまり関りがなかった「衣食住」色々な分野の方々と宇宙との接点が増えてくると思います。地上と宇宙とがボーダーレス、連続していく時代に入ってくると思いますので、そうした目で宇宙を少し身近に見てもらえたら嬉しいです。
――これから宇宙で人が暮らすとなると、色々な職業の人が宇宙に出ていく時代が来るということですよね。
そうですね。「宇宙飛行士」という一言では括られなくなると思います。
――世界の宇宙開発はスピード感がすごくあると感じるのですが、日本が負けないためには何が必要になってくるのでしょうか。
宇宙開発の予算でいうと、日本の予算はアメリカの10数分の1。ヨーロッパに比べても数分の1という規模です。その中で、他の国々に負けないように、最先端の位置を保っていくためには努力が必要です。
日本は、いわゆる宇宙企業だけでなく、その周辺の今まで宇宙とは関わりのなかった企業、例えば自動車・建設業界・衣食住も含め、ネットワークづくりが進んできていて、それが強みだと思っています。
そうしたネットワークをより強化していくこと、宇宙と地上の境を極力少なくして、宇宙の技術を地上に生かす、地上の技術を宇宙に生かす、その流れを作っていくと、これが日本の強みになっていくと思います。
――宇宙での暮らしを考えたときに、地球の暮らしも良くなっていくということでしょうか。
はい。逆にそうしていかないといけないと思います。食べ物ひとつとっても、宇宙での食事を考えると、保存がきく、栄養価が高い。それは地上での食事、防災食や病院食といった色々なところに役立っていくはずです。その連携を取ることが大切だと思います。
――未来の世界にワクワクしますね。
そうですね。