スパコンが検証「座る場所」と感染リスク
■感染経路として多いのは?
まず注目したいのが「感染経路」です。東京都による最新のモニタリングの結果、
10月5日(月)までの1週間で、最も多かった感染経路は、1位が「家庭内」(同居30.2%)、2位が「施設」(16.7%)。次いで3位が「会食」(13.2%)でした。
20代から30代に限ると1位が「会食」です(20.5%)。普通に生活していて他人から感染する機会は、会食が多いと覚えていて損はありません。会食での感染について、最新の研究結果が国立感染症研究所から発表されました。
■カウンターのある店での感染事例
まずは、食事を目的とした「カウンター」がある店で感染した事例です。コロナの発症者はカウンターの真ん中に座っていて、この人から感染が広がったと考えられています。感染したのは、「右隣の人」「1人挟んで左の人」「店員さん」の3人でした。
ただ、このお店では調理用の大きな換気扇があり、部屋全体の換気ができていたそうです。
では、なぜ感染が広がってしまったのでしょうか?
原因の1つは、全員マスクを着用していなかったこと。
また、知らない隣の人とも気軽に会話する雰囲気のお店だったことから、会話をしながら食事をしていたということです。
原因のもう1つは「距離感」です。このお店は隣の人と腕が当たるほど距離が近い状態でした。発症者距離が近い「右隣の人」は感染した一方で、カウンターの向こう側にいた店員は感染しませんでした。
では、例えば4人で食事に行ったとき「正面」「となり」「斜め前」で誰が一番飛沫を浴びやすいのでしょうか?
この疑問に答えてくれたのが世界一のスーパーコンピューター「富岳」です。
■「富岳」で検証 座る場所に注意
飲食店でマスクを外して会話すると飛沫がどうなるのかスパコン「富岳」でシミュレーションを行い、検証しました。
4人がけのテーブルで感染者が他の3人に同じように均等に話しかけたとすると、「正面」の人には口から出た飛沫のおよそ5%が届きました。
これに対し、「隣の人」に到達した飛沫の割合は25%以上でした。正面の約5倍という結果になりました。そして、一番少なかったのは「斜め前の人」です。真正面の人と比較すると4分の1程度でした。
正面だと思った人も多いかもしれませんが、感染者がみんなに均等に話した場合、やはり隣に座っている人が一番飛沫を浴びます。最も少ないのは「斜め前の人」ということになりました。
なるべくお互いの方を向いてしゃべらないことが大切です。また、食べ終わったらすぐマスクをすることが必要です。
■別の感染事例
続いて、母親と子ども2人、甥の4人のケースです。
母親の正面に座っていた甥に対して、母親はスプーンで自分のおかずを食べさせていました。この母親が発症者で、甥は陽性となりました。また、母親の隣にいた子どもも陽性でした。
一方で、母親の斜め前の子どもは自分でご飯を食べていて、陰性でした。
やはり、同じお皿や大皿をシェアするのは気をつけなければいけません。
■「ちゃんこ」は「ちゃんこ」でも・・これから「お鍋」のシーズンですが、お店側も工夫をしています。
両国にあるちゃんこ鍋のお店では、大きな鍋を数人でつついて食べるのではなく、感染予防のため1人用の小さな鍋でのメニューを増やしたそうです。その名も「ちゃん個鍋」。
客数が例年の半分ほどに落ち込む中、売れ行きは好調だということです。
■冬に向けて「湿度」と「飛まつ」の関係
そして、これから冬の季節ということで、湿度に関して気になる研究結果があります。
富岳で「湿度」と「飛まつ」の関係をシミュレーションしたところ、湿度90%のオフィスでせきをした場合、飛沫の2%前後が届くのに対して、湿度が30%だと約3倍の6%近く届いたということです。
乾燥すると飛沫が蒸発して、エアロゾルと呼ばれる小さな粒子が増えます。一方で、湿度を高くすると大きな飛沫がテーブルの上などに落ちやすいという結果も出ています。
冬場は加湿器などで湿度を上げるのと同時に、よく触るテーブルやスイッチなどをきちんと消毒するのが効果的とみられます。
(2020年10月14日 16時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)