思わぬ敵…紅葉や秋の味覚、クマ出没に影響
ナラやシイの木に虫がすみつき、枯れてしまう、いわゆる「ナラ枯れ」が全国に広がっています。見頃をむかえた紅葉や、秋の味覚に影を落とすだけでなく、いま急増するクマの出没にも影響を及ぼしていました。
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赤や黄色に色づき始めた葉、色鮮やかな秋の装いを楽しめる季節ですが、ある異変が起きていました。
静岡県御殿場市の公園。本来、紅葉が楽しめるのは来月ですが、一足早い色彩の変化が。実はこれ「紅葉」ではありません。近づいてみると、葉っぱが枯れてしまっています。
なんと、葉が枯れて変色していたのです。虫がすみ着き、樹木が枯れる「ナラ枯れ」。
富士山樹空の森・勝間田英実支配人「枯れ始めたのは、今年の夏前くらいになります。本当に1年2年たったら、全部枯れてしまう勢い」
こちらの公園では、紅葉シーズンを前に184本の木が枯れてしまったということです。
各地で発生している「ナラ枯れ」。鳥取県大山の高原では、過去最悪のペースで被害が拡大。
秋田県と青森県に広がる世界自然遺産、白神山地のふもとでも被害が確認できました。
さらに「ナラ枯れ」は住宅街にほど近い場所でも。
厚木土木事務所東部センター 道路都市課・古河雅之課長「これがナラ枯れの木です」
神奈川県座間市の公園では、去年の10倍を超える、260本以上の木が被害に。枝の落下などの危険がある場合、伐採するということですが…。
古河雅之課長「多くの木を伐採するのにも費用がかかるので、どう捻出するかが課題」
対策が急がれる中、費用や時間など課題も多いということです。
こうした中、民有林など市内全体で7000本の被害が推定される御殿場市では…。
静岡県御殿場市 農林整備課・芹澤光人さん「木を伐採する費用・焼却処理(など)にかかる費用の2分の1の補助をする」
伐採や虫の駆除にかかる費用の一部を補助する制度を創設。神社やゴルフ場などから、あわせて50件ほど問い合わせがあるということです。
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行楽シーズンに影を落とす「ナラ枯れ」。思わぬところにも影響を。
原木しいたけ農家・森野弥寿次さん「こんなに枯れると、やる気をなくすというか、がく然とするしかない」
30年にわたって、伊豆市で原木しいたけを育てる森野さん。その栽培場で「ナラ枯れ」が発生したのです。
森野弥寿次さん「原木しいたけはどうしても一番の天敵は直射日光、直射日光にやられてしまうとホダ木が死んでしまうから、しいたけが採れなくなってしまいます」
直射日光の遮断が欠かせない原木しいたけ。「ナラ枯れ」で日差しが届いてしまうといいます。
原木しいたけ農家・森野弥寿次さん「(しいたけを)移す場所がないから、これからどう対策したらいいか、わからない状態」
来年以降のしいたけの生育に影響がでるかもしれない、ということです。
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さらに、「ナラ枯れ」はあの動物にも影響が。
日本ツキノワグマ研究所 米田一彦理事長「(ナラ枯れで)凶作になると、山奥に熊のえさが何もない状態になる。これが一番の出没要因で、奥にいる熊が一歩里に近づくと」
今年、各地で目撃されている熊。さらに「ナラ枯れ」が深刻化すると、今以上に熊が出没することも、考えられるということです。
自治体は被害拡大防止に取り組んでいます。