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ウクライナ避難学生の夢と、先の見据えた支援策を

2022年6月2日 19:40
ウクライナ避難学生の夢と、先の見据えた支援策を
イラさん(仮名) ウクライナの避難先から

ロシアによるウクライナ侵攻が始まり、はや3か月。戦禍を逃れ、留学生として日本に避難しようとするウクライナ人学生がいます。彼らと向き合う支援団体は「日本に来ることが唯一の希望の光のよう」と話します。留学生を受け入れる動きが進む一方で、新たな課題も。「唯一の希望の光」を守るために必要な支援とは?

■将来の夢は外交官 「ウクライナと日本の関係を発展したい」

4月25日、難民の立場にある学生への奨学金の授賞式が東京都内で開かれました。

流ちょうな日本語で夢についてオンラインで語ったのは、ウクライナから来日予定のイラさん(仮名)。小さい頃にみたアニメをきっかけに日本に興味を持ち、高校生の頃から日本語を勉強し始めました。

ウクライナの大学では国際関係を学び、去年卒業の際には日本とロシアの北方領土の交渉に深く関心を抱き、研究のテーマにしました。その理由には、2014年のロシアによるクリミア半島の併合に異議を唱えたウクライナの歴史があるといいます。

3か月以上続くロシアによる侵攻で、今もウクライナで避難生活を送りながら来日に向けて出国の準備をしています。

イラさんは来日後、2年間語学学校に通うことができます。将来は外交官になりたいという彼女は、語学学校卒業後は日本の大学に進学して国際関係について学び「ウクライナと日本の関係を発展させたい」という夢があります。

■日本への憧れ――来日が唯一の希望の光

イラさんの来日を支援している、一般財団法人パスウェイズジャパンに話を聞きました。ウクライナとリモートで日本語学校応募者の面接をしている石井宏明理事は、応募者の様子をこう話します。

「人生において多くを奪われた状況で、昔から興味のあった日本に来ることが唯一の希望の光のよう」

そして中には、日本に過大なまでの期待や憧れを抱いている人もいて、外国人が1人で日本で暮らすのがいかに大変かを説明しても、ほとんどの人が「それでも日本に行きたい」と話すそうです。

また、避難学生の場合、ほとんどが単身での来日で、残してきた家族の心配や「自分だけが逃げてきた」と罪悪感を持つ人も多く、そうした不安や戦禍を逃れてきたことによる体験から、PTSDを抱えている場合もあったりとメンタルケアが必要とされています。

■日本での自立――求められる就業ビザのためには

一方で、日本の大学に入れれば一安心というわけではありません。

文部科学省の、ウクライナ人留学生への特例支援の奨学金制度や、ウクライナからの避難学生を受け入れ支援している大学の多くは、期間が1年の交換留学生や聴講生で、現段階で卒業資格を得られるものは多くありません。

そして学生たちが自立しようと日本で就職したいと希望した場合、就業ビザが必要となります。

そのほとんどが「技術・人文知識・国際業務」の枠で、このビザは雇用主が専門スキルがあるものと認めて正規雇用する事が前提で、一般的には専門学校か大学を卒業していないと、ビザの取得は難しいとされています。

そこで上智大学では、卒業までの道筋を示すことにしました。

将来のキャリアに関する選択肢が少しでも具体的なものになるようにと、10人を来年9月末まで非正規生として受け入れ、その後、在学希望者には編入・入学試験を行い、合格した学生は次の学期からは正規の学生として受け入れることにし、学位をとる事を可能としました。(正規生になってからの学費等の支援については検討中)

留学生の将来を見据えた、自立できるように道筋をたてた断続的な支援が必要とされています。