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【解説】不足する看護師 自衛隊に派遣要請

2020年12月7日 22:14
【解説】不足する看護師 自衛隊に派遣要請

医療体制がひっ迫しつつある北海道や大阪に、自衛隊の看護師が派遣される見通しです。これがどういうことなのか解説します。

■感染者・死者数 過去最多の都道府県も

6日に全国で新たに確認された新型コロナウイルス感染者は2025人。広島と大分では過去最多を更新し、山形は過去最多に並びました。死者数は31人で、北海道では15人と過去最多となっています。
重症者数は5日時点で519人となり、地域によっては重症者の病床が埋まりつつある深刻な状況です。

■重症者すぐに入れる病床 公表の使用率よりも深刻

12月4日に厚労省が発表した「重症者の病床の使用率」では、埼玉・東京・神奈川・愛知・奈良・兵庫が政府の指標で「ステージ3」相当にあたり、特に東京は49%で「ステージ4」の一歩手前です。また、大阪は57%にのぼり、最も深刻な「ステージ4」相当となっています。

ただし、このデータは重症者向けに確保しているベッドをどれだけ使用しているかという数値で、病床が空いているからといって今すぐに使えるとは限りません。「今すぐに使える病床」に限ると、使用率はさらに上がるとみられています。

大阪では、重症者がすぐに入院できる病床の使用率は『86%』に達しており、ほぼ埋まっている状況です。

■大阪 看護師不足で自衛隊に協力要請

こうした中、大阪が臨時に設置した重症者の専門治療施設「大阪コロナ重症センター」が7日、公開されました。
「大阪コロナ重症センター」は、府立の医療センターの駐車場にプレハブでつくられ、30床の全てに人工呼吸器が備えられているほか、肺を撮影するCTも用意されており、12月15日から受け入れが始まります。

しかし、必要とされる看護師が130人なのに対し、現在、約80人しか確保できておらず、看護師不足という深刻な課題があります。
吉村知事は他の自治体などに看護師派遣の協力を求めているほか、自衛隊にも要請したことを明らかにしました。

大阪府・吉村知事「自衛隊につきましては、昨日防衛大臣に要請しました。数名程度は派遣をいただけるんじゃないかということで今調整しています」

■北海道でも自衛隊の派遣要請

自衛隊に派遣要請するのは大阪だけではありません。
北海道と旭川市も、自衛隊の看護師の派遣を政府に要請することを決定しました。
旭川市の吉田病院では大規模クラスターが発生していて、これまでに患者や職員など184人が感染し、医療体制のひっ迫が続いています。

菅首相は7日、「自治体から要請があれば、自衛隊を直ちに派遣できる体制を整えており、政府としては最大限の支援を行いたい」と述べ、災害派遣の枠組みで対応する方向になっています。

■「自衛隊の看護師」とは?

防衛省によりますと、自衛隊の看護師は全国に約1000人いて、自衛官の一員として、陸上自衛隊では「看護官」と呼ばれています。全国16か所の自衛隊病院、全国の基地や駐屯地の医務室などで看護師業務に携わっていて、病院勤務の方は一般の看護師と業務内容に大きな変わりはないそうです。

ただ、自衛官ですので特別な訓練も行っています。
2020年9月、自衛隊中央病院でオリンピックでのテロ発生を想定した訓練が行われました。搬送される患者がコロナに感染している可能性も念頭に入れて、防護服を着て活動する様子もみられました。
こうしたテロに加え、災害時に緊急派遣に備えた野外病院の訓練もあり、任務の延長上には常に国の有事が念頭にあります。

頼もしい存在ですが、この看護師の皆さんも地域医療に携わっており、このような方々まで派遣せざるを得ない状況まで悪化してきているとも言えます。

自衛隊の看護官はコロナに関する任務にこれまでもあたってきました。
2月に「ダイヤモンド・プリンセス号」に自衛隊が派遣された際には、看護官のべ200人が含まれていました。その後、8月にも沖縄の医療機関を支援するため看護官約20人が派遣されています。

■“勝負の3週間” 国民はどう感じている?

“勝負の3週間”まっただ中ですが、国民はどう感じているのでしょうか。

NNNと読売新聞がこの週末に行った世論調査では、「GoToトラベル」については「いったん中止する方がよい」が57%、「やめる方がよい」が20%で、合わせて8割近くになっています。年末年始の旅行や帰省についても「自粛すべき」が75%と圧倒的多数でした。人が動くとウイルスも動くといいますが、移動を控えようという人は多くなっています。

医療崩壊させないために自衛隊も含めて連携して対応にあたっている医療現場に思いを寄せて、一人一人が感染対策にあたっていかなければなりません。

(2020年12月7日16時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)