令和3年皇室のゆくえ-1年を振り返って
「新型コロナウイルス感染症の拡大は人類にとって大きな試練」「私たち皆がなお一層心をひとつにして力を合わせていくことが大切」。2020年、天皇陛下が繰り返し述べられてきた言葉だ。
新型コロナウイルスのまん延は、人々の暮らしとともに皇室の活動にも大きな影響を与えた。外出を伴う公務は多くが中止や延期になり、被災地お見舞いのように現地に行き、直接触れ合えない中で、令和の皇室はどう国民の気持ちに寄り添えるのか、模索が続いた1年だったと思う。
前年に天皇陛下の即位に関する儀式や行事が全て終わり、いよいよ新天皇皇后としてのご活動が本格化する年になるはずだった。しかし、新型コロナが感染拡大をみせる中で、2月23日に皇居で予定されていた天皇陛下60歳の誕生日一般参賀の中止が決まった。日本ではまだ大きな行事の取りやめは行われておらず、この中止には、国民の健康を守りたいという陛下の強い思いがあったと聞く。
その後、4月に政府から緊急事態宣言が発令された。この間、宮内庁では、天皇陛下による国民に向けたビデオメッセージも模索されたというが、政治に関与することにならないかなどの配慮から見送られることになる。
そして、2021年の元旦に、陛下は一般参賀でのお言葉に代わるものとして、初めてのビデオメッセージを寄せられることになった。
■天皇皇后両陛下のオンライン公務
天皇皇后両陛下のオンラインを活用した公務は、11月から始まった。日本赤十字社の全国4つの病院と、お住まいの赤坂御所をインターネットで結び、医療スタッフと懇談された。
両陛下は何度も「大変でしたね」と話しながら、現場で働く人たちの話に耳を傾け、心のケアについても質問を繰り返されていたという。
東京だけでなく、北海道や沖縄、福島の病院とつないだこの形は、現地に行かなくても交流できるというオンラインの利点を生かしたもので、その後の高齢者週間にちなんだ訪問(大分県と東京・渋谷区)や、障害者週間にちなんだ訪問(長野・塩尻市)にも生かされていく。
これからも、オンラインでの「ご訪問」は、大切な交流の機会となりそうだ。
■皇后さま57歳誕生日でメッセージ
皇后さまは、2004年に適応障害と診断され、体調を整えながら公務を続けられている。12月9日、57歳の誕生日を迎えるにあたり、文書で感想を寄せられた。
「命の大切さ」に思いを寄せ、社会問題に触れ、「国民のお一人お一人が、幸せであっていただきたいかけがえのない存在」とつづられた文章には、随所に「皇后さまらしさ」がみられた。
1920年頃に世界的に流行したスペインインフルエンザに触れたことも興味深い。上皇さまも、感染がどのように収束したのかについて強い関心を持たれていると聞く。
天皇陛下は歴史の専門家であり、災害についても研究を続けていて、常々過去から学ぶ大切さについて語られている。皇后さまの文書は、これまでにも感染症の試練を乗り越えた過去があることを思い起こさせ、困難の中で生まれる新しい取り組みや、人と人との絆に願いを込められたものだった。
■2021年愛子さまは成年皇族に
天皇皇后両陛下の長女、愛子さまは現在、学習院大学1年生で、他の学生と同じようにオンラインでの授業が続いている。大学入学後、キャンパスに行かれたのは、1回だけ。その時にはカメラ取材に応じ、コメントで新型コロナに触れるなど、人々のことを思う皇族として成長した姿を見せられた。
2021年12月には、愛子さまは20歳の誕生日を迎えられる。成年皇族としてのご活動に期待が寄せられている。
■秋篠宮ご夫妻はいち早くオンライン取り入れ
秋篠宮ご夫妻は、コロナ禍の春から積極的にオンラインでの公務を取り入れられてきた。長女の眞子さま、二女の佳子さま、長男の悠仁さまとともに、ご一家であらゆる分野の人たちから話を聞かれた。
秋篠宮さまが皇位継承順位第1位の「皇嗣(こうし)」の立場になられたことを内外に示す「立皇嗣(りっこうし)の礼」は、1度延期されたものの、規模を縮小して11月に行われた。これで代替わりの儀式は全て終了となり、秋篠宮ご夫妻は、宮中祭祀(さいし)では装束に着替え、殿上(でんじょう)で拝礼をされるようになった。
一方、関連行事である伊勢神宮などへの参拝は、再びの感染拡大により、2021年に持ち越されている。
■眞子さまご結婚問題
延期が発表されている眞子さまと小室圭さんとのご結婚については、秋篠宮さまが11月の記者会見で、「結婚を認める」と明言された。しかし、秋篠宮さまは「結婚と婚約は違う」とも述べ、母親の金銭トラブルが報じられてきた小室さん側に見える形での対応を求められた。
アメリカに留学中の小室さんのロースクール卒業は5月の予定で、2021年はご結婚に向けた進展があるのか注目される。
■上皇ご夫妻は仮住まい先での新年
上皇ご夫妻は2020年3月に、皇居から東京・港区高輪の仙洞仮御所に引っ越された。初めて高輪で迎える新年となる。新型コロナの感染拡大に配慮し、引っ越し後に皇居以外に外出されたのは、創建100年の明治神宮参拝だけだった。2021年は、ご結婚後に過ごされた赤坂御用地への引っ越しが予定されている。
コロナで一変した人々の暮らしの中で、令和の皇室は模索が続いている。天皇陛下は、2021年の元旦に初めて国民に向けて新年のビデオメッセージを寄せられる。一般参賀が行われない代わりとなるお言葉だ。
この先、どのように国民の気持ちに寄り添われていくのか。新しい時代の皇室は3年目、まだ始まったばかりだ。