五輪史上初ホストタウン レガシー残せる?
史上初の延期となった東京オリンピック・パラリンピックまで約7か月。海外の選手団を受け入れる「ホストタウン」の自治体はいま、期待と不安が交錯している。新型コロナウイルスが収束を見せない中、五輪史上初の試みである「ホストタウン」事業はレガシーとして何を残せるのか?
■選手受け入れに「期待」と「不安」
東京・東村山市は中国のホストタウン。女子サッカーと卓球の選手を受け入れる予定だ。市内のスポーツセンターの入り口には、中国のホストタウンであることを市民に知ってもらうためのラッピングが施されている。
東村山市は、中国・蘇州市と2004年に友好交流都市として締結し、教育を中心に交流を深めてきた。「ホストタウン」になってからはサッカーを通じ、互いの国を行き来。日本がマスク不足のときには中国側がマスクの支援もしてくれたという。
東村山市東京オリンピック・パラリンピック推進課の川崎基司課長は──
川崎課長「市民と選手が安全に交流できることがかなえば、ぜひ行いたい。市民の方にご理解いただくことももちろんですし、すべての面に対してコロナ対策をこうじなければならないという所は難しい点です」
オリンピック選手との交流に期待する一方で、やはり不安は「コロナ対策」。中国の競技団体から「大会が本当に開催されるのか不安だ」という声も届いているという。
東村山市は清瀬市と連携しPCRセンターを開設していて、一日に8人の検査ができる。しかし、団体での受け入れとなると特別な検査体制を整えなければいけない。
川崎課長「いち自治体では医療・検査体制の受け入れが難しいと考えているので、国・東京都にご支援いただきながら構築できれば」
市では安全を最優先にしながら受け入れ準備を進めていくという。
■橋本五輪担当相に聞く 2020年は「灯」
橋本オリンピック・パラリンピック担当大臣に、史上初めて取り組む「ホストタウン」の意義、コロナ禍での東京大会についての思いを聞いた。
橋本大臣の2020年を表す漢字は「灯」だという。
「3月にギリシャから聖火が到着し、1年延期になっても帰ることなくずっと日本にいてくれている。IOCのバッハ会長が暗いトンネルを抜けた先の希望の灯が見える東京大会にしたいというふうにおっしゃっていたが、まさに私はこの東京大会を成功させるために灯であり続けたい」
ホストタウンの医療・検査体制の不安にはどうこたえるのか?
「(自治体のみなさんは)医療体制を確保して対応しなければならない。その一方で地元住民のみなさんにしっかりとした医療というものが提供できるのかが一番心配なんだろうと思う。医療体制が崩壊しないようにしてほしいということは当然、国がしっかりと行っていかなければならない取り組みなので、その不安にしっかりと寄り添いながら本当に安全なんですと言える東京大会が一番大事だと思う」
橋本大臣はこれまでオンラインでの各自治体の首長との意見交換をはじめ、福島県や栃木県などを訪れホストタウンの取り組みを視察してきた。
ホストタウンに取り組む意義とは。
「一番やってよかったというか、さらにこれを進めていきたいと思ったのは、子供たちの力です。小学生や幼稚園生もそうだが一生懸命に相手国の文化を自ら知って、それを連携してお迎えしようというおもてなしの交流事業も考えていただきましたが、自分たちの街の素晴らしい農産品を育て、製品化しレシピをつくって選手にふるまおうと子供たちが考えるプレゼンする力が素晴らしいと思ってみていました」
「共生社会ホストタウンでも、障害をもった選手を受け入れるときに、いかに選手のすごさということと同時に自らをもって障害と向き合う。障害がある人に対して街全体がどのようにユニバーサルデザイン、街づくりにしていけばいいかということを、若い生徒さんたちが参画していこうという意欲が非常にあふれでている姿をみて、これこそがホストタウンのやる意義と価値だと教えてもらったような所がたくさんあるんですね」
「これから相手国とさらに深い交流を進めていってもらえるような、そんな夢を描いてもらえたらいいなと思います」
新型コロナウイルスの感染拡大でいまだ聞こえる「開催できるのか」という国民の声。どう理解を得ていくのか。
「不安に思ったり、こんなときにやるべきではないという方々の声も大事にしないとと考えた1年であったわけですが、スポーツの持つ力は、私は逆にこういうコロナ禍だからこそ大いに活用すべきなんだと思う。東京大会を通じて、スポーツの夢・力が希望に変わり、もうひとつは東京大会を見に来た方、あるいは国民のみなさんもそうですが、世界中のみなさんが東京大会を通じて、日本がやっている環境問題や文化の取り組みをすべて融合させた形の中で、いま世界が直面する大きな課題解決に成熟した国家として東京大会をやる意義がここにあるんだということを発信していくことができれば、やってよかったなというふうに思ってもらえるのではないか。日本だからこそやれたんだというものにしたいなと思う」
■開会式まで7か月
オリンピック開幕まで7か月、感染対策と機運醸成。その両立をいかにはかるのか、課題が待ち受けている。