どうなる?バレエなど古典作品のジェンダーや人種・民族のバイアス

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――古典バレエにはジェンダーバイアスの観点でどのような特徴がありますか?
19世紀の古典バレエというのは、「男性が強くて女性が弱い」、「男性が女性を助けて、女性が男性に助けられる」という物語がとても多いです。例えば、「白鳥の湖」は悪魔に白鳥の姿に変えられてしまったお姫様を王子様が助けようとする話。「眠れる森の美女」は、悪い妖精に100年間眠らされたお姫様を王子様が助ける話。他にも、「海賊」、「パキータ」、「ライモンダ」など、有名な古典作品ですが、いずれも男性の主役が、危機一髪のところで女性の主役を助けるという話になっています。
もう一つ「女性が恋愛において、男性に裏切られる」というパターンが大変多いという問題があります。例えば、「ジゼル」という古典バレエの傑作は、主人公の女性が男性に裏切られたことを知ってショックで死んでしまうという話です。他にも、「ラ・バヤデール」、「ラ・シルフィード」といった名作も、いずれも男性が女性の主役に愛を誓っているにもかかわらず、他の女性と結婚してしまうというような話になっています。これらは悲劇のバレエですけれども、コミカルな場合でも「ドン・キホーテ」や「コッペリア」といったバレエにおいて、男性は恋人がいるにもかかわらず、恋人以外の女性に目移りをするというような展開になっています。
なぜこうしたジェンダーバイアスが生じてるかというと、いずれも100~150年以上前のヨーロッパの男性中心社会で作られたということが背景にあります。当時の観客というのは、男性のブルジョアジー(資本家階級)たちでした。そのため男性目線のストーリーになっていると言えると思います。ただこれは、バレエに限らず、古典の文学作品であったり、シェイクスピアのような演劇であったり、オペラであったり、あるいは日本の歌舞伎においても、そういったバイアスは存在しますし、ジェンダーバイアスだけじゃなくて人種や民族のバイアスというのもかなり含まれていることは指摘したいと思います。