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辻愛沙子「わからない、と言える学び場を」

2021年1月30日 18:56
辻愛沙子「わからない、と言える学び場を」

「社会の変わるスピードが速すぎて、“大人の学び場”が少なくなっている」。クリエイティブディレクターの辻愛沙子さんは、そう指摘する。特に、SNSの言論の場に関して、「変化」を感じているという。

■"賢い人ほど口を閉ざす" SNS空間

広告の制作・プロデュースやイベント企画、メディア発信などを通じて、社会課題をクリエイティブの力で変えようと取り組む辻愛沙子さん。日本テレビ系報道番組『news zero』の水曜パートナーでもあり、社会をよりよく「アップデート」するために精力的に活動している。辻さんは、この半年間で “変化が速すぎる社会ゆえの弊害” が見えてきたと言う。

「SNSが出てきて言論の場は活発になっている一方、社会のアップデートのスピードが速早くなりすぎて、一人ひとりがついていけてないということが起こっている」

例えば、ある表現に「傷ついた」と誰かが声を上げることや、時に「炎上」をきっかけに社会が変わること。そこから学んでいくことの大切さも強調する。しかし、辻さんが気になっているのは、「知らない」ことを悪ととらえがちなSNS社会の風潮だ。

「わからなくていいと思っているのではなく、本当は理解したいし、知っていないと誰かを傷つけてしまうかもって思っているんだけど、それを表で言うと『わかってない』って言われるんじゃないかと思って口をつぐんでしまう人がすごく増えた」

特に、ここ半年ほどのSNSの空間でその傾向が強まっていると辻さんは感じている。「古い」というレッテルを貼られることを恐れるあまり、「知らない」ことを大人が堂々と言いづらい社会。あらゆる物事が二項対立的に語られ、「わかりやすいもの」ほど拡散されることの多いSNS空間では、"賢い人ほど口を閉ざす" という現象が起きていると指摘する。

■自分自身のために「教えてほしい」と言える勇気

しかし、そんな社会では適切に議論が喚起されず、社会のアップデートの早さによる溝が永遠に埋まらない。そんな中で辻さんが新たに気づいたのは、「人からどう見られるかではなく、自分自身のために学びたいと思えること」の大切さだという。

ある広告がSNSで炎上していたとき、それを見た友人から個人的に「これの何が問題なのか教えてほしい」という相談があった。その友人は普段から周囲に配慮する言葉選びをしている印象があったという。だからこそ辻さんは、そんな人でも素直に知らないことを認め「知りたい」という姿勢を示したことに驚いたそうだ。

「教えてほしい、と言えることは本当に素晴らしいことだと思います。その時わからなかったから、間違える可能性があったからといって、自分の知らない視点を否定したいわけでも、揶揄(やゆ)したいわけでも、誰かを傷つけたいわけでもない。ただその時点にその視点がなくて、気づいてないだけ。誰にでも気づけてない視点があると思ったんです」

誰にでも気づけていない視点がある――。辻さんは自身の例を語る。

「例えば私は、たまたま右の耳が聞こえづらいので、片方の耳が聞こえないとどのような不便が日常にあるのかはわかります。でも、片方の目が見えない人に起こる不具合は私にはわからないし、世の中ってお互いにそれぞれの不便を抱えている人たちがいる。そして、全部を網羅して誰1人として傷つけない言葉選びができるかというと、できません」

社会のすべてを知ることはできない。相手の全てを理解することはできない。しかし、社会は容赦無く変わっていく。では、「わからない」ものに出会った時にはどうすれば良いのか。そのキーワードは「想像力」だと辻さんは話す。

「100%理解できなくても想像することはできるし、想像できたら配慮することはできるかもしれない。そのためにできることが学ぶ、ということ。全部を知るために学ぶのではなく、知らないことがあることを知るためとか、自分と違う視点や価値観があることを知るために、想像力を持つことが一番大事だと思います」

■安心して「わからない」と言える学び場を

辻さんはnews zeroが新たに始めるオンライン番組「Update the world」(1月31日ひる12:00~配信:news zero公式Twitter・TVer)に、コンダクター(旗振り役)としてレギュラー出演する。

「わかっていないことを責められず、わからないという前提で学べる『大人の学び場』が、すごく少なくなっている」

"賢い人ほど口を閉ざす" SNS空間と、アップデートが速すぎる社会の課題を、辻さんはそう指摘する。だからこそ、変わるべきものを変えていくためにも、「何が、なぜ、アップデートが必要なのか」を素直に学べる「大人の学び場」が必要だという。

この新番組は、SDGsを手がかりに、ゲストと一緒に価値観をアップデートしながら、やさしい社会のヒントを探していくという内容。3つのテーマについて1か月ごとに配信され、第一回のテーマは【LGBTQ】が予定されている。

「『わからない』『わかりたい』が言える学び場。安心して『私、わかってないかも……』って言える場がいいなって思います」

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