天皇陛下61歳誕生日 会見全文5/5
会見は、2021年2月19日、赤坂御所「日月の間」にて、感染症対策のため、初めて陛下の前にアクリル板を立てて行われました。約40分間の会見の全文を紹介します。5/5は、4/5に続いて問5の後半と関連質問です。
陛下がこの1年で印象に残ったことを述べられた問5は、広く陛下のお考えが分かる内容となりました。問5の後半は、戦後75年や東日本大震災から10年など、天皇皇后両陛下が永く心を寄せられたい事について語られました。
(天皇陛下:問5の後半)
昨年は新型コロナウイルス感染症に加え、自然災害もありました。7月には、豪雨により、熊本県を中心に、多くの尊い命を失われたことが痛ましい記憶として刻み込まれています。気候変動由来と見られる自然災害の巨大化・広域化が懸念されます。
昨年は戦後75年でした。節目の年を迎え、戦争の悲惨さと平和の尊さを今後とも心に刻んでおかなければならないとの思いを新たにいたしました。また、先の大戦で世界で唯一の被爆地となった広島、長崎には永く心を寄せていきたいと思います。
明るい話題としては、昨年12月に、小惑星探査機はやぶさ2が、長期にわたる壮大なミッションの第一部をやり遂げたことにより、人々に夢をもたらしたという快挙がありました。はやぶさ2が持ち帰った成果がどのような発見につながるのか、私のみならず多くの人々が期待していると思います。
東日本大震災からもう10年が経(た)とうとしていますが、この震災が2万人を超える死者・行方不明者をもたらし、各地に甚大な被害を及ぼしたことは、今思い出しても胸が痛みます。
震災直後、岩手・宮城・福島各県へのお見舞いや首都圏に避難されてきた方々のお見舞いをさせていただき、その後も、雅子と一緒に被災地を何度か訪問して復興状況を見てまいりましたが、被災地ではまだ様々な問題が残っているように思います。
確かにインフラ面では再建が日々進んでいますが、御家族など親しい方が亡くなられた方々、避難を余儀なくされ、家族や友達が離散してしまったり、生活環境が一変してしまった方々のことを考えると、震災からの傷がまだ癒えていないというような気がいたします。
つい最近の、今月13日には、マグニチュード7を超える地震が福島県沖においてありました。被災された皆様に心からお見舞いをお伝えいたします。報道では、10年前を思い出したとの声も多く聞かれました。未曽有の災害がもたらした被害の大きさが改めて思い起こされるとともに、東日本大震災については、過去のこととしてではなく、現在も続いていることとして考える必要があることを改めて感じました。
私も雅子も、今後とも被災地の方々の言葉に耳を傾け、被災された方々の力に少しでもなれるよう、被災地に永く心を寄せていきたいと思っています。そしてまた、機会があれば、10年を超す歳月を経た被災地を訪れてみたいと願っております。
(関連質問1)
眞子さまと小室さんの結婚の問題について、陛下は「多くの人が納得し喜んでくれる状況になることを願います」というふうに述べられました。そのためには何が必要とお考えになりますでしょうか。
(天皇陛下)
この件に関しましては、先ほど申し上げたこと以上のことは、今はお答えは差し控えさせていただきたいと思います。
(関連質問2)
2問目の質問で愛子さまの現在のご様子についてお伺いいたしましたが、愛子さまの将来の御結婚については、陛下はどのようにお考えでしょうか。
(天皇陛下)
愛子は先ほども申しましたとおり、大学生活も始まったばかりですので、今後ともいろいろなことを学びながら、自分としての視野を広めていくことになると思います。私もその過程でいろいろなことを恐らく相談に乗ることと思いますので、結婚のことも含めて、いろいろ将来のことも話し合う機会というものがあるかと思います。
(関連質問3)
一番最初の、新型コロナに関する質問の関連なんですけれども、昨秋以降、オンラインの活動を陛下も始められていましたが、それに至るまでですね、なかなか国民との直接の交流ができないという状況がずっと続いた中で、陛下自身ですね、もどかしい思いだったり、早く国民に会いに行きたいというかですね、そういったですね、危機感だったりですね、そういった思いを抱いたことはございましたでしょうか。
(天皇陛下)
現在の新型コロナウイルス感染症の感染状況では、三密を避ける、つまり人と人との交流というものが閉ざされてしまって、言ってみれば本当に日常生活が大きく変わったというふうに感じます。その中で、本当に一人一人が大変な御苦労をされていた現状では、やはり皆さんのことを、私も大変気になったわけですけれども、今は皆さんのところに会いに行くということ、お話をするということをしてはいけないことでありますので、国民の皆さん一人一人への思いを持ちながら、今、自分ができることはいったい何なんだろうかということを常に考えながら、日々を過ごしてきたように思います。その過程でもって、オンラインというものもいろいろ普及してきましたし、先ほどもお話ししましたように、水の関係の国際会議で実際にオンラインをやってみたところ、人と人とのつながりというものを肌で感じることができましたので、宮内庁ともいろいろ相談をしながらオンラインで、皆さんとつながっていくということを考えるに至ったわけです。ですから、オンラインはそれなりの課題というものも、先ほどお話ししたようにあると思いますけれども、これからはそういうものを使っていきたいというふうに思っております。(了)