次世代をエンパワー 徳島から女性市長発信
3月8日は「国際女性デー」。世界経済フォーラムが去年発表した「ジェンダーギャップ(男女格差)指数」で、日本は121位。特に政治分野での女性の参画が遅れている。「女性が政治リーダーになると何が変わるのか」。去年4月初当選し、全国史上最年少の女性市長となった徳島市・内藤佐和子市長(36)に、日本テレビ小西美穂解説委員が聞いた。(前編から続く)
■「女性だから子育て支援を」と期待され
──「市長がやるべきことは男女で変わらない」という見方もできますが、長らく男性だった市長に、初めて女性が就いたことになります。なにかそこに女性市長特有のハードルがありましたか?
女性市長特有のハードル…、なんでしょうね。子育て支援とかにすごく注力してくれるのではという期待があったことかもしれないですね、逆に。もちろん子育て支援もやらないといけないし、私の関心分野でもあるのですが、市長としては行財政改革もやらないといけない。いろんな事業とのバランスがあります。でも、「(女性市長だから)もっと子育て支援してくれると思っていたのに」と期待を寄せられることが、ひとつの女性市長ゆえのハードルであるような気がしています。
──それは女性市長特有かもしれませんね。そのハードルは、どう乗り越えようと?
やはり丁寧に、論理的に説明していく。それは男女の首長一緒ですが、理解してもらうことが重要なのかと思います。
■“女性の視点”で政策を見直せる
──男性中心の地方政治で、女性がトップに立つ意義はどこにあると考えますか?
いろんな政策を女性の視点で見直せることだと思います。子育てや教育政策でも、お母さんや保護者の視点で、「もっとこうすれば?」と考えられる。たとえば防災って、男性の視点で組み上げられていることが非常に多いんです。避難所に置く備品も、女性の視点で見直すと変わってきます。避難所運営も男性だけでなく、女性の視点が入ることでまた変わっていくのかなと思いますので、市長の私だけでなくて、たとえば女性の防災士に参加してもらうなど、変えていきたいです。
■「ファーストペンギン」不安は情報発信で解決
──女性がリーダーになるうえで最もネックは?
ファーストペンギン(リスクを恐れず新しい挑戦をする人)になるのって、大変不安だと思うんです。たとえば首長だったら、50代ぐらいの男性職員を私が束ねてやっていけるのか。選挙にのぞむのでも、家庭や子育てでいろんなサポートを得られるのかっていう。政治家になることを考えると、不安材料って女性の方がたくさん出てくると思うんです。
ロールモデルがいたとしても、「あの人だからできたんじゃないか」という不安がすごくあるので、「私はこういう選挙をした」「こうやって市政運営をしている」「ここが大変だった」と、いろんなタイプの女性の政治家、議員が発信することで、少しずつ解消されていくのではないでしょうか。
──たしかに、女性にとって目指すロールモデルはそれぞれですよね。さまざまな人から経験や解決策を共有してもらうことで、「自分もできるんじゃないか」というエンパワーにつながりそうです。
■ジェンダー平等へは女性だけが声を上げても変わらない
──ジェンダー平等への関心が高まるなか、男性にどのよう考えてほしいですか?
「男女平等」といっても、女性には出産があったり、子育ても、お母さんのほうが出ていく機会がまだまだ多かったりしますよね。そこへの配慮はしつつ、できるだけ公平になるにはどうすればいいのかを一緒になって考えてくれるといいと思います。「平等」というのは「男女全く同じ制度」という意味ではなく、どうしたら「公平」になるのかという観点で考えてくれるとうれしいです。
──女性が直面している不平等など、問題の多くは、男性が関わっていますから、女性の問題としてとらえるのでなく、一緒になって考えていかないと解決していかない。
そうです。女性だけが声を上げても変わらないです。なので、徳島市でも、男性も「逆にその立場になったらどうなるのか?」というような研修をやってみようと。たとえば、男性が1人、女性が9人の場になったときに、お互いどう感じるのかとか。そういうことも含めて、逆の立場になったときに、自分がどう行動するのかというところまで思いを馳せてもらえるといいなと思っています。
■次世代の女性へのメッセージ
──内藤さんのように活躍している女性リーダーがスーパーウーマンに見えて「自分に務まるのかな」と不安になる人もいると思います。伝えたいメッセージは?
私はたまたま全国最年少の女性市長となっていますが、ここにいたるまで、難病も経験していますし、以前はまちづくりの団体や学生団体で活動したり、起業のコンテストに出たりと、いろんな経験をしてきました。すべて一生懸命、真摯(しんし)に取り組んできました。チャレンジが多いことで失敗もたくさんしました。全然スーパーウーマンではないのですが、何がどうつながるかって本当に分からない。ひとつひとつのことを一生懸命やっていけば、道はひらけます。みなさんも一緒に頑張って社会を良くしていけるといいなと思います。
3月8日の「国際女性デー」に合わせたインタビュー内容を再構成。全編はYouTube配信。詳しい内容は、「日テレNEWS24」WEBサイトや「日テレNEWS」YouTubeなどで動画で配信しています。
▼内藤佐和子(ないとう・さわこ)
徳島県徳島市長。36歳。全国最年少の女性市長として2020年4月に初当選。東京大学在学中に難病を発症し、体験をつづった著書が話題を集めた。
▼小西美穂(こにし・みほ)
日本テレビ政治部解説委員・「news every.」キャスター。