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星出さんに聞く「宇宙飛行士×ラグビー」

2021年4月21日 20:27
星出さんに聞く「宇宙飛行士×ラグビー」

まもなく3度目の宇宙へと飛び立つJAXA宇宙飛行士の星出彰彦さん。今回は国際宇宙ステーション(ISS)の船長を務める予定にもなっている。船長としての抱負や心構えについて、元ラグビー日本代表キャプテンの廣瀬俊朗さんとともに、「宇宙キャスター」榎本麗美が話を聞いた。

――星出さんにとって、船長としてクルーをどう率いていくかという点に、「ラグビー」が大きく関わってくるということなんですが、具体的にどういうことですか?

【星出さん】
今回、若田飛行士に続いて、日本人で2人目の国際宇宙ステーションの船長を務めさせていただきます。これまで船長を務められた方は60人以上おり、皆さん、それぞれに異なるチームのまとめ方があると思います。ラグビーの世界でも、いろいろなチームのキャプテンがおられ、「キャプテンシー」というものがとても重要視されており、その姿勢が今回船長を務める上で、勉強になります。私自身がどのように船長役を務めるかというのも、いまだに試行錯誤していますが、廣瀬さん始め、いろんなキャプテンの方の話を通して勉強しています。

――まだ試行錯誤中ということですが、廣瀬さんはISSの船長とラグビーのキャプテン、どんな共通点があると思いますか?

【廣瀬さん】
ひとつは、多国籍であるところ。ラグビーもそうですが、ISSのメンバーもすごい多国籍ですよね。あとはラグビーも試合中は、監督は指示をしますが、キャプテンのデシジョン(判断)が多くなるんです。フィールドではキャプテンが決めないといけないことが結構多くて、ISSにも地球から様々な指示が来ると思いますけれど、現場で起きている感覚というのは、やはり現場にしかわからないことがあるんじゃないかと。そういった点が共通しているのではと思っています。

――星出さん、うなずいてらっしゃいますが。

【星出さん】
おっしゃるとおり、多国籍で、お互い違う文化的な背景があり、職業も、医者、エンジニア、パイロットなど様々なバックグランドをそれぞれが持っています。地上の管制室と軌道上の(宇宙にいる)宇宙飛行士とのコミュニケーションがとても大事で、軌道上でしかわからないことがあります。それをきちんと伝える、地上とも連携して、問題を解決することが大事で、そこは船長がしっかりやらなければならないと思っています。

――今回の打ち上げメンバーは多国籍ということですが、どんなチームにしたいと思っていますか?

【星出さん】
今回一緒に打ち上がるクルーは、NASAからアメリカ人ふたりとESA(欧州宇宙機構)からフランス人、そして日本人の私と3カ国で、ISSにはロシア人の宇宙飛行士もいますので、計4カ国になります。ラグビー日本代表にも共通することと思いますが、みなさんそれぞれが優秀な方ばかりです。どの様にまとめ上げるかはなかなか難しいですが、彼らをまとめ上げるというよりは、チームとして機能するように、後ろから支えられればよいと思っています。それぞれが言いたいことを言える雰囲気作りが大事だと思っています。

――廣瀬俊朗さん、キャプテン経験者の先輩として、今のお話どうですか?

【廣瀬さん】
先輩だなんて、そんなことはないですけれど。僕ら日本代表も、みなさんそれぞれ素晴らしい選手とか、素晴らしい思いで入ってきてくれたので、彼らが持っているものをうまく引き出すのが、大事なことだと思っています。なので、僕がキャプテンやっているときも、そんなに前に出過ぎないで、うまく後ろから支えるっていうのを大事にしました。僕らがすごく大事にしたのは、ミッションや存在意義みたいなところです。「何のために勝つのか」という話をすごくしたんです。そのミッションに対しては事細かにいつも話し合えるとか、確認するみたいなことを大事にしてやってきました。

――どうでしょう星出さん、少しチームの作り方みえてきましたか?

【星出さん】
ちょっと自信持ちました。

――星出さん、ISSの船長として一番大事な役割は何になるんでしょうか?

【星出さん】
優先順は明確で、まずクルーの安全、それからISSの安全、そしてミッションという順です。私もクルーの安全というのが一番重要であると思います。ISSでは普通に生活していますが、外は真空の宇宙空間で、危険を伴います。例えば宇宙遊泳をする、ロボットアームで宇宙船を捕まえるといった様々なミッションを行いますが、しっかり安全を確保し、ミッションを遂行することが大事だと思います。

――危険な状況もあるかもしれないと言うことで、緊急時の指揮が大事になってくるのかなと思います。

【廣瀬さん】
私は、「立ち返る軸」のようなものがすごく大事なのかなと思っていて、それがクルーとステーションの安全であり、ミッションの遂行で、そういう「軸」がないといけないと思うんです。世の中は割とそういうことがなくて、どこに立ち返ったらいいのかわからなくなった時、思わずあらぬものにすがってしまって、違う方向に行ってしまうということがあるんじゃないかと思うんです。だからこそ、改めて「軸」がちゃんとあって、立ち返るところがあることがとても大事なことなのだと思っています。

――なるほど。星出さん、これは宇宙でスクラムを組むみたいな気持ちなんでしょうか?

【星出さん】
お互いの長所を持ち寄って、スクラムを組んでミッションを成功させていきたいと思います。

――星出さんがどんな船長として、指揮されるのか楽しみです。

(中編に続く)