値上げ最多…年金生活は“我慢の連続” 「家の中真っ暗」「本当はおしゃれしたい」 物価高で求職者↑『every.気になる!』
10月に値上げされた食品などは今年最多です。物価高に見舞われる中、年金を受給している人からは「我慢の連続だ」という声が多く上がります。節約の工夫や“プチ贅沢”の様子を街で取材しました。高齢者向けの就職説明会では、ある変化が見られました。
2か月に一度の年金支給日だった10月15日。東京・江戸川区のイオン葛西店を取材しました。店員の「お買い得ですよ、いらっしゃいませ」という声が響きます。
年金支給日のこの日は、55歳以上限定で毎月15日のG.G感謝デー(要会員登録、一部対象外商品あり)です。特定のカードで会計が5%オフになる割引セールが行われていました。
年金が月に約10万円の80代は「(5%オフは)いいですね。(買い物は)少しでも安いように。手が出しやすいですよ」と言います。帝国データバンク調べでは、10月に値上げされた食品などは今年最多となる2911品目に上ります。
イオン葛西店では夕方になると、値引きのシールが貼られていきました。5%引きからさらにお得になります。店によると、この“ダブル割引”を狙う年金暮らしの人は多くいます。
ひと月10万円ほどの年金で暮らす女性(70代)が手に取ったのは、お寿司(すし)でした。「200円安い。いま3割引き。こういうときじゃないと買わない」と笑います。
シュウマイなど割引商品4点をゲットしたのは、年金がひと月に7万円ほどの女性(75)です。「家計の足しになれば。狙っちゃいますね。ありがたいですね」
15日のお昼時に出会ったのは、ひと月に6万5000円ほどの年金で暮らす男性(80)です。「年金支給日なので、待ちに待った中トロを食べたいと思います」と言います。向かったのは寿司店。テイクアウトしたのは、中トロ4貫などが入ったマグロづくしです。
ランチに1350円をかけた“プチ贅沢”。男性は「久しぶりに食べられてよかった」と、待ち焦がれた2か月ぶりの味を楽しんでいました。「もっと食べたい。いつもお昼に500円かけるかどうか。贅沢しちゃった」
ただ、多くの人から聞かれたのは、年金暮らしは「我慢の連続だ」という声です。
ひと月の年金が約10万円の89歳
「とてもとてもとても足りません。旅行に行きたい、でもやっぱり余裕がない」
ひと月の年金が約9万円の74歳
「ケーキとかおやつを食べたいなと思うけど、やっぱり我慢しちゃいますよね」
電気代節約で乗り切ろうとする人も。年金が月に約2万5000円の86歳は「電気はすぐ消す。家の中真っ暗。街灯が(家の)そばについている」と話します。
これからの季節は肌寒くなりますが、暖房も使わないのだとか。「暖房お金かかるんだもん。(家で)カイロ貼っている。あれ安いじゃない。そうしないとやっていけないもん、年金だけじゃ」
夫と合わせ、ひと月約17万の年金で暮らす女性(78)は「娘も体が弱いので、もう50過ぎているんですけど、毎月8万円くらい振り込んでいる」と言います。毎月貯金を崩しながら生活しているそうです。
この女性は「衣類とかはなるべく買わないように。(着ているコートは)10年ぐらいたっている。本当はおしゃれしたいんですけど…」
ひと月約8万円の年金をもらう太田さん(71)は、働き続けることで今を乗り切っています。週3日ほど1日4時間仕事をこなし、収入は月に6万円ほどです。
「ある程度のお金をもらえる。生活も楽になるし、孫もいますので、誕生日とか何かあればプレゼントとかも出せると思いますから」と太田さんは言います。
働く理由は他にもあります。「定年後は自分の居場所がどんどん減っていきますから。それが見つけられたから、仕事自体楽しい」。仕事が生きがいにつながるようです。
しかし、高齢者向けの就職説明会では変化が見られました。物価高など経済的な理由で仕事を探す人が増加しているといいます。杉並区シルバー人材センターで10月9日にあった説明会では、多くの年金受給者の方が仕事を探しに来ていました。
年金受給者(73)
「年金だけだとギリギリの生活になっちゃうので働きたい」
10月は9月に比べ、2倍近くの人が集まっていました。5年ぶりに働きたいという女性(70)も「(年金だけで)生活するのは大変かなと。光熱費も高いですしね。また今度は暖房でかかる。働けるならいくつまでも働きたい」と話します。
同センターでは今後も、定期的に就職説明会を開くということです。
(10月23日『news every.』より)