×

ワクチン接種“打ち手”不足で歯科医師も…

2021年5月27日 21:11
ワクチン接種“打ち手”不足で歯科医師も…

感染に歯止めがかからない中、政府は、九つの都道府県への緊急事態宣言を来月20日まで延長する案を軸に検討しています。収束のカギを握るワクチンの接種。“打ち手”不足を解消する動きも加速しています。

   ◇

加速するワクチン接種。その一方で、“打ち手”不足が深刻な状態となっています。

今週から高齢者向けのワクチン接種が始まった神奈川県海老名市。会場でワクチンの“打ち手”を務めていたのは、歯科医師の石渡さん。石渡さんはこの道35年のベテラン歯科医師です。

海老名市内に住む65歳以上の高齢者はおよそ3万5000人。市は当初、8月末までに接種完了の予定でしたが、政府は「7月末までに終わらせる」との目標を掲げました。

このため、市が協力を求めたのは歯科医師会。60人を超える歯科医師が参加し、なんとか7月末までに終わらせる見通しが立ったのです。

しかし…

海老名市歯科医師会 石渡靖夫会長
「私を含め、ほとんどの歯科医が筋肉注射の経験はないと思います」

普段の診療では歯茎に麻酔を打つことはありますが、筋肉注射は経験がないといいます。

先週、歯科医師に向けてワクチンの研修が行われました。筋肉に注射する感覚をつかむため、使ったのはカモ肉。さらに、生理食塩水を使って、実際に打ってみます。

そして、27日。いよいよ石渡さんが接種の瞬間を迎えます。

ワクチンを接種した人
「別に不安はないですね。あっという間ですね」

海老名市歯科医師会 石渡靖夫会長
「多少緊張したけど、しっかり医師会の先生に実習してもらったので、その通りできました」

さらに、集団接種のペースを上げるため、東京・練馬区で動員されたのが薬剤師です。

普段、薬局で働くのは薬剤師の佐谷さん。先月…        
薬剤師 佐谷怜子さん
「まだまだ練習しないとダメですね」

練馬区では、ワクチンの希釈や充填(てん)などを看護師のほかに、薬剤師も行います。佐谷さんも学生以来の作業となり、ひと苦労です。本番へ向け練習を重ねていました。

そして、迎えた本番当日。練習で使った研修キットにも努力のあとが見られました。

薬剤師 佐谷怜子さん
「針刺しているとその部分が傷んでくるので。一応、練習キットもお守りのため持って行こうかな」

この日、1日に用意するのは240人分のワクチン。佐谷さんを含め4人の薬剤師で準備します。

貴重なワクチンを無駄にしないよう、真剣な表情で作業を進めます。そして、練習の甲斐もあり、ミスなく無事終了しました。

薬剤師 佐谷怜子さん
「自分が足をひっぱらないようにという思いがすごく強くて、待たせたりしないようにという思いでやってきました」

今週月曜日(24日)、日本薬剤師会の会長は…

日本薬剤師会 山本会長
「(薬剤師が打ち手をすることについて)法律の壁があるので、それが抜けなければ、いくら我々が思っていてもできない。私どもとしては決して逃げることなく対応する覚悟を持っています」

薬剤師も“打ち手”になる可能性が浮上したのです。

薬剤師 佐谷怜子さん
「(最初は)驚きの方が大きかったです。まずは法改正が必要。ゼロから教育や研修を受ける必要があると思います」

さらに…

東京都獣医師会 中川清志副会長
「ちょっと腫れがひどいから、1回ステロイド打ってみて」

ペットなどを診療する獣医師です。

実は、アメリカでは今年3月、獣医師による接種も認められましたが…


東京都獣医師会 中川清志副会長
「一般的に注射、採血とか血管を確保することは普通にやりますので、一般的な業務の範ちゅうではある」

日本は、現時点では獣医師の検討はしていませんが、日本獣医師会は国から要請があった場合について「獣医師法違反にならないよう法的措置を講じてほしい」としています。