ユニーク「被害防止アイデア」SNSで伝播
ツイッターに投稿された一枚の写真。トイレットペーパーを販売するためのポスターにも見えますが、よく読むと「盗まれるほど大人気!」という、何やら物騒な文言も。いったい誰がどんな理由でポスターを張り出しているのでしょうか。
取材を進めていくと、コロナ禍で続く暗い雰囲気を少しでも明るくしたいという人々の、ユニークな取り組みであることがわかりました。
■相次ぐ持ち去り被害、悩んだ末のアイデア
ポスターが張り出されていたのは、熊本県山鹿市の「道の駅水辺プラザかもと」のトイレ。支配人の荒木英夫さんは「トイレットペーパーが無断で持ち出される事態が相次ぎ、一度に5個も持ち去られることがあった」と話します。
持ち去りをしないよう呼びかけたり、トイレットペーパーに施設名のスタンプを押したりなどの対策を取りましたが、厳しく注意したり監視を強化するのはやりすぎと感じ「クスッと笑ってもらえるような形」でメッセージを届けたいと、ポスターの製作を決めたといいます。
■被害は減少、「購入する人」も
去年の9月ごろにポスターの掲示を始めると、持ち去り被害は次第に減少。ポスターの文言はあくまで“冗談”のつもりだったといいますが、買いたいとレジを訪れる客もいたということです。「本当に50円で売ると実際は赤字」と説明する荒木さんですが、このポスターのアイデアについて「実はパクリ」だと照れ臭そうに明かします。
荒木さん達が参考にしたというのは、茨城県城里町にある「道の駅かつら」のトイレに張られていたポスターで、文言まで含め確かにそっくり。去年9月上旬に張り出されたこちらのポスターもまた、トイレットペーパーの持ち去りを防ぐためのもの。テレビ番組で紹介されていた、別店舗の取り組みを参考に製作したそうですが、ポスターをツイッターに投稿したところ「想像を超えた大きな反響が寄せられた」と店長の谷津安男さんが振り返ります。
■「ぜひ真似してほしい」担当者の思い
コロナ禍でただでさえ殺伐としているいまだからこそ、ユニークな形で被害を減らしたいという思いで始めた取り組みでしたが、あまりの反響の大きさを受け、ポスターの掲示は1か月ほどで取りやめに。
あれから半年以上がたった今年6月。「あの取り組みを真似している店がある」との噂を耳にします。それこそが、冒頭で紹介した熊本の「道の駅水辺プラザかもと」のポスターでした。谷津さんは「こういう方法で問題が解決するのならぜひ真似してほしい、パクってほしい」と笑います。ポスターの写真をツイッターにあげた福北ゆたかPさんは「発想が天才的」と絶賛し「これを機に持ち去り被害が減れば」と訴えます。
コロナ禍により窮屈な生活を強いられる日々が続きますが、少しでも社会に笑顔が戻ればという関係者の優しさが繋がることで張り出されたポスターは、人々の心を和ませているようです。