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尾身会長“五輪発言”…政府と専門家に溝

2021年6月7日 21:37
尾身会長“五輪発言”…政府と専門家に溝

東京オリンピックの開催をめぐり、波紋を広げているのが政府の分科会の尾身会長の「今の状況でやるのは普通ではない」という発言です。踏み込んで発言する専門家と政府の溝が深まる中、7日、菅首相が国会で発言しました。これまでの経緯とともに解説します。

菅首相「様々な声があることは承知しており、そうした指摘をしっかり受けとめて、取り組みを進めてまいりたい。世界から選手が安心して参加できるようにするとともに、国民の命と健康を守っていく。これが大会の前提と考えており、そうしたことが実現できるように対策を講じていきたいと思っています」

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■五輪めぐり…専門家と政府に“溝”

これまで、政府と専門家の間に何があったのか経緯をまとめます。分科会の尾身会長はこれまで、「今の状況でやるというのは普通はない」「オリンピックをこういう状況の中で、一体何のためにやるのか、はっきり明言することが重要」と述べていました。

こうした発言に対して丸川五輪担当相は、「全く別の地平から見てきた言葉をそのまま言ってもなかなか通じづらい」と述べていました。

政府は観客の上限について、今月20日以降に決定する方針ですが、尾身会長は、その前にオリンピックを開催した場合の感染リスクや対策などについて、独自の提言を発表する考えを示しています。

専門家として考えを示すことについて、田村厚生労働相は、「自主的なご研究の成果の発表ということだ」と述べ、「自主的な研究」という言葉を使いました。

尾身会長は、「政府から要請はないが、我々の考えを表明するのがプロとしての責任だ」として発表すると述べています。

こうした尾身会長の動きに対し、政府関係者は一様に不快感を示しています。ある政権幹部は「オリンピックは尾身会長の所管ではない」と話し、自民党幹部も「尾身さんはふっきれちゃったね」「政府がオリンピックをやろうと一生懸命言っているのに、あんな発言をするのはおかしい」などと話しています。

■『五輪コロナ対策』での尾身会長の立場は?

政府は、これまでは尾身会長の意見を聞いた上で対策を進めてきました。緊急事態宣言を延長決定した時の会見でも、菅首相は、コロナ対応については「専門家の意見を聞いた上で判断する」と繰り返していました。こうした会見にも尾身会長を同席させてきました。

政府は、オリンピックのコロナ対策について「調整会議」という東京都や組織委員会も入れた枠組みで議論していて、ここに感染症の専門家2人もアドバイザーで入っています。

一方の尾身会長は「分科会」という別の組織で、菅首相は「調整会議」の議論だけで十分だと判断し、尾身会長に意見を求めない姿勢をとっているわけです。

ただ、これまで感染対策の陣頭指揮をとってきた尾身会長の発言を聞いてやってきたわけですから、国民への丁寧な説明が求められます。

■五輪・パラで選手と関係者9万人以上が来日予定

NNNと読売新聞が6月4日~6月6日に行った世論調査で、東京オリンピック・パラリンピックについてどうするのがよいか尋ねたところ、「中止する」が48%。一方で「観客を入れずに開催する」、「観客数を制限して開催する」があわせて50%でした。また、海外から来る選手や関係者への感染対策が「十分だと思わない」と答えた人は、63%でした。

一体どのくらいの人が来日するのかというと、オリンピック・パラリンピック全体で1万5000人の選手が参加するといわれています。そのうち日本の選手が1000人ほどです。つまり1万4000人の選手が、205の国と地域から来日するということです。選手以外の関係者は7万8000人になります。

大会延期前は18万人ほどの関係者が来日する予定でしたが、選手の家族や友人の受け入れをやめたり、メディアなどの関係者を減らしたりした結果、この人数に絞られたということです。組織委員会はさらにここから減らすとしています。

■五輪・パラで来日後の行動ルールは?

実際、来日後はどのようなルールに基づいて行動するのかをみていきます。競技会場などの事前に認められた会場は、選手・関係者ともに、もちろん行くことができます。移動の際には専用の車両を使います。

コンビニや飲食店は、選手は利用できません。関係者は、テイクアウト・個室であれば利用が可能です。

公共交通機関、観光地やバーは選手は使えませんが、関係者については、経過観察を終えた15日以降は公共交通機関を使うことができて、観光地・バーに関しては検討中となっています。

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オリンピック開幕まであと1か月半しかないのですが、まだ、まさかの事態に備えた細かいルールが定まっていません。

例えば選手村や競技場で新型コロナの陽性者が出た場合のルール。スタッフが感染して選手が濃厚接触になり、試合までにPCR検査の結果が間に合わないというケースも考えられます。あらゆる事態に備えて選手への周知も含めて準備が必要です。

(2021年6月7日16時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)