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不起訴が一転「略式起訴」なぜ?菅原前大臣

2021年6月9日 17:22
不起訴が一転「略式起訴」なぜ?菅原前大臣

選挙区の有権者らに「祝儀」や「香典」、「枕花」など計約80万円分の違法な寄付をしたとして、公職選挙法違反の罪で略式起訴された菅原一秀前経済産業大臣。東京地検特捜部が、去年の「不起訴」から一転、「略式起訴」へと踏み切った背景には、何があったのでしょうか?

■かにやメロン…“香典疑惑”も

発端は、2019年10月。菅原前大臣が選挙区の有権者にかにやメロンなどを配ったとされる疑惑が明らかになり、国会でも追及されました。そこに追い打ちをかけたのが“香典疑惑”。秘書を通じて有権者の葬式に香典を渡した公職選挙法違反の疑いも浮上したのです。

初入閣で経済産業大臣に就任した直後でしたが、「私の問題に関して国会が停滞をする、法案審議ができないというのは本意ではない」と語り、わずか1か月半ほどで大臣を辞任することになりました。

■東京地検特捜部が捜査に乗り出すも…

これらの疑惑について捜査を開始したのは東京地検特捜部。ところが、去年6月、菅原前大臣について、秘書を通じて香典を渡すなど公職選挙法に違反する行為があったと認定したものの、不起訴(起訴猶予)としました。当時、不起訴の理由について東京地検は「公職選挙法違反を無視、または軽視する姿勢が顕著とまでは言いがたい」とした上で、「大臣の職を辞し、記者会見においても事実を認め謝罪したことを考慮した」と説明しました。

■検察審査会「起訴すべき」―特捜部が再捜査へ

しかし、この「不起訴」に検察審査会が“待った”をかけます。「国会議員はクリーンであってほしいという国民の切なる願いにも十分配慮すべきである」検察審査会は今年2月、このように言及した上で、「不起訴」ではなく「起訴すべき」と議決したのです。

この議決について、ある検察幹部は「国民感情として起訴すべきと捉えているということ。真摯(しんし)に受け止めるしかない。」「『これからはそういうことも一切許しませんよ』ってことを検察審査会は言いたいんだと思う」と話す一方、別の幹部は「びっくりした。最近の検察審査会はバランス感覚がない。」と不快感を示しました。

■再捜査の中で有権者への新たな現金提供が明らかに

検察審査会の「起訴すべき」との議決を受け、特捜部は再捜査を開始。関係者によると、特捜部は秘書や地元関係者への聴取を行ったほか、新たに関係資料の押収を行うなどして捜査を進めたといいます。その結果、菅原前大臣が選挙区内の祭りなどの行事で「祝儀」や「会費」などの名目で1回あたり数千円から1万円程度の現金を配っていたことが明らかになりました。

実際、菅原前大臣の地元で取材を進めると―「新年会の時には会費と称して5000円の会費をもってきた。ビール1本も飲まないですから対価という話でいえば、最終的には寄付ということになるんですかね」(商店会役員)

「町会、消防団、野球、4~5人くらいのお祭りまで何かあれば会費を置いていったと思う」(地元の住人)

集まりがあれば、まめに顔を出し、会費などの名目で現金を置いていったといいます。また、「選挙前後は現金を配るのをやめていた」という話も聞かれました。

■一転、略式起訴のワケ―「トータルで見た時にやりすぎ」

そして、特捜部は再捜査の結果、菅原前大臣について、選挙区の有権者に対し、「祝儀」や「香典」名目などの現金と枕花などの生花、計約80万円分を違法に寄付したとして公職選挙法違反の罪で略式起訴しました。不起訴となった1回目の捜査で認定された違法な寄付は約30万円分でしたが、再捜査の結果、「祝儀」など新たに見つかった分も追加され、

計約80万円分を違法な寄付として認定したのです。関係者によると、菅原前大臣は、任意の事情聴取に対し現金の配布を認めた上で、背景として「地元で築いてきた人間関係や地域の風習があった」という趣旨の説明をしたとみられます。不起訴から一転、略式起訴に踏み切った特捜部。

その理由について検察幹部は「トータルで見た時にやりすぎ。配りすぎている」と語った上で、「違法行為を許さないという雰囲気になっている」「国民目線で見て『起訴してもいいだろう』というものについては、その視点から見て、起訴するかどうか考えることもこれからは選択肢としてありえるのかもしれない」などと述べました。

一方、略式起訴された菅原前大臣。今後、東京簡易裁判所が略式命令を出し、罰金刑が確定した場合、公民権が原則で5年間停止されます。この期間は、短縮される場合もありますが、この間、すべての選挙に立候補できなくなります。