五輪「観客」めぐり…政府と分科会“ズレ”
五輪の観客の行方が注目される中、政府分科会は16日、大規模イベントの観客数に関し、緊急事態宣言解除後も上限を1万人とする案を了承しました。政府は「五輪もこれに準じる」としますが、尾身会長は「関係ない」と強調。認識に隔たりが生じています。
■1万人案了承 尾身会長「五輪に関係ない」
「これはオリンピックとは関係ないですね、と」
政府分科会の尾身会長は16日、会見でこう強調しました。7月以降に行われる大規模イベントの人数制限の変更について、政府案を了承しましたが、オリンピックには当てはめない考えを示しました。
イベント開催をめぐっては緊急事態宣言などの対象地域では、「収容人数50%」かつ「上限5000人」とする制限がありますが、16日に了承された政府案では、すべて解除された後も経過措置として「収容人数50%」かつ「上限1万人」となります。
尾身会長
「この大事な時期に制限を緩和するのか、ということになるので、それはそうじゃないんで。むしろ、そういう意味では厳しくなるということなんだけど」
「まん延防止等重点措置」などが解除されても、観客数の上限をなくすのではなく、段階的に緩和していくことを強調しました。
また尾身会長は「『オリンピックとの関連の話ではない』としっかり確認して、政府に対しては、そういうことで今回了承します、ということになりました」と説明。「1万人」の制限は、オリンピックには適用しないことを政府に確認したと明らかにしました。
分科会の舘田一博委員も「オリンピックと、今言っている大規模イベントというのはレベルが違うから。全然違うから。同じ土俵の上で考えることじゃない」と訴えます。
■西村大臣「この上限規制に準ずる」
一方、政府の見解は異なります。
西村経済再生相
「東京大会の観客数については16日、分科会から了承をいただいた、この国内のスポーツイベントの上限規制に準ずることを基本として、6月中に五者協議の場で判断されるものと承知しています」
開催が迫る中、オリンピックの観客数が注目されますが、そもそも、連日人が集まるオリンピックで「観客1万人はあり得ない」と指摘する専門家もいます。
尾身会長は会見で、「上限1万人」がオリンピックにも適用された場合の対応を問われ、「国や組織委員会が決める前に、われわれの意見を発表します。オリンピックでは厳しくすべきかどうかは、近日中に意見をまとめて出します」と述べました。
■政府内「感染増で無観客」も
観客の扱いが定まらない中、チケットを購入した男性は「(会場で)見られるのかどうかが分からないので、やきもきしています」と胸の内を明かしました。
この男性は「紙チケットをお願いしていたんですけど、『遅れます』という感じのメールが来ました」と言います。
組織委員会から男性に届いたメールには「6月中旬以降に紙チケットを発送させて頂くご案内をしておりましたが、観客上限の方針が未だ示されていないことを踏まえ、発送を見合わせております」などと書かれていました。
男性は「まだかよって思いました。予定が組めないじゃないですか。決まらないので、やっぱりやきもきしますね」と話します。
一方、ある政府関係者からは「オリンピック・パラリンピック中でも、感染者が増えれば『まん延防止等重点措置』や緊急事態宣言を出す。緊急事態になったら、観戦に行かない、テレビで見る、となる」という声が上がりました。
途中で無観客に変わる可能性も示唆しました。
オリンピックの観客の上限については、今月中に決まる見通しです。
(6月16日『news zero』より)