当事者ら五輪へ懸念「LGBT法案」見送り
性的マイノリティーの人たちへの理解を促進するためのいわゆる“LGBT法案”の国会提出が見送られたことを受け、当事者・支援者らが18日、会見を開き、差別をなくすための法整備の必要性を訴えました。
■「国際社会から厳しい目」法整備面で大きい溝
会見に出席した国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの土井香苗さんは、来月から開催予定の東京オリンピック・パラリンピックに触れ、日本の現状と国際社会との落差について指摘しました。
土井さん「五輪の期間中も国際社会から厳しい目が日本に注がれる。多様性と調和が五輪のキャッチフレーズだが、実際には日本には多様性を認めない非常に頑強な基盤があることが世界に示された。世界では80か国以上にLGBTへの差別を禁止する法律がある」
■五輪に向け…トランスジェンダー選手へのバッシング懸念
トランスジェンダー当事者で元フェンシング女子日本代表の杉山文野さんは、今回の法案に反対した議員と会話したことを明かしました。
杉山さん「なぜそこまで反対しているのかと話してみたら、当事者に関する事実を何も把握していない。むしろ当事者と話すのが初めてというような状況で、危機感をおぼえました。“国民の理解が追いつかない、時期が早い”と言うが、自分が学ぼうともせず、自分の理解が追いついていないことを国民のせいにするのは、国民に対して非常に失礼なこと。特にトランスジェンダーに対する理解がなく、差別的発言が繰り返されている」
五輪に向けて設立されたLGBT支援施設「プライドハウス東京」代表の松中権さんも、東京五輪に向けて特にトランスジェンダー当事者へのバッシングについて危機感を示しました。
松中さん「ニュージーランドのトランスジェンダー選手が出場するという報道もある。実際にLGBTQの当事者の方(の出場)がこれからもどんどん決まっていく。そんな中、すでにさまざまな暴力的な発言がある」
■アンケートで「自殺考えた」最多…トランスジェンダーの厳しい現状
トランスジェンダー当事者の畑野とまとさんは、トランスジェンダー当事者が置かれる厳しい状況について訴えました。
畑野さん「LGBTに関するアンケートで“自殺を考えたことがある”という率が最も高かったのはトランスジェンダー。人の命がかかっています。一刻も早く多くの国にある差別を禁止する法律を通してほしい」
会見を主催した団体は衆院選に向けて、LGBTに関する取り組みや考え方について政党や候補者へのアンケートを行い、情報を発信していくということです。