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2021年6月21日 18:36

学生アスリートが生理について考える場を

学生アスリートが生理について考える場を
(c)NNN

学生アスリートと「生理」について考えるプロジェクトが今春立ち上がった。女性にとって切り離せない生理について、女性だけでなく、男性も一緒に学ぶことを目的とした本プロジェクト。その狙いや、活動を通して実現したいことを聞いた。

■アスリートに生理の正しい情報を

「1252」この数字は、女性が生理による不調を感じる期間を表している。月経周期やコンディションなどは人それぞれ異なるが、1年間「52」週のうち約「12」週間。つまり、年間の5分の1を上回る日数、何かしらの影響を受けている。

生理とスポーツ大会や練習が重なってしまった時、アスリートはどうしているのか。女性アスリートにとって避けては通れないことだが、このテーマは、これまで広く議論されることはなかったという。

この課題に取り組むため、学生アスリートを支援する一般社団法人スポーツを止めるな(以下「スポ止め」)は、学生アスリートと生理について考える情報発信プラットフォーム「1252プロジェクト」をスタートした。

学生アスリートを取り巻く様々な関係者をつなぎ、情報共有や対話の活性化を目指す。また、医療の専門家の指導のもと、女性の生理周期とコンディション管理に関する正しい情報を、学校や指導者に届ける役割も担うという。東京大学医学部附属病院女性診療科・産科「女性アスリート外来」との連携も始まった。

スポ止めの共同代表理事を務める最上紘太さんは「女性だけでなく、男性も一緒に学べる仕組みにすることが重要です」と話す。

「生理について、男性は関係ないと思うかもしれません。しかし、スポーツの指導者には男性が多いですし、結婚したり子どもが生まれたりして、家族に女性がいる状況になる可能性を考えると、男性にもひとごとではありません。学校で授業を行う際も、男女どちらも対象にして考える機会を作っています」

6月には、追手門学院高校(大阪府茨木市)で授業を実施した。授業は二部構成として、前半では男子生徒もいる場で生理について学び、後半では少人数で個別の相談をできる場にして、男性・女性それぞれに必要な学びを設計したという。

■婦人科を身近にする

このプロジェクトの発起人は、スポ止め理事で元競泳日本代表の伊藤華英さん。伊藤さん自身、現役時代に生理による不調に振り回された経験があり、正しい知識をつけてこなかったことを悔やんだという。

伊藤さんが2008年の北京オリンピックに出場した際、8日間行われる水泳競技の全日程が生理の予定とかぶってしまった。それに気づいたのは本番の3か月前。コーチや婦人科の医師と相談の上、ピルを服用して生理日をずらしたが、ピルが身体に合わず、普段できないニキビができたり、体重が3キロも増えてしまったりと、パフォーマンスに影響が出たという。

ピルには複数の種類があり、自分に合うものを探すことの大切さや、時間をかけて準備すれば生理日をずらす以外の選択肢もあったと知ったのは、現役を引退してから。ピルを服用したことよりも、生理に関する正しい知識を得てこなかったことを後悔したという。

これは伊藤さんに限ったことではない。自身のコンディションを気にしないアスリートはまずいないが、生理については一部の人の議論にとどまっていたと最上さんは話す。

「残念ながら、日本のスポーツ業界には、我慢することを美化するような風潮がありました。また、指導者の多くが男性であり、女性特有の生理に向き合うことがほとんどありませんでした。そのため、ルールや制度設計も追いついていない状況です」

生理には個人差があり、最終的には自分の体のことは自分でコントロールするしかない。しかし、そのための知識をつけて、専門家にサポートしてもらえるという選択肢を持つだけでも状況は改善されるという。

「いちばん身近な存在は婦人科になると思います。ただ、婦人科にかかるのは10代の女子学生には珍しいことです。婦人科にかかる=妊娠したと思われるというイメージもあり、婦人科に行くことにためらいがある学生も多い。一方で、ドイツでは初潮を迎えた時に婦人科にかかるのがセットになっていると聞きます。まずは正しい知識をつけて、医療機関の人と身近になることが、プロジェクトの走り出しと考えています」

地域によっては、婦人科が近所にない場合もある。そういった学生にむけてオンライン上で情報発信することも、1252プロジェクトの役割だという。

■学生スポーツで自立人材を育てる

スポ止めでは、生理の問題以外でも、学生アスリートがスポーツを続けるためのサポートを行っている。最近では「スポーツを始めたかったけど、始められていない」という声を聞くようになったという。

「高校や中学に入学した1年生で、新しくスポーツを始めることを思いとどまっている生徒が多いと聞きます。また、コロナ禍でリアルな練習をあまりできなかった2年生が、新入生を勧誘することに難しさを感じていることもあるようです」

「始めたくても始められなかった」というデータを取ることは難しく、数字としては健在化していないが、リアルな声が多数届いているという。スポ止めでは、まずは今スポーツをやっている学生が続けられるような取り組みに注力する。

様々な角度から学生スポーツの環境整備を行う背景には、スポーツを通して「自らが考え、判断、決断、実行できる人材を日本に育てたい」という思いがある。

「指示を待つのではなく、自分で課題を見つけて、解決策を考えて、実践する“自立した人材”を増やすために、学生スポーツはとても良い経験になると思います。先生や親がいて、学校という守られた環境下の中で、自分の選んだスポーツを一生懸命に取り組める。自分で選んだ道で、勝つために仲間と考えて、判断・決断・実行する機会になるわけです。大事なのはそのプロセス。学生スポーツは、自立するためのいろんなサイクルを回せるんです。学生スポーツが変われば、学生自体が変わる。それは、日本が変わっていくってことだと思っています」

自立のために、まずは1252プロジェクトのように、正しい知識を届けることがスタートだという。

「自立するためには正しい判断が必要で、正しい判断をするためには正しい情報が必要です。生理のことも同じ。知らないから判断ができず、アクションにもつながらない。学校は一生懸命やってますけど、学校だけでは足りない部分がどうしても出てくるので、そういったところをサポートしたり、連携したりすることを考えています」

※写真は高校生の男女にオンライン授業を行ったときの様子(2021年)

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この記事は、日テレのキャンペーン「Good For the Planet」の一環で取材しました。

■「Good For the Planet」とは

SDGsの17項目を中心に、「地球にいいこと」を発見・発信していく日本テレビのキャンペーンです。
今年のテーマは「#今からスイッチ」。
地上波放送では2021年5月31日から6月6日、日テレ系の40番組以上が参加しました。
これにあわせて、日本テレビ報道局は様々な「地球にいいこと」や実践者を取材し、6月末まで記事を発信していきます。