職域接種準備に苦慮する大学
6月21日から始まった一部大学での新型コロナウイルスワクチンの職域接種。なかには医師の確保が難しい大学も。そのホンネを取材しました。
■職域接種を行うにはいくつかの実施要件が
新型コロナウイルスワクチンの大学での職域接種にあたっては、大学は、医師ら医療従事者等の確保や、場所を自ら確保しなくてはなりません。さらに、大学のある地域に住む住民らにむけて自治体が進めている接種に影響を与えないことが求められています。
23日現在、まだ大学での接種がスタートできていない都内のある大学を取材したところ、「医師の確保に難航した」と、苦悩を口にしました。
■ワクチン接種の前段階に課題
都内に複数のキャンパスを持ち、接種の対象となる可能性のある学生や教職員らが3万人にのぼる私立大学。大学の担当者は「場所の確保や運営に関しては大きな懸念はない」と言います。ワクチンの打ち手についても、医師や看護師に続き、歯科医師、検査技師と裾野が広がっています。
ネックは「接種の前の段階」。接種する人に、ワクチンを接種できるかどうか判断する、「予診」の段階にあるというのです。
■医師でなければ行えないこと
「予診」は医師が行うことになっています。想定されるこの大学の接種対象者は、学生や教職員らおよそ3万人。数を考えると、これらに対応できる人数の医師を確保することは容易ではないというのです。
医師法では、ワクチン接種にあたって、医師でなければ会場で体調や病状から接種が可能かどうかを判断できません。厚生労働省が示す予診票には医師記入欄が設けられ、その日接種が可能なのか、見合わせるのか記入し、さらに医師署名、記名押印を求めています。
■急ピッチでワクチン接種体制の構築を目指す大学のホンネ
これまで学内で学生が体調不良を訴えるなど、緊急の場合には、大学周辺の医療機関を頼りにしてきましたが、今回のような大規模なワクチン接種への対応は大学も想定していませんでした。
医学系の学部がある大学とは違い、この大学では、ワクチン接種のための人員を大学外から確保しなくてはならず、こうした状況からのスタートは苦労したといいます。
担当者は「トップダウンで体制をつくれる医療系の学部などを持つ大学は有利だな」と感じたといいます。
大学担当者は体制づくりが難航しているとしながらも、「検討は前向きに進められており、接種体制構築のめどがつき次第、実施したい」としています。