東京オリンピック開幕まで３週間と迫る中、「一部競技の無観客」案が急浮上しました。会場周辺のホテルは「予約がなくなる」と不安の声を上げ、居酒屋は「どう準備していいか…」と戸惑います。東京都の小池知事らも「無観客」の可能性に触れています。

■カウントダウン時計で「自撮り」

東京オリンピックが刻一刻と迫ります。

２日夜８時、東京駅前のカウントダウン時計には、スマホで写真を撮る人たちの姿がありました。

妻（２０代）と訪れた会社員（３０代）は「（東京オリンピックは）本当にあるのかなとか、あんまり興味ないねとか話していたんですが、ここまで迫ってくると、ちょっと楽しみ」と話しました。

この男性は１か月ほど前から、仕事帰りなどでほぼ毎日、カウントダウン時計をバックに自撮りしていました。この日は初めて、夫婦でツーショットを撮りました。妻は「来て良かったです」と笑いました。

■五輪「一部無観客」会場周辺戸惑い

開幕まであと３週間に迫った今、「一部競技の無観客案」が急浮上しました。

現在、観客の上限は収容定員の５０％、最大１万人という政府の基準の下で、準備が進められています。ただ関係者によると、政府や組織委員会が、大規模会場や夜間に行われる一部の競技を「無観客」とする案を検討しています。

横浜国際総合競技場の周辺にあるホテルで、大会期間中の予約表を見せてもらいました。サッカー男子決勝が午後８時半から行われる８月７日の土曜日は、予約表が赤く塗られ、全８０室がほぼ埋まっていました。

――もし「無観客」となったら？

ホテル宿泊支配人
「今埋まっているところがほとんど予約がなくなってしまうのではないかと。オリンピックのお客様以外の方も、いろんなプランを出していきながら、予約を取っていきたい」

■チケット保有者「残念さ倍増」

一方、東京スタジアム近くにある居酒屋のオーナーの記憶には、一昨年のラグビーワールドカップの熱狂がありました。オリンピックも「観客あり」を見越し、スタッフを増員して備えていますが、一部競技の無観客の可能性に戸惑いもあります。

オーナー
「どの種目が対象になるのかまだ全然分からないので、どう準備していいか、というのが正直なところです。１日も早く決定していただけたらと思います」

無観客の場合、チケットを持っている人にも大きな影響があります。

国立競技場で行われる陸上男子１００メートル決勝のチケットを持っている女性は、「一度『観客ありで』という流れになって、また『無観客で』となると、ちょっと残念さが倍増したかなと。一番は選手が安全に演技をできるというところだと思いますので、そのための無観客であれば致し方ないなとは（思います）」

海外の選手団が続々と来日する中、観客の有無はいまだに揺れています。

■小池知事「無観客も軸」復帰会見で

２日午後２時半過ぎ、登庁した東京都の小池知事は「久しぶりで」と、１０日ぶりにカメラの前に姿を見せました。午後４時過ぎ、席に座り、時折かすれるような声で会見に臨みました。

「東京都にとって今ほど重要な時期はないと考えております。山積する課題に全力で取り組んでいく。どこかでバタッと倒れているかもしれませんが、それも本望だと思ってやり抜いていきたい」

「（東京オリンピックは）たとえ倒れても全力で取り組んでいきたい。感染状況をよく注視しながら、どのような形がいいのか、無観客も軸として考えていく必要があるのでは」

一方、組織委員会の橋本会長はこの日の会見で「組織委員会としては無観客も覚悟しながら」と述べました。２人とも無観客の可能性に触れつつ、７月８日にも開かれるＩＯＣや政府などとの５者協議で判断する考えを示しました。

組織委員会はまた、オリンピックの開会式の終了時間が予定より３０分遅い午後１１時半になると発表しました。新型コロナウイルス感染対策により、入場行進で選手同士の距離を２メートル取らなければならず、時間を要することが分かったためといいます。

（７月２日『ｎｅｗｓ　ｚｅｒｏ』より）