コロナ禍で7千日迎えた「日本駆け込み寺」
新たな感染者が過去最多となった東京…長く続くコロナ禍で街の様相が一変した新宿・歌舞伎町で18年前から、行き場を失った人々のよりどころとなっている「駆け込み寺」があります。
創設者の玄秀盛さんは「夫婦二人とも在宅になり、不倫を清算したいという相談が多くてね」と、コロナの時代特有の事情を明かしました。
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■開所7000日目を迎えた「日本駆け込み寺」
「7月18日で開所7000日目になるんです」と話す玄秀盛さん。これまでに新宿・歌舞伎町で5万人以上の相談者に「来るもの拒まず、去るもの追わず」で無料で相談に乗ってきました。コロナ感染拡大以降、相談者の数は増えたといいます。
事務所前のテラスで「青空相談」も設置して、悩み相談、助成金の申請の仕方などに無料で応えています。先月の相談総数は41件。警察などに相談しても解決できないような「家庭内問題」「自殺」「ストーカー」についての相談が多かったと玄さんは話します。
「うちは、電話やオンラインだけの相談で完結させるのではく、対面での相談にします」
コロナ禍のまっただ中でも対面にこだわる理由を、電話だけでは根本的な解決には至らず、面と向かって話すことによって、一つの相談から派生して次の問題、解決すべき問題が見えてくるからと語りました。
リピーターとなる相談者も多く、玄さんのもとには、覚醒剤を断って介護の仕事に就いている女性が月一回、会いにきます。彼女は玄さんと会う約束をすることによって、再び覚醒剤に手を染めることなく社会復帰し、仕事を続けられているそうです。
■歌舞伎町に増える売春する女性たち
「お金に困って相談に来る女性のほとんどは、ホストにはまっている」と、玄さんは歌舞伎町ならではの実態を明かしました。
「彼女たちは体を売ることに罪悪感ゼロという印象があるけど、男が悪いな。特にホスト業界。借金漬けにしとる。ホストが『初回割引』など言うたり、うまいこと恋愛をコントロールしている」
ホストからお金を要求されて困っている女性からの相談を受けるという玄さん。
「(女性客の)実家まで来て、お金を要求されて困るという相談があった」
女性の親からの相談もよくあると話す一方で、玄さんは、新入りのホストなどが最低賃金以下で働かされている状況も背景にあると指摘しました。玄さんは女性や親からの相談を受けると、直接ホストクラブで談判することも辞さずに問題の解決を図っているということです。
■行政からこぼれ落ちる人たちのためにある場所
コロナ時代に特有の“悩み”として「夫婦二人とも在宅になり、不倫を清算したいという相談が多くてね…」と挙げました。こうした相談の場合は「別々に話を聞いて、具体的な解決策を提示する」といいます。
「駆け込み寺」に寄せられる相談の男女割合は女性からが約7割、男性からが約3割。行政のセーフティーネットからこぼれ落ちている人たちの相談に乗り、解決の糸口とその出口を提示しています。行政からの助成金には頼らず、寄付や玄さん自身の講演料、研修講師料などで運営されています。
しかし、コロナ禍で講演もキャンセルが続いています。スタッフ4人、事務所家賃などの必要経費はかかりますが、365日「駆け込み寺」の門戸を開ける決意に変わりはありません。
■20年目の区切りに「生命庁」創設したい
玄さんは、7、8年前に提案した構想に再度、取り組みたいと話します。
「今、『こども庁』や『デジタル庁』と言ってるけど、私は『生命庁』が必要やとずっと言うてる。問題、悩みがあったときに相談する各機関・団体はあるが、横断的につながっておらず、また、それらを統括できる司令塔的なセクションがない。それがないから救われる者も救われなくなる。それを変えるために『生命庁』の創設を提案したい」
自身の病気で活動は止まっていたといいます。コロナ禍の今、「生命庁」構想を開所20年目の節目に向けて、もう一度、提案して動き出したいと、玄さんは思いを語りました。
「私は何をおいても『命』が一番であって、それを救うためにやらなければいけないし、そうやってきた。生命庁を創ることになれば、私は何でもします」