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危機感共有されず…“感染急拡大”に対策は

2021年7月29日 18:28
危機感共有されず…“感染急拡大”に対策は

東京では28日、初めて新型コロナウイルスの感染者が3000人を超え、全国でも感染の急拡大が止まりません。専門家からは、「これまでに経験したことのない感染拡大だ」との危機感が示される一方、この危機感が共有されていないという強い懸念が示されています。

■感染拡大が急加速…専門家から相次ぎ危機感訴える声

28日、東京の感染者は初めて3000人を超えて、過去最多の3177人となりました。27日は2848人で、2日連続で過去最多を更新しています。先週水曜日(21日)は1832人だったので、ここからおよそ1.7倍も増えていて、感染拡大のスピードがこれまでと比較にならないほど加速しています。

東京都は29日、感染状況を分析する会議を開き、専門家からは非常に強い危機感を訴える声が相次ぎました。

国立国際医療研究センター・大曲貴夫医師
「これまで経験したことのない爆発的な感染拡大に向かっている。現在の新規陽性者数の増加比を継続することは早急に回避しなければなりません」

東京都医師会・猪口正孝副会長
「入院患者数は6月下旬から約1か月で倍増しており、救急医療体制のひっ迫が始まっています。真っただ中だと言ってもいいような状況」

都は医療機関に対し、救急医療や一般診療の縮小をしたり、予定していた手術を延期したりと、通常医療を制限することも視野にコロナに対する体制の確保を要請したということです。

都の会議で示された都内の繁華街の人流についてのグラフを見ると、前回、4月に緊急事態宣言が出された直後はすべての時間帯でぐっと人流が減っています。

それに対して、今回の緊急事態宣言が出された後、2週間ほどを見てみると、かなり緩やかにしか減少していません。実際に、午後10時~午前0時の時間帯で、宣言が出される直前の週から、出されたあとの週を比較すると、前回は48.5%減少していたのに対して、今回は12.7%の減少にとどまっています。

この点について専門家は、「この減少幅、減少の速度では、なかなか感染者数を減らすには至らない」と、宣言の効果が出ているとは言いがたいと指摘しています。


■自宅療養者は急速に増加、今後も増えていく予測

感染の急拡大でコロナ以外の一般医療が制限されることへの懸念も出ています。

東京都の自宅療養者の推移を示したグラフを見ると、7月上旬あたりから急速に増え始め、28日の時点で7348人でした。このままのペースで増え続けていくと、8月には3万人近くになると予測されています。さらに、入院や自宅療養を調整している人も増えていて、今後も増えていく予測です。

都の感染状況を分析する会議でも、「自宅で体調が悪化することが危惧されていて、速やかに受診できるしくみを強化するなど自宅での重症化を予防する必要がある」と指摘。体制の強化が求められています。


■感染の急拡大は全国に…「危機感の共有ないことが最大の危機」

こうした感染の急拡大は東京だけに止まらず、全国に広がっています。全国の感染者数を見てみると、28日、新たに確認された感染者は9582人。今年1月8日の7957人を大幅に超えて、過去最多を更新しました。

都道府県別で見てみると、首都圏の東京、埼玉、千葉、神奈川のほか、茨城、石川、京都の7都府県で過去最多となりました。また、福島、新潟、沖縄では過去2番目に多い感染者数となりました。そして沖縄では29日、新たに過去最多となる392人の感染が確認されました。

こうした状況を受けて、政府は、埼玉・千葉・神奈川・大阪についても緊急事態宣言を発出することや、北海道へのまん延防止等重点措置の適用を検討しています。菅総理は29日、関係閣僚と協議した上で、30日にも正式決定する方向で調整を進めています。

こうした状況に対して、専門家からは相次いで強い危機感が示されています。

政府分科会の尾身会長は、現在の感染状況について「この1年半で最も厳しい状況。感染を下げる要素はあまりなく、上げる要素はたくさんある」と指摘。つまり、コロナ疲れや夏休み、デルタ株など感染を広げる要素がたくさんあるとした上で、「国民に危機感が共有されていないことが最大の危機だ」と強調しています。

また、厚労省アドバイザリーボードの脇田座長も、「日本の感染対策は市民の自発的な協力が非常に大事なので、そういうメッセージを発していくことが大事だ」と強調しています。

夏休みも始まり、オリンピックでも日本選手のメダルラッシュで社会の気分が盛り上がっている」は事実です。ただ一方で、専門家の間では、「このままではオリンピックどころではなくなるほどの医療崩壊が迫っているとの切実な危機感が強まっています。

菅総理をはじめとする政治家は、楽観論を振りまくのではなく、この切実な危機感を国民に伝えるためのメッセージをしっかり発信してほしいと思います。


(2021年7月29日午後4時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)

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