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社会
2021年8月14日 16:20

東京五輪 LGBTQアスリート増加のワケ

「多様性と調和」を掲げ開催された東京オリンピック。性的マイノリティーを公表したアスリートは過去最多の183人に。アメリカのLGBTQアスリート専門メディア「アウトスポーツ」が見た「多様性の東京五輪」。共同創設者のジム・ブジンスキさんに聞きました。

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●金メダル11個で“世界7位” LGBTQ公表は競技に好影響も

──LGBTQ選手の活躍は?

飛び込みのトーマス・デーリー選手が金、銅メダル。ベネズエラのユリマル・ロハス選手が三段跳びで世界新記録。女子バスケット金メダルのアメリカ代表は複数の選手がLGBTQと公表しています。

LGBTQのアスリートが獲得した金メダルは11個で、国や地域別と比較すると、ドイツ、イタリア、フランスよりも多く7位に。素晴らしい結果でした。

──公表でパフォーマンスが向上?

(メダルの獲得数からも)公表することがパフォーマンスにネガティブな影響を与えることはないことがわかります。あるカナダの男性水泳選手は、公表した後の方がパフォーマンスがよいと話し、実際に前回のオリンピックよりも公表後の今回の方が良い成績でした。

──LGBTQアスリートの印象的なシーンは?

飛び込みトーマス・デーリー選手の金メダル獲得だと思います。彼は知名度が高く、ただ自分が勝利したというだけではなく、大勢の性的マイノリティーの人々にとって意味のある勝利だとオープンに話しました。一番影響を与えた瞬間だったと言えると思います。

イギリス代表の女子ホッケーにカップルがいたり、アメリカ代表の女子バスケットボール、スー・バード選手(金メダル)と女子サッカー、メーガン・ラピノ選手(銅メダル)は交際していて、互いにメダルを獲得。そういう人たちを見るのは楽しかったです。


●リオの3倍以上 公表アスリート増加の理由に“SNS”

「アウトスポーツ」によると、東京オリンピックで性的マイノリティーを公表した選手は過去最多の183人(8月10日時点)。前回のリオオリンピックの3倍以上となりました。

──公表するアスリートが増えている理由は?

ソーシャルメディアのおかげで本当の自分を見せることが容易になったのだと思います。自分のプライベートな生活について語ることに慣れて、ポジティブな反応があると、もっとやるようになります。

多くの国で同性婚が合法化されたことも挙げられます。飛び込みのトーマス・デーリー選手も結婚していますが、彼のパートナーは、ボーイフレンドではなく、「夫」なのです。そして、IOCが多様性を強調していることです。公表したからといって処罰されることはなく、IOCは喜んでくれます。みんなが、隠さなければいけないことではないということに気づき始めたのだと思います。


●トランスジェンダー選手の出場をどう見た?

──ニュージーランドの女子重量挙げローレル・ハッバード選手が、トランスジェンダーを公表する選手として初めて自認する性別でオリンピックに出場しました。

もう、トランスジェンダーの選手がいないオリンピックには戻らないと思います。

彼女が攻撃の標的にされたのはフェアではなく、IOCが決めた基準を満たし、重量挙げのルールの基準も満たしていました。そのうえで彼女は戦っていたのです。彼女は優勝はできず、すべての競技をトランスジェンダーの女性が制覇するなどといった奇妙な神話がありますが、そんなことにはなりません。彼女は男だったから、生まれつき有利だと言う人もいますが、競泳選手の肺活量が大きいことや、バスケットボール選手が高くとべることを生まれつき有利だという人はいません。どの偉大なアスリートも生まれつき有利なのです。


●公表183人のうち男性は約20人。背景にスポーツ界の“男女格差”

──公表する男性が女性に比べてはるかに少ないのはなぜ?

社会の扱いが男性アスリートと女性アスリートで異なるからです。全体的に女性のスポーツに対するメディアの取材が少なく注目されずに済むので、女性の方が気楽に公表できるのでしょう。

一方、男性アスリートはメディアに追われることを覚悟するか、黙っているかなのです。男性選手にもっと公の場で公表してもらうことが、我々が次に克服しなければならないことです。


●日・中・韓に“公表”選手はいなかった

──日本は、公表したアスリートはいなかった。どう見る?

公表した選手がいるのは、205の国と地域のうち30にとどまりました。同性愛が違法の国では、命に危険が及ぶ可能性もあるので隠さなければなりません。

北米、西欧が一番多くて、ブラジルにも少し、南アフリカにも数名いますが、アジアにはほとんどいません。日本、中国、韓国で公表している人はひとりもいません。

日本の社会に、声を上げることをできなくしている何かがあるのですか?非常に顕著ですから、文化的な何かしらの影響があるのだと思います。日本で身の危険を感じることはないかもしれませんが、彼らに公表できなくさせている何かがあるのは明らかです。

想像してください。日本で同性婚が認められれば、公表するのも楽になるでしょう。社会の構造がその大きな理由なのです。

■写真:AFP/アフロ