性的マイノリティー“さりげなく” 狙いは
世界的に、性的マイノリティーの権利啓発イベントが行われる6月。日本でも、LGBTQなどの多様な当事者を“さりげなく”登場させるCMを目にしました。制作者に、マイノリティー起用の理由や、CMの狙いを聞きました。
■高齢、外国籍…様々なマイノリティー登場するCM
「♪しなきゃなんてないさ しなきゃなんてうそさ」
――誰もが知る童謡「オバケなんてないさ」のメロディーに乗せて、90歳のフィットネスインストラクターや、スウェーデン出身の落語家などが登場するCMの中に、男性2人のカップルと子供が登場します。彼らは、ブログなどで同性カップルの子育てについて発信している「ふたりぱぱ」さん一家です。
■住宅弱者の課題 CM通じて“じぶんごとに”
これは、住宅や不動産のポータルサイト運営などを行うLIFULLのCMです。狙いについて、同社CCOでブランド戦略を担当する川嵜鋼平さんに聞きました。
CCO 川嵜鋼平さん
「(LGBTQは)すでに顕在化している社会課題のひとつと捉えています。企業として世の中をどう見ているのかを発信するのが、今回のCMです」
同社では、LGBTQ当事者だけでなく、外国籍の人や高齢者などの“住宅弱者”が住まいを見つけやすくする取り組みを進めてきました。さまざまな“マイノリティー”が登場するCMもその姿勢を反映したものだといいます。
川嵜さん
「住宅弱者の問題はLGBTQ含めまだまだ世の中に知られていない」「ダイバーシティ、インクルージョン、フェミニズム、エイジズム、レイシズム、本当に世の中にいろんな社会課題があるが、やはり自分と距離が遠いものと皆さん思われる」「CMで認知されることで、性的マイノリティーじゃない方にとっても、“じぶんごと”としていただき、みんなで解決していける未来を実現していきたいです」
■「ひげをそる人全て」めざし ドラァグクイーンを起用
電動シェーバーのCM。性能を説明するナレーションの後、あご部分の仕上がりを手で確かめながら、上を見上げる様々な年代と職業の“男性たち”。その中で一瞬だけ映るカットに、女装してステージに立ちパフォーマンスをする“ドラァグクイーン”が登場しています。
■表現にLGBTQ当事者いるのが「当たり前」の社会へ
このCMに起用されているのは歌唱ユニット「八方不美人」でシンガーとしても活躍する、ドリアン・ロロブリジーダさんです。CMを制作したパナソニックの担当者は日本テレビの取材に対し、「“ひげをそる人全て”を登場させたい」という思いだったとコメントしました。
担当者のコメント
「従来のシェーバー広告にあったような“毎日ひげをそるビジネスマン”だけでなく、接客業や舞台に上るための身だしなみとしてそる人、気持ちを切り替えるスイッチとしてそる人などを、年代や職業など幅広く取り上げることを大切にしました。ドリアンさんの場合は“人前に出る職業で、特にメイクをする際にそり残しがあっては困る”ということから起用に至っております」
映画やドラマなどでは、少しずつ題材として扱われる機会が増えてきた性的マイノリティーの人々。CM表現にリアルな当事者を出演させることについては、どう考えているのでしょうか。
担当者のコメント
「普段目にする表現物に登場する人の中には(そう見えていなくても)LGBTQ当事者の方がいる、それは特別な事でなく当たり前だと社会に認知されることが重要だと思います」
(写真提供:パナソニック)