ご近所さんと私。母ちゃん防災士の信念
がんで余命半年の竹川操枝さんの家には、ご近所さんが集まります。次から次へと…。
竹川さん「近所の人がそんな来てくださるなんて、ほんと私幸せもんや」
近所の人が集まる訳、それは、防災士、竹川さんが“近所づきあい”を大切にしてきたから。
竹川さん「近所づきあいを大切にするということも大事です。みなさん隣近所に助けてもらっている人ばっかりなんですよ、災害の時は。(災害の時)見たことない人より、見たことある人を助けませんか。悪いけど知らない人やったら、もし何かあったら踏んで逃げるかもしれないです。何回も言いますけど、隣近所、仲良くして欲しいんですね」
竹川さんは毎日のようにご近所さんを集めます。着なくなったセーターを持ち寄って防災リュック作り。そして、突然の、めった汁作り。実はこれも竹川流の防災訓練。
竹川さん「言わないけど計算、計算よ。やっぱり、やっていないとダメ。自然に作業と役割分担ができているわけよ。言わなくてもね。めった汁というのは、おかずがたくさんいらんわけよ。こんだけ入っているから、器もひとつでいいのよ。だから、被災地災害地向けなんよ。みんなの冷蔵庫を持ち寄ればなんでもできる。町内全部冷蔵庫、私のもんや、ハハハ」
「同じ物を食べると仲良くなれる」それは、新潟県中越地震のボランティアに参加した時感じた、防災の心得。
地域をつないできた、防災士の竹川さん。5年前に虫垂ガンを患い、手術。しかし、再発、入院を余儀なくされた。
竹川さん「コロナで面会謝絶、誰も会いに来てくれない。末期ガンであるならば、私の残りの人生、少しでも家族と暮らしたいっていうので」
家族、医療スタッフの協力もあって、竹川さんの望みがかないました。
竹川さん「娘が毎日リビングのソファで寝て、一晩中添い寝してくれるんです。私といつもケンカしたり行き違いしていた娘が、こんな優しい子だって知らなくてね…」
この日、お見舞いに来た横浜恵さん。
竹川さん「私の後継者で」
防災士の横浜さん「竹川さんの町でやり続けてきたつながりを絶やしたらいけませんしね」
竹川さん「そうそう、命にかかわることやから」
消防車までお見舞いに駆けつけました。
竹川さん「ひょっとしたら来るわっと思った」
いつもの笑顔、しかし病気は進行していました。
「朝から…具合悪くて…竹さんが」
次々と、ご近所さんたちがやってきて寄り添います。
横浜さん「竹川さん、横浜です」「竹川さん、私、今日小坂小学校で防災の授業してきたよ」
その日、竹川さんは息を引き取りました。ご近所さんたちは、めった汁を作りました。
「竹さん、めった汁持って来たよ」「いいニオイする?」
竹川さんが、最後まで伝え続けたこと。
「災害にあったら、誰が助けてくれるんですか?隣近所です」
2021年7月11日放送 NNNドキュメント’21
「ご近所さんと私。~母ちゃん防災士の信念~」を再編集しました。
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