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タイと日本…一杯のコーヒーでつながる思い

2021年10月1日 10:59
タイと日本…一杯のコーヒーでつながる思い

■きょうは何の日?

10月1日は「国際コーヒーの日」。世界一のコーヒー生産国・ブラジルで、毎年9月末に豆の収穫が終わることから、コーヒーの新年度が始まる日とされています。コーヒーにとって節目の日ですが…。

東京・神楽坂で、タイの小さな村から届くコーヒーを提供する女性がいます。タイと日本、一杯のコーヒーでつながる思いを取材しました。


■タイの少数民族から届くコーヒーフルーティーで酸味が特徴

東京・神楽坂にあるコーヒー店『アカアマコーヒー』。ここでしか味わえない一杯というのが…。

常連客「フルーティーさだったりいろんな味わいを楽しめるところがおいしいなって」

フルーティーですっきりとした酸味が特徴です。このコーヒー豆が育つのは、タイの山奥。少数民族「アカ族」が暮らす人口300人ほどの小さな村から届けられています。

アカアマコーヒー日本店・山下夏沙オーナー「“お母さんの村を豊かにしたい”そういう思いがこもっているコーヒーっていうのに衝撃を受けて」


■アカ族のお母さんへの思いが詰まった“アカアマ”コーヒー

“アカ族のお母さん”という意味が込められたこのコーヒー。ブランド化したのは、アカ族のリーさん(36)です。

リーさん「家族がコーヒーの仕事をする姿を見てきて、コーヒーで(村の人々の)暮らしが豊かになればと考えたんです」

コーヒー農家に生まれたリーさん。幼い頃、村は貧しく、子どもたちを学校に通わせるため、懸命にコーヒー豆を育てる母の姿を見てきました。“村のコーヒーの魅力を広めることが母への恩返しに”そう考え、村から遠く離れた学校に通い、村で初めて大学を卒業。その後、アメリカでコーヒーについて学び、改良を重ねた結果、村のコーヒーのブランド化に成功しました。今ではタイ国内に3店舗を出店するまでに。

リーさん「村の生活の質はどんどん良くなっていて、教育の質もかなり向上しました」

売り上げは村に還元され、今では村のほぼ全ての若者が教育を受けられるようになったといいます。

リーさん「僕のビジネスが成功することが大事ではなくて、僕のコーヒーでアカ族のチャンスを広げたいと思ったんだ」


■ストーリーを知れば、一杯のコーヒーがさらにおいしく

そんなリーさんの熱意に打たれ、コーヒーに込められた思いを日本に伝えたいと新たに店をオープンした山下さん。

山下オーナー「誰がどんな場所でどんな思いで作っているコーヒーかストーリーを知っていたら、さらに運ばれてくる一杯のコーヒーがおいしくなると思うんです」「こんな人が作ってるんだ、おいしいなっていう、そういう感覚で飲んでもらえたらすごいうれしいなと思います」


■山下オーナーの“もう一つの顔”

毎日店頭に立つ山下さんですが、彼女には実はもう一つの顔があります。それは「旅人」です。

旅行先のタイ・チェンマイでたまたま訪れたのが「アカアマコーヒー」。それがリーさんとの出会いでした。おいしさはもちろん、優しさが詰まったエピソードに感動し、村のコーヒー農園に何度も足を運ぶようになりました。彼女がこのコーヒーを日本に広めたいと思った一番のわけは…。

山下オーナー「支援っていうよりは、一緒にビジネスをやることによって、どこかの村とか、その誰かが豊かになっているっていうことができたら一番いいんじゃないかなと」

リーさんの思いに共感をし、「彼らのために何かをしたい」その思いはもちろんありますが…。

山下オーナー「そこの人たちが自分たちのために始めたものがちゃんとビジネスになって日本に届いてきているということは、素晴らしいなって」

フェアトレードの認証がついた商品の流通は、日本でも盛んになっていますが、どこでどんな人たちが作っているのか、なかなか伝わりづらいものもあります。

山下オーナー「ここでは村から直接届いた豆を使い、利益を直接還元することができる。どのように作られたコーヒーか自分たちがお客さんに直接伝えることができる」

このコーヒーに込められたストーリーに少しでも思いを寄せてもらえたら、そんな思いで今日もお店に立ち続けます。

出会って約10年、“親友”であり、“ビジネスパートナー”であるリーさんと山下さん。

山下オーナー「日本でどんなふうにお客さんに受け入れてもらっているかを伝えて、村人たちのモチベーションが上がる、そういう循環が生まれる場所であってほしいなと」「ただビジネスを起こすんじゃなくて、世界中のいろんな人とつながって、良い循環を生みだすことを、人生をかけてやっていきたいと思っています」

海外に行けない今、“いつもの一杯”が誰かの人生を変えるきっかけにつながっています。