女子大学生と考える“子宮頸がんワクチン”
子宮頸(けい)がんを防ぐためのワクチン(HPVワクチン)の接種の積極的な呼びかけが来年4月に再開されることを受け、厚生労働省は、対象となっている時期に接種機会を逃した女性が無料で接種できるようにする「キャッチアップ接種」を実施する方針で、対象年齢などが検討されています。
キャッチアップ接種の対象となるのか?当事者である女子大学生とオンライン座談会を行いました。
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話を聞いたのは、女子栄養大学の性教育サークル「たんぽぽ」メンバーの3人。ゆめさん、ゆうかさん、ひとみさんです。3人とも養護教諭を目指して勉強中です。
──この活動を始めたきっかけは?
ゆうかさん
「先輩たちが勉強をしている中で、4年生は全員接種しているのに、3年生はひとりも接種していなかったことに気が付きました。その背景に何があるのかなってなった時に、積極的勧奨が中断されたことがあって、先輩たちがキャッチアップ接種も含めてワクチンを打ちたい人が打てるように活動を始めました。先輩方が署名を出されて、あとちょっとなので、自分たちがもう一押し活動し、実現させたいという思いがありました」
──HPVワクチンを打とうとすると約4~5万円。大学生にとってこの値段はどうですか?
一同
「高いです。すごく高いです」
ゆうかさん
「知っていたら無料の期間に打ったのに。通知が来たら打ったのにって、悔しくて」
──無料で接種できる期間に通知が来た人はいますか?
一同
「来ていません」
──ワクチンの副反応についてはどう考えていますか?
ゆめさん
「中学校の時、小児科に行った時に、看護師さんからHPVワクチンのことを教えていただいたんですね。これは高校1年生までしか打てないんだよと教えていただいて、看護師さんからは、『打つことをおすすめします』と言われたんですけれど、その時に(接種後)けいれんしている女の子の事例があったというお話をいただいて、打つの?打たないの?となった時に、私が決めなきゃいけない。親からも『自分で決めなさい』というふうに言われてしまって。正しい知識を提供してくれる人がいなくて。周りのみんなも打っていないし、打たなくていいやとなってしまいましたね」
ゆうかさん
「科学的に危険ではないと分かったのであれば、キャッチアップ接種されるべきだし、副反応が出てしまった原因を解明してほしいなと思っています。それが解明されれば、今も苦しまれている方も安心されるだろうし、積極的勧奨再開の流れにも、みんなが分かれば同意していただけると思います」
ひとみさん
「当時、報道を見て、すごく怖かったんです。副反応のことばかり報道されていて、良い面も紹介されていたと思うけど、悪い面が紹介されていると、すごく怖いものだと思っていました。小児科のポスターに『HPVワクチン』を打ちましょうと書いてあっても、母親も打たなくていいんじゃないと思っていました。でも、大学で勉強を始めて、必ずしも悪い面だけじゃなくて、副反応がある人はどのくらいいるのかとか、病気を予防する良い面とか、そういうのが分かって、今は打ちたいなという良い印象があります」
──対象年齢の時にメリットとデメリットを教えてくれる人がいなかったということですが、当時を振り返ってそういう人は必要でしたか?
ゆめさん
「そう思います。私たちは養護教諭を目指しているので、専門的立場から教えられると思うので。今回のキャッチアップ接種の対象になったら、私たちが本当に打った当事者としての情報、科学的な情報もそうだし。子どもたちが打つか打たないかの情報も増えるので、自分がHPVに感染して病気になりたくないっていうのもあるし、養護教諭となった時に次の世代に教える時にものすごくメリットが出てくるので打ちたいなと思います」
──海外では男性も接種対象となっています
ゆうかさん
「男性も無料で打てるようになるべきだと思います。男性が発症するがんも防げるので」
ゆめさん
「男性も打てるようになったらいいですよね」
ゆうかさん
「HPVワクチンのメリットはたくさんのがんを防げる面もあるので、女性だけが打てるのは不平等かなと思います」
──大学生になるとパートナーができたりする年齢だと思うのですが、HPVワクチンなどについてパートナーと話をしますか?
ゆめさん
「相手にも知っておいてほしいこともたくさんあったので話すようになりました。私はサークル活動の話の流れで話します」
──皆さんはサークルの活動をしているけれど、何もきっかけがない人はどう話したらいいでしょう
ゆめさん
「SNSで専門家が監修しているものでも、笑っちゃうようなアカウントがあるので、きっかけになればいいし、生理が来るようになったらデートの時とかに『きょう体調悪いんだよね』と話すように、病気のことだから重く話すんじゃなくて、『私はニュースでこういうことを見て、怖いと思っているんだよね』とか普通に話せるようになったらいいなと思います」
ゆうかさん
「そういうことを普通に話せる関係がいいよね」
──今、キャッチアップ接種の対象年齢が議論されていますが、皆さんの希望は?
ゆめさん
「できるだけ多くの人(を対象に)です。最低でも積極的勧奨が始まってからの人は接種すべきだなと思います。案にあがっている2002年~2005年生まれだと私たちは対象外になってしまうので」
ひとみさん
「本当にそう」
ゆめさん
「私たちの同級生でさえも打っている人を見たことがないので。最低限、積極的勧奨をやめていた学年は打たせてほしいです」
ひとみさん
「欲をいえば1997年生まれからだよね」
──政府にはどんなことをお願いしたいですか?
ゆめさん
「できるだけ多くの人が打てるようにしてほしいし、あとは周知の方法、ちゃんと多くの人の目にとまる方法で知らせてほしいです」
──皆さん、ありがとうございました
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1997年度から2005年度に生まれた女性は、HPVワクチン無料接種の対象だった時期に、国による積極的呼びかけがない中、接種しなかった人が多い。対象年齢をすぎて、自費で接種する場合、およそ5万円かかるため、厚生労働省は、無料で接種できる「キャッチアップ接種」の仕組みをつくるとして、対象範囲を検討しています。