同性婚訴訟 赤いランドセル嬉しくなかった
同性同士での結婚を認めないのは憲法に違反するなどとしてトランスジェンダー男性らが国を訴えている裁判が16日、東京地裁で開かれ、男性は性同一性障害による自身の生きづらさや同性婚の必要性について意見陳述しました。
原告のトランスジェンダー男性は、都内に住む40代の一橋さん。グレーのスーツに紫のネクタイで証言台に立ちました。
一橋さんは、女性の体で生まれましたが、男性として生きるトランスジェンダーで、戸籍上の性別は「女性」です。
一橋さんは現在、40代の女性パートナーと、女性の子どもと3人で一緒に暮らしています。戸籍上は「女性同士」のため、法的な結婚は認められていません。
「パートナーと婚姻して、法的な夫婦になりたい」「婚姻は大切な家族を守るための仕組みだと思う」
■「赤いランドセル、うれしくなかった」
一橋さんは「女の子」として育てられました。
「性別への違和感は幼稚園の頃からありました」「七五三のお祝いで赤い女の子用の着物を着せられ、大泣きしたことを覚えています。赤いランドセルやピンク色の文房具も自転車も本当はどれもうれしくなかった」
それでも、親の愛情に対し嫌だとは言えませんでした。初恋は、小学校高学年の時。女性を好きになりました。
「自分は『男』として相手を好きになっていることに気づいた」
電車に乗れば「あの人は『男』?『女』?」と好奇の目にさらされ、風呂では自分の体を見ないよう電気を消すこともあったといいます。
■「性別変更」特例法が成立も…
性同一性障害をめぐっては、2003年に、一定の要件を満たせば戸籍上の性別を変更できる特例法が成立。一橋さんは性同一性障害の診断を受けたものの、性別変更の要件の一つである手術は受けていません。
「私の場合は卵巣を摘出する手術を受けなくてはならない」「健康状態が悪化して、仕事にも支障がでてくることになれば、生活の糧を稼ぐことも困難になる」
大切な家族を守るため、リスクの高い手術はしない考えです。
■「子どもたちが希望をもてる社会に」
法律上は赤の他人である一橋さんとパートナー。財産の相続はできず、互いが入院した際などに面会できない可能性もあります。
同性婚の法制化を求める理由について一橋さんは。
「婚姻したい目的も、婚姻を必要とする理由も、ほかの人たちと同じです」「私たちが望んでいるのは同じスタートラインに立たせてほしい、ということです」「トランスジェンダーの子どもたちが希望をもてる社会にする責任が私たち大人にはあります」「この訴訟を通じて、トランスジェンダーでも仕事をして、パートナーを見つけて、家族をつくることもできることを知ってほしい」