元なでしこ横山 トランスジェンダーを語る
元なでしこジャパン・横山久美選手(28)は今年6月、女性の体で生まれながらも、男性として生きる“トランスジェンダー”だとカミングアウトしました。
現在、アメリカ女子サッカーリーグNWSLのワシントン・スピリットでプレーする横山選手。チームは今年、リーグ初優勝に輝きました。
小学校1年生の時にサッカーを始め、女子サッカーの強豪・十文字高校(東京)で活躍。そのころから、女性の体への違和感を覚えていたといいます。
「中学校1年で女子チームに入った時に自分ちょっと違うなと。結構チームメイトにも自分みたいな人たちがいて、色々な話を聞いてすごい納得したというか、それで感じましたね。『自分もそうかも』と。女性としての未来が描けなかった」
横山選手は20歳の時に乳房を切除する手術も受けました。しかし当時、公表することはありませんでした。カミングアウトを考えるようになったのは、海外で生活を始めてからでした。
「海外の人の方が結構寛大というか性の部分に関しては『本当に隠さなくていいんだよ』というふうにはすごい言われました」
横山選手のパートナー・なみさんの言葉が横山選手のカミングアウトを決意させました。
「『顔も名前も知ってる人は知ってるだろうし、そういう部分では隠しきれないよ』というふうに言われて。『だったらまあ堂々としたらいいんじゃない?』と言われたのが決め手ですね。『自分が女性だろうと男性だろうと自分は自分だよ』と『中身は変わらないでしょ』と言われたのが今でも胸にあるかなとは思っています」
今年6月、横山選手は親友の元なでしこジャパン・永里優季選手のYouTubeチャンネルでカミングアウト。
「オープンにします。将来、サッカーをやめて男になって生きていきたいなって想いがあって。今まで何人かの女の子とも付き合ってきたし、最近は日本でもLGBTQっていう言葉が普及してきて色々取り上げられてますけど、自分みたいな立場の人が声を大にして言わないとまだまだ発展していかないかなと思って」
これにアメリカのバイデン大統領もSNSで「あなたの勇気をとても誇らしく思います。あなたのおかげで世界中の数えきれないほど多くの子どもたちが自分たちのことを肯定的に捉えることができるようになるでしょう」と祝福しました。
横山選手にとって一番怖かったのは父がどのような反応をするかでしたが、「『辛かったよね』みたいな。『でもまあここから色々苦しいと思うけど一緒に頑張ろうね』とは声をかけてもらいました」とあたたかい言葉がかえってきたといいます。
そして今年10月、「『今日行きたいところがあるから』と言って、スタジアムに連れていって告白しました」となみさんにサプライズでプロポーズしました。
なみさんの両親に挨拶に行くと、「『うちは全然気にしないよ』と言ってもらったのが初めてだったので、嬉しかったですし、一応結婚したという報告も本人(なみさん)が伝えたんですけど、その時も『息子が一人増えた』みたいな感じで言ってもらって、すごい嬉しい気持ちになりました」
結婚した横山選手となみさんの元には、「『自分もそうなんですけど周りに言えてないんです』とか、パートナーの方にも『FTM(トランスジェンダー)の方と付き合ってるんですけど』みたいな相談のメッセージとか『応援してます』というのはすごいたくさんきました」とSNSで様々な意見が寄せられました。
中には肯定的な言葉だけでなく、否定的な言葉も。それでも「知ってくれただけありがたいなって思いますし。いろんな人がいるよというのを知ってもらえたらいいかなとは思ってます」と胸の内を明かしました。
写真:ZUMA Press/アフロ