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アルツハイマー病の新薬を“審議” 効果は

2021年12月22日 19:19
アルツハイマー病の新薬を“審議” 効果は

世界初となるアルツハイマー病の新薬について、22日、厚生労働省の専門家会議が審議を行っています。認知症の7割を占めるアルツハイマー病の治療は新薬でどう変わるのか、詳しく解説します。 

    ◇

■新薬「アデュカヌマブ」とは?

新薬は、日本の製薬大手エーザイと、アメリカの製薬会社バイオジェンが共同開発した「アデュカヌマブ」という治療薬です。

これまでは、症状の進行を遅らせる薬しかなかったのですが、この薬は症状の進行自体を抑えるものです。これが、世界で初めてだといいます。

どういう効果があるでしょうか。

アルツハイマー病とは、脳にアミロイドβという異常なタンパク質がたまり、神経細胞を破壊して脳に萎縮が起こるとされています。軽度のもの忘れから徐々に進行して、時間や場所などの感覚がなくなっていきます。

今回の新薬、アデュカヌマブは、アミロイドβを取り除くことができる薬で、神経細胞が壊れるのを防いで、進行を抑える効果があるというわけです。

エーザイによると、この薬は2つの臨床試験が行われています。そのうち1つの臨床試験では、認知機能等の低下を22%抑えたとしています。ところが、もう一方の臨床試験では、明らかな効果がみられなかったといいます。

また、2つの臨床試験では、脳内のアミロイドβが59%から71%減少していることが確認されました。

日本でも去年12月に承認申請が出されていて、その審議が22日、行われているわけですが、アメリカでは今年6月に承認されました。

ただ、これは「条件付き」でアメリカのFDA(=食品医薬品局)は、承認後にも追加の臨床試験を行うことを義務づけていて、有効性が確認できなければ、承認を取り消す可能性もあるとしています。

また、EUでは、EMA(=ヨーロッパ医薬品庁)は今月17日、アデュカヌマブの販売を「承認しない」と発表しました。

理由としては、臨床試験では十分な効果と安全性が認められなかったためとしています。これを受け、バイオジェンは再審議の請求を行うとしています。

■専門家「治療体制が進むきっかけに」

日本認知症学会の理事長で、東大大学院医学系研究科の岩坪威教授に話を聞きました。

アルツハイマー病の治療は、「現在は対症療法薬しかなく、脳の変化そのものに斬り込む薬が長年求められていた」ということです。

今回の新薬が承認されれば、「今後、類似の薬や新しいメカニズムの薬が出てくるなど、治療や診断に関する研究開発も刺激し、アルツハイマー病全体の治療体制が進むきっかけになるのは間違いない」と話していました。

認知症全体の中でも、アルツハイマー病の人は最も多く、7割を占めています。

認知症患者は、全体でおよそ600万人いると推計されていて、4年後の2025年には700万人と、高齢者の5人に1人が認知症になると予測されています。

若くても発症することがあって、65歳未満の「若年性認知症」は3万5000人以上と、誰もがなりうる病気と言えます。

■対象は“初期症状”認知症のサインとは?

エーザイによると、今回の新薬の対象は初期症状の人で、薬の投与が早ければ早いほど効果があるということで、症状が軽いうちに気づいて、薬を投与することが大事だと話しています。

岩坪教授は、今回の薬は認知症の症状がでるかでないかの早期の段階が対象で、大変で悩んでいるのは中等から重度の患者と指摘しています。今回の対象は、その前の段階の患者となります。

ただ、初期症状の段階だと、本人も周りも「認知症」だとはなかなか認めたくない気持ちがあって、軽いうちだとお医者さんにもかからず、診断が遅くなりがちだといった背景もあります。

早期の発見が重要ですが、単なるもの忘れと、認知症の症状をどう見分ければいいのでしょうか。

厚労省によると、もの忘れには、加齢によるものと認知症によるものがあって、なかなか区別が難しいということですが、例えば次の5つのサインをあげています。

1.体験したことを「すべて」忘れる

体験したことについて、「一部」を忘れるのは加齢によるもの忘れですが、「すべて」を忘れているのは認知症によるもの忘れだということです。例えば、朝ご飯のメニューを忘れただけなら加齢によるもので、朝ご飯を食べたこと自体を忘れている場合は、認知症によるものかもしれないということです。

2.新しいことを覚えられない

学習能力については、加齢でも維持されますが、新しいことを覚えられないと認知症のサインとなるということです。

3.もの忘れの自覚がなくなる

認知症の場合は、最初はもの忘れを自覚していても、次第にもの忘れをしていることに気づけなくなり、話の中でつじつまを合わせようとすることもあるということです。

4.いつも探し物をしている

探し物に対して、加齢の場合は自分で努力して見つけられるが、認知症の場合はいつも探し物をしているということです。誰かが盗んだなどと、他人のせいにすることがあるといいます。

5.もの忘れで日常生活に支障をきたしている

加齢によるものでいうと、日常生活で重要ではないことや知識、例えばタレントの名前や昔読んだ本の題名などを思い出せないとかがあります。これは加齢による範囲内です。

認知症のサインとしては、自分の経験した出来事を忘れる、大事な約束を忘れるなどがあります。

岩坪教授も認知症かどうかは、どれくらい自立しているかがポイントだといい、周囲の介助がどの程度必要かをみるそうです。

    ◇ 

認知症は、患者のみならず、介護にあたる家族や周囲の負担が重く深刻な社会問題となっています。新薬が登場すれば、希望の光となるのは間違いないですが、こうした社会問題を幅広く議論するきっかけになればと思います。 

(2021年12月22日午後4時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)

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