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「おいてけぼり」―9060家族―後編

2021年12月24日 14:30
「おいてけぼり」―9060家族―後編

「自分だけ“おいてけぼり”というか、変わってないっていうか」

引きこもり歴35年の敬子と、63歳、無職の兄。2人のひきこもりの面倒を見る、91歳の父は突然亡くなった。

敬子、53歳。引きこもっていたこの家を離れる。

長男「元気でね」

パチンコをやめられない長男は、おいてかれる。

二男・俊光さん「兄の近くだと妹の生活保護費まで、兄に使われてしまう可能性があるのが1番の(理由)」

妹をこの家においておくわけにはいかない。

二男の俊光さんは、自分が住む名古屋へ連れ出した。六畳一間、はじめてのひとり暮らし。

「慣れた?」

敬子さん「あんまり慣れてない」

自立まで様々な助けが必要だ。生活保護などを申請し、1か月約13万円で生活する。

ヘルパー事業所の職員「こうやってサービス使いながら、一緒に関わらせていただきますんで、いいですか?よろしくお願いしますね」

社会から“おいてけぼり”だった35年。父は怒らず、子どもの生活を支えた。

父「モルモット用ですよ」

記者「あ、敬子さんの?」

父「もう草いかんぞ」

敬子さん「ないね、なかなか採る場所が」

そんな父は、もういない。ヘルパーの助けを借りながらの都会暮らし。はじめて、友達ができた。

敬子さん「これに肉が入るともうちょっと…」

友達「ウケる~」

敬子さん「あ~ごめんなさい。肉好きだからさ」

彼女も過去に心を閉ざしていた。二男・俊光さんが、立ち上げた、引きこもりや不登校で悩む人の会のメンバー。

友達「私も期間は短いけど家から出られなかった時が1年半ぐらいあったから」

友達「掃除していい?」

敬子「いいけど」

友達「けど?」

敬子「大変だよ」

自分の関わりが、少しでも助けになったら。『やってね』ではなく、『一緒にやろう』が敬子にとってありがたい。人とのつながりで。少しずつ。

二男・俊光さん「よかったね。色んな人とつながって」

敬子さん「よかったよ」

二男・俊光さん「怖かったのがうそみたいだね」

敬子さん「うん。前から比べると」

ひとり暮らしを始めて2か月。敬子は54歳になった。また、疎外感を抱きはじめていた。

敬子さん「また朝が来るのかと思うとつらい時ってあるよ」

友達「それはいまだにある」

敬子さん「夜のほうが気楽。昼間のほうがさみしい」

外の世界が怖い。みんな、抜け出したかった。

おいてけぼりの65歳の長男。部屋はきれいに片付いていた。

長男「もう掃除も全部終わった…早くじいさんのところにいきたいだけ。もう帰って」

90歳が60歳の子を支える“9060家族”。

敬子さん「私にしたら奇跡だよ。今の生活1人でいる時点でビックリしとる」

目の前の“9060家族”。おいてけぼりに、できるのか…。


※フルバージョンはhuluで配信中

2021年10月24日放送NNNドキュメント『おいてけぼり ~9060家族~』(中京テレビ制作)を再編集し、前後編の2回にわけてお届けします