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コロナ以外の患者どうする? 医師の苦悩

2022年1月29日 4:59

新型コロナウイルスの第5波の教訓から、コロナ専用病床を増やす中、コロナ以外の救急患者の病床が不足しています。また、感染者や濃厚接触者の急増で、発熱外来に患者が殺到するなど、医療現場ではオミクロン株ならではの事態が起きています。

■発熱外来が主戦場

「第3波や第5波でも少し外来が立ち行かなくなりそうな時があったが、今回ほどではなかった」「オミクロン株で、濃厚接触者と思われるような方が、病院になだれ込んでいる」清智会記念病院(東京・八王子市)の横山智仁医師は発熱外来の混雑ぶりに戸惑っている様子でした。

オミクロン株感染者の診察も行う横山医師は、これまで数十人を診る中で、従来株に比べ、のどの痛みを訴える患者が多い一方、肺炎が起きているかを調べるCT撮影が必要なケースは1例もないと述べました。

「風邪とインフルエンザの間ぐらいの肌感覚。主戦場は外来に移った」と話し、入院患者用の病床確保が焦点だった第5波との違いを強調しました。

■“自称”濃厚接触者にも対応、発熱外来をどこまで増やすか?

発熱外来では、ある患者は症状について「のどの痛みだけです。だるいだけ」と答えていました。

こうした発熱がない患者の中には、保健所から濃厚接触者として指定された人だけでなく、職場で感染者が出たなどとして来院する“自称”濃厚接触者も含まれるといいます。

需要の急増をうけ、清智会記念病院は、発熱外来の枠を一日10枠から30枠に増やしました。横山医師は「それでもいっぱいいっぱいなんで、どうしようかと。場合によっては夕方5時以降に有志で(発熱)外来をやるかという話もしている」と述べました。

一方、院内の医療従事者にも、1月26日時点で濃厚接触者が3人。いずれも検査しながら勤務を続けていますが、いつ陽性者が出てもおかしくない状況です。

横山医師は迷いをみせました。

「あまり事業・業務を広げてしまうと、かえって混乱のもとになるのかなと懸念していて、プラスアルファの(発熱)外来までやるかというのはちょっと悩んでいます」

■地域のクリニックも発熱外来を

こうした病院の窮状に、八王子市は地域の病院・医師会と連携し、開業医向けウェブセミナーを実施。発熱外来の機能をクリニックにも担ってもらい、病院の負担を軽減する取り組みを進めています。

セミナーで講師も務める横山医師は、「開業医の先生方にも積極的に参加していただいて、なるべく地域の多くの場所で検査ができて、患者さんを分散させることができれば、入院など病院機能を保つことができるのかなと思っています」

■コロナ以外の救急患者が受け入れられない

清智会記念病院が直面しているもう一つの課題は、コロナ以外の救急患者が殺到してきていることです。

院内の救急処置室では、連日、救急患者の受け入れを求める電話が鳴りますが、コロナ以外の救急患者用の病床が足りず、受け入れを断るケースも出てきています。

横山医師は「二次救急医療機関」としての役割を果たせない状況になると危惧しています。

「僕らの病院は、一番の役割は救急車を受け入れることなので、そこがしっかりやりきれていないことに、すごく残念というか、悔しい思いがしています。」

この病院には177の病床がありますが、1月に入り、その使用率はおよそ95%。ほぼ満床の状態です。

横山医師は「95%というと、100%じゃないとツッコミがあるかもしれないですが、例えば何らかの処置や手術で予約されている方もいるので、100%稼働することはまずないです。95%というのは異常事態というか、救急車は受けられないですね。(病床の)循環として、比較的良いだろうといわれる状況が85%から90%ぐらい。そうすると、救急医療もしっかりできるし、入院しなければならない方が迅速に入院できる。85%だと少し余裕があって、90%だともうキツいというイメージなので、95%というのは、受け入れてあげたい救急車が全然受け入れられない状況です」

なぜこうした状況に陥っているのでしょうか。横山医師は「コロナ(専用)病床が増えたおかげで、救急のベッドが足りないというのは間違いなく言える」と説明しました。

感染拡大による病床不足を防ぐため、東京都は、コロナ専用病床の拡大を大学病院などに要請。通常の病床をコロナ専用に変えることで、1月中旬から、八王子市全体でコロナ病床が1.3倍に増えました。

しかし、その影響で、コロナ以外の病気やけがの救急患者を受け入れる病床が不足する事態になっているといいます。

■コロナ病床なぜ再開しないのかと問い詰められ・・・

第1波から第5波までは、コロナ専用病床を4床確保してきた清智会記念病院ですが、現在は一度閉じたコロナ専用病床を再開せず、地域の救急医療を守ることに注力しているといいます。

横山医師は「昨日(1月25日)、東京都からコロナ病床、なんで開けないんだっていう話がありました。都として二次救急よりコロナを優先するという見解なんですかと聞いたら、態度を保留されてしまい…コロナを担当している会議や部署であれば、もちろん1床でも多い方がいいでしょうが、コロナだけみてるわけじゃない僕らの病院からすると、コロナコロナと言われてもなあ、というのは正直なところあるので」と複雑な表情を見せました。

■コロナ病床に別の患者受け入れ?

救急搬送困難事案は、1月23日までの1週間、コロナ禍で過去最多、全国で4950件にのぼっています。

一方、オミクロン株の特徴からか、感染者数の割には、まだコロナによる入院患者が多くはなく、確保したコロナ病床が空いている状態です。

こうした事態を解消すべく、政府はコロナ専用病床に通常の患者を受け入れてもよい、という通知を出しました。

しかし、横山医師は、「コロナの方とコロナではない方を混在させるわけにはいかないので、現実的にそれはなかなかないのかなと思う。(病床不足は)コロナだけではなく、救急の対応とのバランスの中で考えていかなくてはならない。今までのデルタ株の考えにとらわれず、僕ら自体が変異するというか進化・変化していかないと、オミクロン株への対応ができないんじゃないかなと思います」

今後、高齢者の感染が増えれば、コロナ専用病床がより必要になる可能性もあります。コロナ対策と通常医療との両立をどうはかるか、難しいかじ取りが求められています。