「パニック状態になりかけた」 ジェット船…大荒れの海で漂流22時間 乗客語る「緊迫の一部始終」
24日に乗客乗員121人を乗せたまま漂流したジェット船が、25日朝、伊豆大島に到着しました。当時、船内ではなにが起きていたのか。22時間ぶりに船を下りた乗客が「パニック状態になりかけた」「トイレに行くのも必死だった」などと「緊迫の一部始終」を語りました。
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突如、身動きが取れなくなったジェット船。海面が見えたり、見えなくなったり…、乗客は激しい揺れに何度も襲われました。次第に響き渡ったのは…えずく人の声。
乗客
「パニック状態になりかけた」
「万が一の転覆という可能性も考えていた」
緊迫の22時間。
24日、乗客乗員121人を乗せたまま漂流した東海汽船のジェット船「セブンアイランド愛」。東京・竹芝を出港し、伊豆諸島の式根島を経由して新島に向かう予定でしたが、油漏れによってかじがきかなくなり、自力航行不能に。千葉の南の海上で漂流する事態となりました。
その後、駆けつけた海上保安庁の船などに引っ張られながら伊豆大島へ。夜を徹して行われた移動。
記者(25日午前3時ごろ 伊豆大島)
「まだ暗い海の中に、小さな光が見え始めました。3つほど光が見えます」
夜明けとともに、見えてきたジェット船。乗客たちが船を下りたのは、出発から約22時間後のことでした。
記者(午前5時45分ごろ 伊豆大島)
「少しだけ笑顔も見られています」
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船内はどんな様子だったのか。宿で休憩を終えた乗客が、一部始終を語ってくれました。
乗客
「出港して約1時間で、1回船が速度を落として、点検に入りますと」
1時間ほど待ったあと、再びアナウンスが。
乗客
「航行不能になりました。エンジン切った瞬間に、横揺れがすごくてびっくりした」
「これくらいは揺れていた」
「その瞬間に子どもたちが泣き叫んで、30分~1時間くらいパニック状態になりかけた」
すぐに駆けつけた海上保安庁の巡視船。しかし、助けを待つ船内の揺れは激しく、えずく人が。船酔いがひどいためか、ぐったり横たわる乗客の姿も。
乗客
「おう吐される方も結構増えてきて、トイレに行くのも必死で、つかまりつかまりで行かないといけない」
大荒れの海の中の移動。
「あっぶねぇ!!」
別の船とあわや衝突、緊張が続く中…。出発から約11時間。海上保安庁からヘリコプターで支援物資が届きました。おにぎりや飲み物が配られたといいます。
不安な夜を迎えた乗客。
──みなさん寝た?
乗客
「寝てはいたけど、いろんな声とか揺れで、寝た気にはなれない」
そしてようやく…
アナウンス(出発から22時間 午前5時半ごろ)
「長い船旅でございました。誠にご迷惑をおかけしまして、心よりおわびを申し上げます」
22時間ぶりにたどりついた“陸”。
「新島行く予定が、大島に行く予定になった」
当初、新島に向かう予定だった陳さん一家。
──やっとホテル着きますけど、どんな思いですか?
父 陳さん
「結構大変でした。忘れられない」
娘(小3)
「こういう経験ないから、まぁまぁいいと思う!」
一見、元気そうに見える娘ですが…
父 陳さん
「左右の揺れが激しくて、この子も吐いちゃって」
娘(小3)
「お菓子食べると、10分ぐらいあとで吐いちゃう。トイレも揺れてて、ずっと地震みたい」
父 陳さん
「無力感(を覚えて)なにが起こるか分からない。船のスタッフが笑顔で対応してくれて(娘に)『頑張ってね』って、ありがたい」
娘(小3)
「地面について『あー良かったー!』」
楽しみにしていた家族旅行。娘はあきらめていないようです。
父 陳さん
「この子は(新島に)行きたいって」
少しだけ休んだあと、一家は本来の目的地、新島へ。再びジェット船に乗り込んだ一家。今回は無事、到着できたようです。
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海上保安庁は、事故の原因について詳しく調べています。