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海保隊員が飛び移り救助…ジェット船“漂流”トラブル 出航前“問題なし”も専門家は…

2024年7月25日 1:13
海保隊員が飛び移り救助…ジェット船“漂流”トラブル 出航前“問題なし”も専門家は…

千葉県の房総半島沖で、伊豆諸島に向かっていたジェット船が自力で航行できなくなりました。現在、民間のタグボートが伊豆大島に向けて船をえい航していて、25日未明から朝にかけて港に到着する見通しです。

   ◇

24日夜…

「伊豆大島岡田港です。夜10時を過ぎましたが、まだジェット船は到着していません」

24日に発生した船の“漂流”トラブル。カメラがその様子をとらえたのは正午過ぎでした。

千葉県の房総半島沖で動けなくなっていたのは、東京・竹芝から伊豆諸島に向かっていたジェット船「セブンアイランド愛」です。船の上には“援助を求める”国際信号旗である、赤いバツ印がかかれた旗が掲げられていました。

「すごい揺れている」

押し寄せる波によって大きく揺さぶられる船。船首には船員とみられる姿があり、ロープが海上に向けて伸びているのがわかります。その先にあったのは、救助に来た海上保安庁の船です。

「海上保安庁の船に引っ張られ、少しずつ動き出しました」

動けなくなったジェット船を引っ張る“えい航”が行われていました。

トラブルが判明したのは、午前10時ごろの海上保安庁への通報でした。

海上保安庁への通報(午前10時ごろ)
「油が漏れ、油圧が低下し、かじが利かない。救助を求む」

運航する東海汽船などによると、ジェット船は竹芝を出航し、伊豆諸島の式根島を経由して新島に向かう予定でしたが、房総半島沖の海上で“自力航行不能”の状態になったといいます。

今回のジェット船の航路図を表したものをみると、午前7時45分に出航すると東京湾を順調に進んでいましたが約1時間半後、房総半島の沖合で突然、船のスピードが落ちました。このあたりで航行不能になったとみられ、流されているのでしょうか、東へゆっくりと進んでいくのが確認できました。

通報を受け海上保安庁の船が救助に駆けつけたのは、航行不能となってから約3時間後。海上保安庁は、ジェット船のある場所から近い伊豆大島の岡田港までえい航をすることにしました。

しかし、その最中…

記者
「止まりましたね」

船は再び止まってしまいました。

すると、海上保安庁の船がジェット船に近づき、隊員が飛び移りました。

その後も、激しい波の中…。タイミングを見て飛び移ります。

そして、ジェット船の先頭へまわると、乗組員とともに再びロープを引っ張っています。

海上保安庁によると、海がしけている影響で、一時、作業がストップしてしまったということです。

また、けん引する船を交換する際にロープが切れてしまうこともあったといいます。

救助が難航する中、24日午後6時半ごろ、ジェット船に近づく1機のヘリコプターが。黒いものが船にいる隊員へと渡されました。

数回にわたり、ヘリコプターから送られた物資。水やパンなどの食料の他、酔い止め薬などが届けられたといいます。

船内では、これまでのところけが人の情報は入っていませんが、乗客3人が体調不良を訴えているといいます。(10代男性・20代女性・40代女性)

“波の影響を受けない”ことがウリのジェット船が、波に揺られながら“漂流”してしまう異常事態。

「セブンアイランド愛」は、2002年から日本での運航を開始。客室は2階建てになっていて、最大で254人の客を乗せることができ、トイレや自動販売機が設置されているということです。

24日の出航前の整備・点検では、問題がなかったといいますが…

油が漏れ、かじが利かなくなってしまった原因について、専門家に話を聞きました。

海難事故に詳しい 東海大学海洋学部 山田吉彦教授
「この船が製造されたのが1980年、もうすでに44年たつ。経年劣化や金属疲労による目に見えないヒビや傷、ゆがみ。(航行中)高温の状態で限界を超えてしまったのではないか」

老朽化による傷が油漏れにつながった可能性があると指摘。また、海上保安庁による救助活動に時間がかかっていることについては…

海難事故に詳しい 東海大学海洋学部 山田吉彦教授
「(ジェット船は)船体が軽いのでかなり揺れる。できるだけ乗客・乗員にダメージを与えないように慎重かつ合理的に輸送している最中だと思う」

日が落ちても、海の上をただよう船。明かりがともった船内には、座っている客の姿が見えるほか空席が多く、空間に余裕がある状況なのがわかります。

こうした環境で出港から15時間以上。東海汽船によると、ジェット船が向かっている伊豆大島に乗客全員分の宿泊施設が手配できているということです。

news zeroは24日夜、ジェット船の乗員が宿泊する予定だというホテルへ向かいました。

スタッフ
「こちらが両方とも今夜、急きょ押さえた部屋」

こちらのホテルに乗員用に3部屋。経営するもう一つのホテルに乗客用に7部屋を用意。観光協会から“100人の受け入れ先を探している”との連絡があり、できる限りの部屋を準備したということです。

スタッフ
「私も島に来るときに使っていた船なのでびっくりしました。体調崩されている方もいると聞いているので心配。夜遅くなってでもお迎えしようと思っています」

ジェット船は、25日未明から朝にかけ到着する見込みです。

(7月24日放送『news zero』より)