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【解説】油なぜ漏れた? 考えられることは… 高速ジェット船一時漂流 乗客乗員121人、体調不良者も

2024年7月24日 20:45
【解説】油なぜ漏れた? 考えられることは… 高速ジェット船一時漂流 乗客乗員121人、体調不良者も

24日午前、千葉県・房総半島沖で伊豆諸島に向かっていた東海汽船のジェット船が自力航行が出来なくなるトラブルがありました。考えられる経緯や状況について、海難事故に詳しい東海大学海洋学部の山田吉彦教授に話を聞きます。

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まずは事故が起きた経緯と高速ジェット船のルートを整理します。

本来、このジェット船が進む予定だったルートでは、東京の竹芝を出港し、式根島を経由して、直線距離で約150キロ離れた新島へ2時間40分かけて向かう予定でした。

そして、船の位置情報を示すHPによると、赤い線が事故を起こしたジェット船「セブンアイランド愛」のルートです。

24日午前7時45分に、乗客116人と乗員5人をのせ、竹芝を出港しました。途中までは、本来のルートをほぼ沿うように進んでいましたが、出港から2時間15分後となる午前10時ごろ、船長から「油が漏れ油圧低下し、かじがきかない。救助を求む」と通報がありました。

油漏れによって「かじ」がきかなくなるトラブルが発生し、自力での航行が出来ない状態になったといいます。

その後、漂流したのでしょうか、ジェット船は東へと徐々に動いていきました。

そして正午過ぎ、海上保安庁の巡視船が合流し、伊豆大島の岡田港に向けえい航しているということですが、強い南西の風が吹いていて、作業が遅れているということです。海上保安庁によると伊豆大島に到着するのは、24日夜から25日の朝になる見込みだといいます。

運航会社の東海汽船によると、出港前、必ず、船の整備や点検は行っていて、今回も問題なかったとしています。

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ここからは、海難事故に詳しい東海大学海洋学部の山田吉彦教授とお伝えします。

■長引く乗船時間 乗客らへの影響は?

鈴江奈々キャスター
「乗客の男女3人が体調不良を訴えている中、海がしけていて、えい航の作業が遅れ、乗客は船に乗っている時間が長引いている状況です。乗客にどんな影響が考えられますか?」

東海大学海洋学部 山田吉彦教授
「この船、水面の上を浮くように船体自体が軽くできていて、波や風の影響を受けやすく揺れやすい船になっています。また高速で走るため窓を開けることができませんので、中の空気が漂います。エンジンを回さないために、エアコンもあまり効いていない可能性もあります。外気も温かいということで、暑くかつ揺れる、かなり厳しい、劣悪な状況にあると思います。また船内は狭いので、動き回ることもなかなかできません」

鈴江キャスター
「きょうは地上でもすごく暑さを感じます。海の上でも照り返しなどあり、暑さなどはかなり厳しい状況が考えられるでしょうか?」

東海大学海洋学部 山田吉彦教授
「はい。船体全部で太陽の光を受けているので、中は非常に暑くなってしまいます。窓が開けられないので、風を入れることもできません」

■油漏れでかじきかず どのあたりで?

鈴江キャスター
「今回のジェット船、どのあたりから操縦ができなくなったと考えられるでしょうか」

東海大学海洋学部 山田吉彦教授
「おそらく東京湾の浦賀水道を出るあたりから操縦がうまくいかなくなったのではないかと考えられます。おそらくかじがきかなくなったのは、本来のコースを逸脱しているところ。そのあたりから、直進するような動きしかとれなくなったのではないかと思います」

■油が漏れたのは船のどの部分から?

森圭介キャスター
「『油が漏れて、かじがきかなくなった』ということですが、どこの油が漏れたと考えられますか?」

東海大学海洋学部 山田吉彦教授
「これは、燃料の油ではなく、おそらく油圧系統…この船、油圧を使ってかじを動かしたり、エンジンへの指示を出すような動きになっています」

「かじを動かす信号を操舵室から送る、それを途中で増幅していくシステムの中の油が漏れてしまったのだと思います。そのために制御がきかなくなってしまった。車のパワーステアリングで、ハンドルからタイヤに回る間の仕組みが壊れてしまったのと同じようなかたちで、全くコントロールがきかない状態になっていたと思います」

森キャスター
「力を伝える機関が壊れてしまったということですね」

■油なぜ漏れた? 考えられることは…

桐谷美玲キャスター
「油が漏れた原因はどのようなことが考えられますか?」

東海大学海洋学部 山田吉彦教授
「おそらく点検はしっかりしていても、この船、かなり古いです。造ってから44年たっている船で、途中補修もしていますが、どうしても経年劣化で、なかなか気付かない傷やゆがみが出ていた…あるいはひずみが中に出ていた可能性があります。それが高速走行に入った段階で、限界を超えてしまったということが考えられます」

■今回のような事故 珍しいこと?

鈴江キャスター
「経年劣化の指摘がありましたが、このような事故は珍しいことなのでしょうか?」

東海大学海洋学部 山田吉彦教授
「はい。特に高速船の場合は、私は初めて聞いたに近い事故です。この船、常に油圧系統など、飛行機並みのチェックをしています。ただ、その厳しいチェックのなかでも、少し古くなり弱くなっていた部分、あるいは金属疲労というのに気付かなかった可能性はあります」

鈴江キャスター
「出港前の点検では異常はなかったとのことですが、このような事故が起こってしまったということです。ここまで山田吉彦教授にお話をうかがいました」

(7月24日午後5時ごろ放送 「news every.」より)