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郵便料金“30年ぶり”値上げ それでも“黒字は1年だけ”試算も 郵便物の数“半減”【#みんなのギモン】

2023年12月19日 22:59
郵便料金“30年ぶり”値上げ それでも“黒字は1年だけ”試算も 郵便物の数“半減”【#みんなのギモン】
早ければ来年秋から、郵便料金が値上げされる方針が示されました。63円の「はがき」は85円に、84円の「封書」は110円と、それぞれ3割ほどの値上げに。そこで19日の#みんなのギモンは「郵便“30年ぶり”の値上げ」をテーマに、次の2つのポイントを中心に詳しく解説します。

●“郵送”じゃなく今は○○
●値上げしたとしても…

■約3割値上げ…「はがき」85円「封書」110円に

いま年賀状を書いているという方もいるかもしれませんが、早ければ来年秋から、はがきや手紙の郵便料金が値上げされる方針が示されました。

驚いたのが、その値上げ幅です。いま63円で送ることができる「はがき」は85円に、84円で送れる25グラムまでの「封書」は110円と、それぞれ3割ほど値上げされます。

その郵便料金を振りかえってみると、1981年には「はがき40円・封書60円」の時代があり、その後1994年に「はがき50円・封書80円」になり、その料金が20年間続いていました。

いまの料金になったのは、2019年からです。今回の値上げは、消費税率の引き上げを除くと、「封書」は30年ぶり、「はがき」は7年ぶりということです。

■郵便物の数…約20年で “半減”し「赤字」に

まずは、値上げが提案された背景からみていきます。

国内の郵便物の数は、2001年度の262億通をピークに、徐々に減少しています。去年は、144億通でした。この約20年間で、どれだけ減ったかというと、マイナス45%とほぼ半減しています。

こうしたことから、昨年度の郵便事業の収支は、郵政民営化以降、初の「赤字」に。郵便事業の厳しい現状から、料金の値上げが提案されたのです。

■値上げの背景 人件費と運賃の高騰&企業側も…

その背景には、何があるのでしょうか。

1つは、配達にかかる人件費や、ガソリン代を含む運賃が大幅に上がっていること。そして、インターネットやSNSの普及で、たとえば、請求書なども“ウェブ化”が進んでいます。さらに企業側も、通信費や販促費を削減する動きがあります。

郵便を送る機会だけでなく、“受け取る機会も徐々に減った”と感じる人も多いのではないでしょうか。郵便といえば、ダイレクトメールが何通か来るくらいで、気がつくと何日も家のポストを確認していないという人もいるかもしれません。

■添削が「郵送」で届く…“赤ペン先生”もデジタル化へ

実際に、郵送が欠かせなかったさまざまなところで、変化が起きています。

たとえば、今年から新たに変わったのが、小学生向け通信教育の教材です。いわゆる“赤ペン先生”。自宅で問題を解いて「郵便」で送れば、“赤ペン先生”が添削して後日、自宅に「郵送」してくれる、というものです。

この“赤ペン先生”ですが、今年4月から全学年で“デジタル化”に対応しています。

その方法は、答案用紙を「カメラで撮影」して提出すれば、“赤ペン先生”の添削がネットでかえってくる、というものです。小学3年生以上は6年前から始まっていたそうですが、今年からは低学年でも始まりました。

そのメリットは、返却期間が短くなること。郵送だと2~3週間かかるところを、デジタルだと3日程度で返却してもらえるといいます。早く返ってくれば、子どもの学ぶ意欲にもつながりそうです。カメラで提出する人の割合は、いま5~6割になっているということです。

■ラジオなどに投稿…“ハガキ職人”に影響は?

また、ラジオ番組に「はがき」を投稿する人を“ハガキ職人”などといいますが、いまはどうなっているのでしょうか?

ラジオ番組の構成作家に話を聞いてみると、現状は「メールが主流。年配の人でもFAXを使う。ハガキで送ってくる人はすでにほとんどいないが、今回の値上げで番組によってはゼロになるのではないか」ということです。

ハガキは、投稿する人=出す側の手間もあり、また、受け取った側も仕分ける人員が必要になる、とも話していました。

■ポストの4本に1本「1か月に30通以下の投函」

そして、そうした郵便物が減ったことで、ポストの利用も減っています。

ここで1つ、郵便にまつわる豆知識ということで…。みなさんは「〒」という、この郵便のマークの由来をご存じでしょうか?

答えは諸説ありますが、かつて郵便業務を請け負っていた「逓信省(ていしんしょう)」のカタカナの「テ」からきている、ということです。

郵便を利用する機会は減っても、おなじみのマークがついたこのポストは街で必ず見かけますし、郵便業務はそれだけ生活に根付いてきたものだと感じられます。

その郵便ポストですが、今年3月時点で、全国に17万5000本あまり設置されています。

数そのものは、そこまで減少していないのですが、今年6月の調査では、4本に1本ほどが“1か月に30通以下しか投函されていない”ことがわかりました。

つまりは、1日に1通投函されるかどうかというポストが、一定数あるということなんです。それでも毎日、入っているかどうかわからないポストにも原則、回収しに行く必要があります。郵便物が減っているのに、人件費はかかるという悪循環になっている現状もあります。

■値上げをしても…“黒字は1年だけ” 岐路に立つ郵便事業

ここでもう1つのポイント、「値上げしたとしても…」についてみていきます。

郵便料金の値上げをした場合と、しなかった場合、それぞれの郵便事業の収支がどうなるかを試算したグラフがあります。昨年度(※2022年度)は211億円の赤字に転じましたが、その後も値上げせずにいくと、赤字はどんどん膨らみ、5年後(※2028年度)には赤字が3400億円を超えるとみられています。

そして、値上げをした場合の収支の見通しを見てみると、実は想定どおりの値上げをしても、黒字が見込まれるのは2025年度だけ。黒字は1年だけということに。2026年度には再び400億円の赤字、2028年度には約1200億円の赤字となる見通しです。

今回、郵便料金が大幅に値上げされる印象ですが、総務省としては国民生活への影響を鑑みて、「これでも値上げ幅は最小限のものにした」と説明しています。郵便料金の値上げに踏み切っても、根本的な解決は見込めないのが実情ということなのです。

郵便離れが加速していますが、何のサービスを残して、料金をどう設定するのか、郵便事業はまさにいま、岐路にたっているのではないでしょうか。


(2023年12月19日午後4時半ごろ放送 news every. 「#みんなのギモン」より)

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