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10月から始まる「インボイス」って何? 免税事業者がピンチ!? なぜ… 【#みんなのギモン】

2023年9月28日 22:01
10月から始まる「インボイス」って何? 免税事業者がピンチ!? なぜ… 【#みんなのギモン】

10月から始まる「インボイス」。この制度が開始される直前の9月25日、官邸前でインボイス制度導入に反対する人たちの集会が行われました。タレントや漫画家など著名人も参加し反対の声をあげました。

文筆家 栗田隆子さん
「インボイス制度延期・廃止を改めて求めます」

クリエイティブディレクター 辻愛沙子さん
「皆さんが大好きなあの漫画もあのアニメも、私たちの生活を彩っている、ありとあらゆるものが、ともすると今回のインボイス制度で失われていくかもしれない」

反対の声もありますが、まもなくスタートするインボイス制度の「メリット」「デメリット」をどこよりもわかりやすく解説します。

●消費税を正しく公平に払う
●負担増? 倒産の不安も

以上のポイントを中心に詳しく解説します。

■インボイスとは「適格請求書」のこと 消費税額を細かく表示

まずは「インボイスとは何か」ということから見ていきます。「インボイス」とは日本語で「請求書」という意味です。

これまでの請求書だと、消費税がどれぐらいかかるのかが、わかりづらいものも多くありました。それが「インボイス(適格請求書)」を登録すれば、事業者名の横に登録番号が明記され、誰が発行したのかがわかります。

消費税額も細かく表示されるようになります。特にいまは、消費税の適用税率が10%と8%とあり、複雑になっています。その「仕入れの税額」を、正確に伝わる請求書にするわけです。

■消費税の納め方の流れが変わる… “免税事業者”を直撃

登録した事業者が、この新しい形の「インボイス(適格請求書)」を発行しますが、消費税額を正しく計算できることは、”いいこと”といえます。しかし、そのときの“税の流れ”を見ると、反対の声があがる理由がわかります。

たとえば、消費者が3000円のものを買う場合、消費税率10%の場合はその店(課税事業者)に300円の消費税を払います。一方、その事業者は、材料や備品を購入した仕入れ先に消費税100円を支払ったとします。

消費税とは、受け取った事業者が納めるものです。これまで店などの課税事業者は、消費者から受け取った300円から、仕入れ先に払った100円を引いた200円の消費税を納税していました。

今回変わるのは、課税事業者と仕入れ先との“事業者間の取引”です。特に影響するのは、売り上げが1000万円以下の「免税事業者」です。「免税事業者」は名前の通り、これまでは消費税の納付額は0円でした。

しかしインボイス制度が始まり、仕入れ先が「免税事業者」のままだと、仕入れ先に支払った消費税100円分はインボイスが発行できなくなります。すると、その確認ができなくなるので、事業者は消費者から受け取った消費税300円から、これまでは差し引くことができていた100円を、差し引くことができなくなります。そのため、結果的に課税事業者は、消費者から受け取った300円全てを納めなければいけなくなります。

■免税で“消えていた”消費税をきちんと納めてもらう制度

つまり、課税事業者は、これまでよりも納める消費税が増えてしまうということです。

免税事業者が免税のままだと、その分「取引先に税を負担させてしまう」ようなことになり、判断が難しい状況になっています。不安の声があがるのも、このような事情によるものだと思われます。

ただ、国としても免税で消えていた100円をきちんと納めてもらい、それを誰が納めるのか、どの事業者が払うのか、ということがこの制度で明確になります。

では、消費者の生活には影響はないのでしょうか。

いままで通り買い物をして消費税を払う消費者としての行為は、当然変わりません。事業を営んでいない消費者に変化はありません。ただ、個人で何か作って販売をしている人、教室を運営している人などは、売り上げ金額によっては関係します。だからこそ反対の声があがっているわけです。

これまで“免税”前提でまわっていたものが「変わる」となると、その影響は大きいといえます。

■免税事業者につのる不安 契約終了 負担増や倒産のおそれも…

税法に詳しく、弁護士でもある青山学院大学の三木義一名誉教授に聞きました。

「免税業者のままでは、契約を打ち切られたり、契約金の引き下げなどをされるおそれがある」ということです。

特に、売り上げが少なく、他の事業者に変えられてしまうような“特殊性の少ない”技能である人は、インボイスが発行できないため取引を停止されることを心配する声もあります。そうなると、最悪の場合は倒産してしまうおそれもあるといいます。

■判断迫られる免税事業者 そのままか 課税事業者に切り替えるか

実際、東京商工リサーチが8月に行った全国5390社に対する調査では、制度導入後の免税事業者との取引について「これまで通り」と答えた企業は2989社で55.4%にのぼりました。一方で、「取引しない」「取引価格を引き下げる」と回答した企業は合わせて635社と、11.8%でした。

一方で三木教授は「課税事業者になるためには初期投資が必要になり手間暇も増えます。様々な特例や経過措置なども導入はされていますが、これらの手続き自体も零細事業者には煩雑である」という指摘をしています。

事業者にとっては免税事業者のままでいるか、課税事業者に切り替えるか、判断が迫られています。

■税の公平性や透明性を高めるメリットも

しかしインボイス制度は、先進国では多くすでに導入されているものです。政府関係者は「主に2つのメリットがある」と話しています。

まず、「税の公平性」を保つことです。いま課税か免税かは、売り上げが1000万円で区切られています。しかし、利益が同じでも仕入れ額が違うのに、売り上げ次第で課税される人とされない人がいます。これは「不公平ではないか」とする意見があり、この不公平感が解消されます。

そして、税を正しく計算することです。いま、消費税率10%と、一部の商品を8%に据え置く軽減税率の2つの税率がありますが、誰に何%でいくら払ったのか、わかりにくく見えにくかったところを解消し、税の透明性が高まるといえます。

■新規登録事業者には経過措置も

この制度はまもなく始まりますが、政府は経過措置もとっています。

政府は新たにインボイス制度に登録した事業者に対して、補助金の上限を50万円引き上げました。また、10月から3年間は、売り上げ時に受け取った消費税額の2割だけ支払えばよいようにする特例を設けています。

またコールセンターもあり「どうしたらいいのかわからない」「登録すべきなのか」といった悩みがある場合、相談してみるのもいいかもしれません。

税の公平性を高めることで、生活が立ち行かなくなる方が出てこないよう、国にはフォローをしっかりしていただきたいものです。

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税の三原則は「公平・中立・簡素」です。インボイス制度により、納めるべき人が消費税を明確に納められ、公平になっていきます。ただ「簡素」かどうか、つまり「わかりやすい」税制なのかが大事です。わかりやすくする仕組みが課題として残っていると思います。社会にこの制度が浸透していくためには、政府も引き続きしっかり説明をして、理解を得る努力が必要です。

(2023年9月28日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)

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