【解説】電気代“来春以降に2~3割値上げ”の可能性…10月にはガス代も 「国民負担」軽減のため新制度を検討
さまざまなものの値上げが続き、家計を直撃していますが、電気代もまた値上がりするかもしれません。
◇半年後に“3割”値上げ?
◇冬こそ節電
◇ガス代もさらに
以上の3点を詳しくお伝えします。
まずは、電気代に関する岸田首相の発言です。
岸田首相
「その(電気代の)上昇が、来年春以降に料金改定、あるいは契約改定の形をとって、一気に2~3割の値上げとなる可能性もある」
岸田首相は、ロシアのウクライナ侵攻の影響が長期化し、エネルギー価格が高騰していることから、「電気代が来年の春以降、さらに2~3割上がる可能性がある」と話しました。
その上で、国民の負担を軽減するために、新たな制度を創設する考えを示しました。首相としては、30日、策定を指示した経済対策の中に、どういう制度にするのか盛り込みたい考えです。
では、どうやって電気代の負担を軽くするか気になりますよね。
すでに補助金を出しているガソリンの場合には、売る側の元締めである「元売り会社」に対して補助金を出すことによって、小売りの「売値」を下げています。
今回、電気の場合は、電気を買って使う側、つまり、家庭や企業への「現金給付」という形も選択肢の一つに今、上がってきています。
改めて、その電気代が現状どうなっているかというと、東京電力のモデル家庭(従量電灯B・30A、使用電力量260kWh/月など)でみた電気代の推移のグラフでは、去年の9月の7098円からずっと上がり続けていて、今月は9126円。去年の同じ時期と比べて、2028円高くなっています。
10月がどうなるかみてみると、電力大手10社のうち、値上げするのは中部電力だけです。他が値上げしないのはどういうことかというと、他の9社は、料金が高騰しすぎないよう設けられている「上限」、この額にすでに達していて、「上げたいけど上げられなかった」という状況です。
ただし、契約する料金プランによっては、そもそも上限が設定されていなかったり、各社の判断で上限自体をまた引き上げたりできるため、今後も電気代は値上げが続く可能性があります。
電気代を抑えるためには、なるべく使わないようにしようと思うしかないわけですが、今年7月に政府は、7年ぶりに全国を対象にした「節電要請期間」を設定しました。その期間が、9月30日までとなっています。
振り返ってみると、7月に北海道と沖縄電力の管内を除く、全国の電力会社の管内で、どれくらい電力に余力があるかを示す予備率が、3.7%しかないという見通しが夏前にはありました。
東京電力管内でいうと、予備率は通常10~20%くらいあるものということでしたので、いかにこの予測が厳しいものだったかということがわかると思います。
こういうこともあり、政府は、冷房などは適切に活用しながら、無理のない範囲で節電を呼びかけてきたというわけです。
この節電期間、9月30日で終了ということになっていますが、政府は、実はこの冬も「節電要請期間」を設定することを検討しています。
電力のひっ迫は、夏だけじゃなく冬も懸念されています。例えば、冬は、今度は暖房の需要が増えます。その一方で、日照時間が減るので太陽光で発電できる量が減ります。需要は増えるけど供給が減ってしまうおそれがあります。
今年の3月のことを振り返ると、季節外れの寒さなどが理由で、電力がひっ迫したことがありました。3月、政府は初めて、「電力需給ひっ迫警報」を出して節電を呼びかけました。
このときは、一部の火力発電所が停止していた上に、東京では最高気温が5℃と、3月なのに真冬並みの気温となり、エアコンの需要が増えたことが背景にありました。
では、これから始まるこの冬の電力需給の見通しはどうかみてみると、来年1月に東京電力と東北電力は「4.1%」の予備率です。
予備率が「7.9%」の北海道と「33.1%」の沖縄を除く全国で、「5%」を下回っています。この「5%」というのは、「電力需給ひっ迫注意報」を出すラインになっていて、やはりこの冬も厳しい電力需給になりそうです。
では、この冬、私たちが家庭でできる節電はどんなことがあるのか。電気をこまめに消すというのはもちろんのことですが、こういう制度を利用する手もあります。
8月に国が始めた、「節電プログラム」です。この中には、例えば電力会社が行っている「節電チャレンジ」というものがあり、各家庭で対象の時間帯に節電を行ったり、去年使った実績よりも電気の使用量を抑えるチャレンジをしてもらおうというものです。
これらに参加すると、参加した家庭には、「2000円相当のポイント」が付与されます。これは10月以降も参加できます。こういった制度の背景にも、この冬の節電を加速させたいという政府の狙いがあるといえます。
東京ガス・東邦ガス・西部ガスなど都市ガス大手3社は、来月から170円から289円の値上げとなります。大阪ガスは、電力と同じですでに価格の上限に達しているため据え置きです。
標準的な家庭の1か月の料金でみてみると、東京ガスの場合、9月は5886円だったのが、10月には6175円になります。これは、去年10月のガス料金と比べると、なんと「1329円」のアップとなります。さらに、11月も大手3社では、値上げが決まっているということです。注意が必要なのは、「上限」が設定されていても、「上限」自体の引き上げもありうるという点です。
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生活に不可欠な電気やガス、節約にも限度があるのが難しいところですが、一層の取り組みが必要です。
(2022年9月30日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)