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【緊急避妊薬】「早くどうにかしなきゃと…」薬局で“買えなかった”女性たちの切実な声──薬局販売この先どうなる?

2024年6月12日 15:45
【緊急避妊薬】「早くどうにかしなきゃと…」薬局で“買えなかった”女性たちの切実な声──薬局販売この先どうなる?
緊急避妊薬の薬局での販売の実現を訴える福田和子さん
2023年11月から試験的に薬局で販売されている緊急避妊薬。しかし、販売する薬局は全国に145軒にとどまり、価格も7000円~9000円と高額です。薬局で買おうとしたけれど“買えなかった”人に話をきいてみると、緊急避妊薬を求める女性の切実な思いがわかりました。報道局ジェンダー班の庭野めぐみ解説委員と、厚生労働省担当の馬野恵里花記者が深堀りトークします。

■オンライン診療も便利とは限らない?薬局で緊急避妊薬を買えるとどうなる

社会部 厚生労働省担当 馬野恵里花記者
「10日、緊急避妊薬の薬局での販売の実現を訴える団体が集会を開き、今行われている試験的販売に関するアンケートの結果を公表しました。実際に買った人、買いたかったのに買えなかった人などの切実な声が明らかになりました」

報道局ジェンダー班 庭野めぐみ解説委員
「一応、緊急避妊薬ってどういったものか、改めて説明をお願いします」

馬野記者
「緊急避妊薬とは、性行為があってから72時間以内に服用すると、高い確率で妊娠を防ぐことのできる薬です。日本では現在、原則医師の処方箋がないと手に入れることができず、また、価格も保険適用外なので平均で1万5000円くらいと高くなっています。世界では90の国や地域で、医師の処方箋なしで薬局で買うことができ、価格も数百円~数千円です」

「コロナ禍では時限的、特例的にオンライン診療も可能となったんですが、緊急性を要する薬なので、郵送の時間などを考えると受診を早くする必要がありますよね。なので依然として入手のハードルが高いのが現状です」

庭野解説委員
「オンラインだと便利に思えるけれど、届くまでに2日、3日かかるとなると、72時間以内に飲まないとだめなお薬なのにギリギリになったり、間に合わなかったりということがありますね」

■「日曜日に必要になって…」試験販売で買おうとしたけど“買えなかった”女性は…

馬野記者
「市民団体が実施したのは、去年11月からの試験販売で“緊急避妊薬を買った人”だけでなく、“買おうとしたけど買えなかった人”も含めたアンケートの結果です」

「アンケートに答えた人に話を聞きました。ある20代の女性は、土曜日に緊急避妊薬が必要になりました。その日は午後から仕事の都合で出張があったため、早く手に入れなければならず薬局で買おうとしたそうです。しかし、購入にむけた手順がわからず、時間もかかりそうだと感じたため断念。結果的に近所のクリニックに行くことにし、9件問い合わせて、ようやく受診できるところが見つかり、緊急避妊薬を処方してもらえたということです」

「一方、都内に住む20代の女性は、日曜日に緊急避妊薬が必要になったそうです。近所に日曜日に受診できるクリニックがなく困ってたところ、ニュースで見て知っていた薬局での試験的販売のことを思い出し、どこで売っているか検索しました。『本当に焦りもあって、売っている薬局の情報にたどりつけなくて。早く飲まないといけない薬なので』と、困った女性は近所のドラッグストアなどにも問い合わせをしました。しかし、今回の試験的販売の対象の薬局は限られているため、ドラッグストアでは買うことができず、結果的に薬局での購入はあきらめ、隣の区の開いていたクリニックを受診し、薬を処方してもらったそうです」

「女性たちは、『72時間以内に飲まないといけないとか、時間がたつと避妊効果が薄れることを考えると、早くどうにかしなきゃとおもった』『特に土日はクリニックがやっていなかったり、完全予約制ですぐにいけないこともある。多くの薬局で買えるようになるとだいぶ安心材料になると思う』『様々な状況に対応できる薬剤師の確保も課題だと思うので、そこも含めて良い方向に進んでいってほしい』と話していました」

庭野解説委員
「期待したけれど、結局買えなかったっていう声が深刻ですよね。今も、試験的な販売というのは行われているんでしょうか」

馬野記者
「はい。去年の11月から全国145の薬局で試験的販売が開始されて、今も続いています」

庭野解説委員
「全国で145だとかなり少ないですよね」

馬野記者
「1都道府県に3つあるかないか。しかも、価格に関しては7,000円から9,000円と、決して安いとは言えない値段で試験的販売をされているということです」

「販売できる薬局には条件があります。薬剤師がしっかりとした研修を受けてそれを修了すること、夜間や土日祝日も薬剤師が対応できること、近隣の産婦人科などと連携が取れること、個室などプライバシーを確保できる空間を作って相談に乗れること、などです。さらに、販売対象は16歳以上となっていて、18歳未満には保護者の同意が必要となっています」

「先ほどの市民団体とは別で、日本薬剤師会が行ったアンケートによりますと、2か月で試験販売された数は2181件。購入者の8割以上が今後も薬局での販売を希望しているという結果が出ています。他にも、購入者のほとんどが薬剤師の対応に満足していると回答しています。また、土日の利用者は27%だったということです」

■“検証が不十分”とされるのはなぜ?女性が自分自身の体を守る選択肢を

馬野記者
「今回の試験的販売は、去年11月から今年の3月までで1度終わる予定だったんですが、販売期間が短かったこともあって、今回のデータでは薬剤師だけで適切な販売ができるかの検証が不十分だとして、今年度も調査研究を続けることになりました」

庭野解説委員
「各国は既に薬局で売っていて、どうして日本だけこんなに議論がずっと続いているんでしょうね」

馬野記者
「政府関係者に取材したところ、重要なポイントの1つは、販売する薬剤師側が対応できているかの検証だというんですね。緊急避妊薬を求めてくる人の中には、性暴力に巻き込まれて悩んでいる人がいる可能性もあります。そういう人をしっかり必要な相談機関につないだり、産婦人科で診てもらったりする必要があります。これまでは医師が診察することで患者の異変や困り事に気付く機会があったんですが、OTC化(注:医師の診断なしで薬局で買える)することでその役割を薬剤師が担うことになります。かなり高度な対応が求められることになるんです。また、チェーン店などでは薬剤師の少ない薬局もありますよね。そういったところで十分な対応ができるのかも、今回の試験販売でしっかり検討しなければいけないという話があります」

庭野解説委員
「売る時に、例えば女性に対して失礼な言い方をしないようにというのも薬剤師の中では勉強が進んでいるという話ですけどね」

馬野記者
「性交渉も妊娠も、女性の自分自身の体のことだと思うんですよね。これを自分でチョイスする、そういう選択肢がより多くできるのがいいのかなと思います。緊急避妊薬も、産婦人科で診察を受けてから、もらいたい人もいれば、自分で薬局で買いたい人もいると思うので、薬の入手方法の選択肢が増えるのは、女性が自分自身の体を守る選択肢を増やすということにもつながっていくんじゃないかなと思います」

庭野解説委員
「本当にその通りですね。男性パートナーの方も悩みがあるでしょうけど、やっぱり女性が特に悩みを引き受けるわけで、必要に迫られている声が上がっていますよね。薬を使うかどうか、そもそも性交渉をするかどうかも、パートナーとちゃんと話ができて、女性たちが自分自身でそれを選ぶことができるようになっていくといいなというふうに思いますね」

■Talk Gender~もっと話そう、ジェンダーのこと~

日テレ報道局ジェンダー班のメンバーが、ジェンダーに関するニュースを起点に記者やゲストとあれこれ話すPodcastプログラム。MCは、報道一筋35年以上、子育てや健康を専門とする庭野めぐみ解説委員と、カルチャーニュースやnews zeroを担当し、ゲイを公表して働く白川大介プロデューサー。

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