関東大震災から100年 もしもエレベーターで大地震に遭遇したら――進化する、乗る人の安全を守る仕組みとは
建物の高層化が進む中、生活に欠かすことが出来ないのが「エレベーター」です。一方、2005年に発生した地震をきっかけに、国はエレベーターの安全対策を強化や安全装置を義務付けました。万が一、地震が起きても乗っている人の安全を守るには、どのような技術が用いられているのか。最新のエレベーターの仕組みについて取材しました。
大きな地震が発生した場合、エレベーターは最寄りの階で停止し、自動で扉が開きます。
三菱電機ビルソリューションズ 保守技術統括部 生産技術課長 岩田卓也さん
「近くの階で扉が開くので速やかに外に出てください」
2005年7月23日、東京・足立区で震度5強を観測する地震が発生しました。この時、国土交通省によると、エレベーターの閉じ込めが78件発生。国は、この地震などをきっかけに、エレベーターの安全対策を強化し、地震を感知すると自動的に最寄りの階に停止して扉が開く安全装置の設置を義務づけました。
エレベーターの開発や管理を行う「三菱電機ビルソリューションズ」で安全装置を見せてもらいました。
三菱電機ビルソリューションズ 設計・工事統括部 技術計画課長 太田信介さん
「地震を感知するセンサーが初期微動と言われるP波を感知してエレベーターを最寄り階に避難させるというものです」
普段は見えない、エレベーターの一番下にある「地震時管制運転装置」。これにより、おおむね震度4程度の地震が発生するとその初期微動を感知して最寄りの階にとまります。大きな揺れが来る前に乗客を外に避難させ、閉じ込めを防ぐのです。
ただ、古いエレベーターは装置がついていないこともあるため、揺れを感じたらすぐにすべての行き先階ボタンを押して、停止した階で降ります。
万が一、閉じ込められた時はインターホンボタンを押して外部と連絡を取り、救助を要請します。
三菱電機ビルソリューションズ 保守技術統括部 生産技術課長 岩田卓也さん
「自分がいる近所の行き先ボタンを押してください。それでも開かなかった場合はためらわずにインターフォンボタンを押し続けてください」
また、エレベーターのかごは、複数のロープでつっているため揺れによって落下することはないということです。
しかし、無理に扉をこじ開けるとかごの外に落下するおそれがあるため絶対にやめてほしいといいます。
三菱電機ビルソリューションズ 保守技術統括部 生産技術課長 岩田卓也さん
「エレベーターの中は安全だということを認識していただきたいです」
三菱電機ビルソリューションズでは、約6000人のエンジニアが日々の点検や災害時のトラブルに対応しています。
エンジニアの大沼慶さんは東日本大震災の時、都内のエレベーターを担当していました。
三菱電機ビルソリューションズ 人材開発センター主任 大沼慶さん
「停止している台数が多かったので夜通し復旧作業にあたりました。1階から最上階の機械室まで上がっていかないといけないので足を棒にして復旧したことを覚えています」
大地震が発生した時には、閉じ込め救出や病院など緊急性が高い場所からまわり、地震の点検マニュアルに沿って復旧作業にあたるといいます。
作業では、機械室にある巻上機などに異常がないかを確認したあと、かごの上に乗って移動しながら、ロープがからまっていないかなど点検を行います。
■異常があるか自動診断&自動復旧 最新システム
時間がかかる復旧作業。そこで、一刻も早く運転を再開するための最新システムがあります。
それは、地震時エレベーター自動診断&復旧システム「エレクイック」というものです。震度5弱程度の地震が発生した場合、休止したエレベーターに異常がないかを自動で診断。安全が確認されればエンジニアが現場に行かなくても約30分で運転を再開するというものです。
利用者の安全と早期の運転再開のため、エレベーターの技術は進化しています。