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2022年4月1日 18:27

【解説】不妊治療の保険適用…費用負担軽減は? 徹底検証した

【解説】不妊治療の保険適用…費用負担軽減は? 徹底検証した

不妊治療をするカップルにとって朗報になるのか。2022年4月1日から、これまで全額自己負担だった不妊治療が、窓口負担3割の保険適用となる。

これまで、経済的な負担から不妊治療を諦めたり、中断せざるをえなかったりしたカップルにとって、経済的負担が軽くなる制度は待ち望まれていたものだ。一方、保険が適用されない治療法もあることや、これまでの助成金制度が廃止されるなど、注意も必要だ。

不妊治療の保険適用でどう変わるのか、取材した。


■不妊治療の「保険適用」どう変わる?

2022年4月1日から、これまでごく一部に限られていた不妊治療の保険適用が大幅に広がる。

適用されるのは、以下の通り。

・タイミング法(排卵のタイミングにあわせた性交を指導)
・人工授精(精液を注入器で直接、子宮に注入)
・体外受精(精子と卵子を採取し、体外で受精させ子宮に戻す)
・顕微授精(卵子に注射針などで精子を注入し受精させる)
・男性不妊の手術(射精が困難な場合に、精巣内より精子を回収)

採卵・採精、受精卵・胚の培養、胚の凍結保存や移植までの体外受精や顕微授精の一連の流れにかかるすべてが保険適用となる。

ただし、保険適用の対象年齢や回数には上限がある。対象となるのは、治療開始時の女性の年齢別で

・40歳未満 通算6回まで
・40歳以上43歳未満 通算3回まで

上限は1人の子どもを妊娠するまでのもので、出産すれば、また1回目から適用される。

また、これまでの助成金制度と同じく事実婚の場合にも保険適用される。一方で、保険適用が始まることで、これまで1子ごとに最大30万円支給されていた助成金制度は廃止された。

今回の保険適用について、都内で不妊治療を担う医師の1人は「支払う金額は、窓口の3割負担で終わりになり、助成金の申請もいらなくなる。これまでは助成金を受け取る前に、一度は高額な支払いを先にしなくてはならなかったので、そういう面では不妊治療を受けやすくなる」と説明する。一方で、自己負担額がむしろ増えてしまうケースもあり、注意が必要だ。


■自己負担どこまで軽減? 50万円の体外受精では…

実際、不妊治療にはどのくらいの費用がかかるのか。

これまでは、同じ治療法でもクリニックなどによって費用が異なり、患者の負担は統一されていなかったが、今後は、保険診療により、同じ治療であればどこで受けても同じ費用になる。

野村総合研究所が2021年3月に公表した「不妊治療の実態に関する調査研究」によると、不妊治療の平均費用は「人工授精」が1周期あたり約3万円。「体外受精」の平均費用は、1周期あたり約50万円などとなっている。

仮に50万円の「体外受精」を1回した場合、これまでなら30万円の助成金を受けて、自己負担額は20万円となっていた。保険が適用されることで、50万円の3割負担ですむので、自己負担額は15万円に。

さらに、医療機関や薬局の窓口で支払った額がひと月上限額を超えた場合には「高額療養費制度」を利用できる場合があり、さらに負担額を軽減できる。例えば、年収約370万円~約770万円の人の場合なら、50万円の体外受精は自己負担約8万円にまで軽減される。

ただし、「高額療養費制度」は、所得水準や健康保険によっては受けられないケースもあるため、確認が必要だ。


■「先進医療」は併用が可能、「混合診療」は不可

一方で、治療法によっては保険適用の対象外のものもあり、追加の費用負担が必要になったり、全額自己負担になったりするケースもあり、実際のところ、これまでと比べてどこまで負担が軽減されるかは「やってみないとわからない(前出の医師)」との指摘もある。

保険適用にならない治療法は、大きく2つ分けられる。1つは、「先進医療」として指定されているもの。こちらは、保険適用される治療との併用が可能だ。併用する場合は、基本の体外受精などは保険適用した上で、「先進医療」にあたる部分のみ自己負担となる。

一方で、「先進医療」にも指定されていない治療法を併用する「混合診療」の場合は、保険適用はされず全額自己負担になる。この場合、これまでの助成金制度もないため、費用負担はむしろこれまでより大きくなる可能性もあるのだ。


■保険適用で使えない薬が…新たな懸念も

さらに、前出の医師によると、不妊治療の場合、反応性をみながら使う薬を変更することもあるというが、使いたい薬の中にも保険適用外のものもあり、その場合、1つでも保険適用外の薬などが使われれば、全額が自己負担になるのだ。

また、治療の安全面でも、薬の選択が狭まることは懸念があるという。

例えば、不妊治療で使われる排卵誘発剤による「卵巣過剰刺激症候群」を引き起こさないための薬の1つは、保険適用外だ。「卵巣過剰刺激症候群」になった場合、入院治療を必要とする人が出てくる可能性もあり、「患者のために融通が利きにくくなったと感じる」と医師は危惧する。


■不妊治療は“二極化”? あえて自己負担を選ぶ道

保険適用により不妊治療へアクセスしやすくなる人がいる一方で、日進月歩で進む生殖補助医療の世界では、より新しい治療法を試して妊娠への道を拓きたいと願う人たちもいる。

こうした声に応えるため、あえて「保険診療は行わない」と宣言しているクリニックもある。最初から全額自己負担とする一方で、最先端の高度生殖医療を提供することに特化するという。これも選択の1つだ。

すべて保険適用の範囲内で治療を行うのか、自己負担により治療の選択肢を広げるのか…子を持ちたいと願う人は、新たに、難しい選択を迫られることにもなる。