【男性育休】取得率向上のカギは“上司”にあり?11か月の育休を取った男性の声は――記者が語るジェンダーニュース
■「“参加する”ではなく“自分で育てる”」3人目の子どもで意識に変化…きっかけは11か月の育休だった
こども家庭庁担当 小沢鷹士記者
「先日、11か月の育休を取得した男性を取材してきました。人材系のサービスを提供しているパーソルホールディングスで働く小島朋也さんという男性の方なんですけど、この方、今3人のお子さんのお父さんです」
「育休を取ったのは3人目が生まれたタイミングです。1人目2人目のときは休んでいなかったということなんですけど、育休を取って『なんとなく育児に参加する感覚ではなくて、自分で育てるというマインドになった』ということでした」
「男性が女性に『助ける』とか『僕も手伝う』とか言うと、『“助ける”“手伝う”じゃない、主体的に“一緒にやる”んだ』みたいなふうに妻から言われる方が多いと思うんですけど、小島さんは“自分で育てる”という思いに変わったんですね」
小沢記者
「育児ってそれまでの人生で経験できないことなので、最初はできないことがすごく多い状態だと思うんです。できないことが多いと、何でも憂うつになります。例えば、自分が取材に行く時でも、何を聞けばいいのかよくわからない状態で行くよりも、自分で積極的に調べて、『ここをポイントとして広げたら面白いかな』とポジティブに頭を切り替えていくと、すごく楽しい方向に進んでいく。子育ても同じだと思うんですよね」
庭野デスク
「小島さんのように育休を11か月取るという男性。まだまだ少ないんですよね。厚労省の2022年の調査では、民間企業で働いている男性で妻が出産した人のうち、育休を取得した割合は17.13%。2割に届いていないんです」
「小島さんが育休を実際に取れた理由については、小沢さんは何か取材で気づいたことがありますか?」
小沢記者
「一番ポイントだと思ったのは上司の理解です。小島さんが育休を取りたいと考えた時に、『本当に休めるのか?』という不安があったそうなんですが、上司が既に育休を取ったことがある男性だったので、すごく話しやすかったと」
庭野デスク
「ノルウェーで行われた調査なんですが、夫の同僚とか兄弟が育休を取得した人も一定程度育休を取りやすいそうですけれども、上司が育休の経験者である場合には、さらに男性の育休取得率が高まるそうなんです」
小沢記者
「あとは育休を取った男性が孤立しないよう、周りが応援する体制もありました。パーソルホールディングスでは3月19日に『男性育休サポーターズ』という、会社内の有志の人が集まって作った団体の発足式がありました。そこでは、主に男性の社員たちがオムツ替えの講習を受けていたんです」
庭野デスク
「独身のうちから練習したことがあったら、ちょっとハードルが下がるかもしれないですね」
小沢記者
「伊藤忠商事では、妻の出産後1年以内に、夫の5日以上の育休取得を義務づけました。“育休を取るか、取らないか”という議論を飛ばして、具体的に“いつ取るか”の議論に進めることで、育休取得への理解を進めるとともに、キャリアと育児・家庭の両立をサポートしていきたいそうです」
「情報通信機器メーカーのOKIでは、1か月以上の育休を取った場合、育休を取った人の業務をサポートした社員たちに最大10万円を支給します。これによって、会社として『育休を取得したい』と言い出しやすいような空気をつくっていきたいということです」
庭野デスク
「代替の要員がなかなか来ないわけですよ。休んだ人の仕事を周りが助けてあげないと回らないので、周りの人への支給っていうのはこれからも広がっていく可能性がありますね」
「今年の新入社員を対象にした調査では、給与とか勤務地と同じか、それ以上に福利厚生を重視して企業選びをしているという結果も出ているんです。つまり、本当に今、人手不足でいい人材が来ない時に、『男性の育休取得率が高いですよ』となった場合には、働き方改革がちゃんと進んでいるというメッセージになるんですね」
小沢記者
「小島さんの奥様の綾子さんからは、『育休を取得していなかった1人目2人目の時はずっと子どもと一対一なので、ちゃんと話をできる人がいなかった』『それで会話がなくなってしまうのがすごく寂しく感じた』という話がありました。一方で、『育休を取得した時は育児についての会話がすごく増えて、不安な気持ちとか課題を見つけたら、一緒に話し合って解決するように動けた』とおっしゃっていたので、親子関係、パートナーとの関係、両方にとって育休を取得することがすごくプラスになると思います」
庭野デスク
「政府は2025年には男性の育休取得率を50%にするという高い目標を掲げています。実現するためには、長時間労働の解消が必要だなと思いますね。なるべく昼間のうちに効率よく仕事をして、夜はもう帰る。私も小沢くんに連絡しちゃいますけど、なるべく夜は電話したり、メールしたりしないっていう世の中が当たり前になっていけば、子育てや介護などの事情がある人、ない人、誰もが仕事と私生活の両方を充実させられる社会になる。そのきっかけとしての男性育休というふうに思います」