新発想の介護"楽しさ"重視 意外な異業種アイデアで介護職員の負担を軽減
いまや日本の人口の10人に1人が80歳以上と高齢者の割合が増え続けています。これに伴い高まるのが介護のニーズですが、いま異業種から介護事業に参入する企業が注目されています。その"独自のアイデア"とは…?
カラオケや体操でお金を稼ぐ!? "やらなければいけない"から"やりたい"にする仕掛け
とある場所に取材にいくと、お気に入りの演歌を朗々と歌い上げる人たちがいました。和気藹々とした雰囲気ですが、カラオケスナックや同好会ではありません。お隣には、体操のコーナーで体を動かす人達も。実は、ここは高齢者向けのデイサービス施設。しかも、介護の分野とは全く異なる"異業種が作った施設"だというのです。
デイサービス リゾートアロハ 安江吉弘FC事業部長:
「元々うちパチンコ店をやってて、接客なのでパチンコ屋さんも、この接客とサービスを何とか利用できないかということで、デイサービスをやってみましょうと」
その一日には異業種ならではの仕掛けがいっぱいありました。
利用者が集まっていた部屋では、トレーニング代わりに洗濯物をたたんでいるのかと思いきや、御礼にお金をもらっています。実は、この施設では施設内専用のお金「レア」が用意されていて、このレアを稼いだり、使ったりすることができるのです。カラオケも、95点以上を出せば200レア。体操は、参加するのに500レアかかりますが、やりきれば1000レアもらえます。様々な取り組みを、やらなければいけないことではなく、やりたいことにする仕掛けなのです。
デイサービス リゾートアロハ 墳原智之施設長:
「お客様同士で自分たちでされるので、こちらからお手伝いしなくても、みなさんで完結している。とても楽しそうに見えますし、こちらも助かっています」
利用者がその日何をしたいか自分で決めてすごす事で、職員の手が空く時間が増え、負担を減らせているというのです。
高齢化が進む日本で必要不可欠な介護の人材。厚生労働省の調査によりますと、団塊の世代が75歳以上になる2025年に向けては、243万人が必要とされていますが、なかなか集まりきらないのが現状です。担い手を増やすためのカギの一つが、負担感をどう減らすか。専門家によると、異業種が果たす役割は大きいといいます。
介護政策に詳しい ニッセイ基礎研究所 三原岳 上席研究員:
「安全性が第一の職場なので、(既存業者は)新しいことをやるよりも現状を守りたがるんですよ。異業種が参入することによって、いろんなイノベーション、現場の革新が起きるのはメリットだと思います」
車いすが坂道で楽々 自動車部品のノウハウを生かして負担軽減
その変化は、介護施設以外でも。ある異業種の参入で「画期的な機能がついた」という車椅子。ハンドルについているスイッチ押す前と後で動作が全く異なり、特に坂で違いが分かるといいます。
成人男性を車椅子に乗せて、たった一人で押し上げるのは結構大変。ところが、スイッチを押すと、ほとんど力を使わなくても軽々進むように。スピードはもちろんですが、一番の違いは、押している時の姿勢です。スイッチオフの方では、体を低く下げてかなり踏ん張らないと押せないのに対し、スイッチを入れれば体を起こした状態でもラクに押すことができています。開発したのは、自動車部品大手のジェイテクト。
ジェイテクト アクティブ・ライフ事業部 川上義剛さん:
「中にセンサーが入っていまして、押し具合を検知して、それに合わせてアシストする力が変わります」
実は車での技術を応用したものです。右へ左へ、軽いハンドル操作で車が動くのは、電動パワーステアリングという、システムのおかげ。ジェイテクトはこのシステムの世界シェアナンバー1。車椅子に転用して今年春に売り出したところ、売れ行きは好調。個人宅での利用が多いといいます。
ジェイテクト アクティブ・ライフ事業部 川上義剛さん:
「乗る人は押す方の重荷になってしまうのをとても気にする人が多くて。気兼ねなく介助者にも声かけして外に散歩に出かけたりできるようになったという嬉しい言葉を頂いています」
今後需要が広がると見込まれる、介護・福祉の分野。異業種の存在感も増していくのでしょうか。