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【密着】 「宇宙から地球を見たい!」 旭丘高校天文部の挑戦、 “気球”を成層圏へ!名物部長がテレビ生出演で語った感謝と夢「多くの人に宇宙の魅力を身近に感じてほしい」

2024年11月9日 7:00
【密着】 「宇宙から地球を見たい!」 旭丘高校天文部の挑戦、 “気球”を成層圏へ!名物部長がテレビ生出演で語った感謝と夢「多くの人に宇宙の魅力を身近に感じてほしい」

名古屋市東区の『愛知県立旭丘高等学校』天文部が成し遂げた、“宇宙”から見た“地球”の撮影。その成功の裏には、たゆまない努力と知力でさまざまな困難を乗り越えてきた”チームの絆”がありました。目指したのは、地上から1万メートル以上も離れた雲の上の世界。天文部員たちが高校生活を懸けて挑んだ、宇宙への挑戦に密着しました。

高校生が宇宙に挑む!「宇宙から地球を見てみたい」

2024年7月末、夏休み中の学校で行われていたのは、パラシュートを使った実験。真剣に話し合っているのは、名古屋市東区にある『愛知県立旭丘高等学校(以下:旭丘高校)』の天文部に在籍する生徒たちです。高校生活をかけた“ある挑戦”をしていました。

「到達したことのない成層圏という世界を見てみたい」

同校の天文部の生徒たちが目指していたのは、地上から1万メートル以上も離れた雲の上の世界。カメラを取り付けたバルーンを、“宇宙の入り口”成層圏まで飛ばし、地球の映像を撮影しようというのです。

その名も、「スペースバルーンプロジェクト」。なぜ、宇宙を目指すことを決めたのでしょうか?その理由について、天文部員の一人は「天文って星を見るのが主だけど、“地球を見ること”も天文なんじゃないかと思って」と答えます。地上から星を観測するのではなく、“宇宙”から“地球”を見てみたいと思ったそう。

軌道の計算もお手の物!知力を駆使して課題を解決

天文部のなかでも人一倍、宇宙LOVEな生徒が、天文部の部長を務める2年生・山田真寛さんです。「天文・宇宙大好きなので、今日はしっかりNASAで決めてきました!」と、NASAをイメージしたTシャツで現れた山田部長。

宇宙好きも相まって、スペース(宇宙)とまさひろの“まさ”をとって、部員たちからは“スペマサ”と呼ばれています。そんな“スペマサ”率いる天文部は、ただ宇宙が好きなだけではありません。

「ここから打ち上げたとすると 上空へ気球が上がって…」と、パソコンを見せながら説明していたのは、本プロジェクトでシミュレーション係を担う部員。さらにホワイトボードでは、「パラシュートがあって、質量がmだとしてmgの力が働いています」と、計算係を担う部員がペンを片手に複雑な計算式を書き連ねていきます。

旭丘高校は、愛知県屈指の進学校。最新技術を使えば、軌道の計算もお手の物。

計算係の部員が求めていたのは、パラシュートのサイズ。「ある速度で落下してほしいときに、どれだけの大きさのパラシュートがいいか」と、サイズも論理的に導き出していきます。

旭丘高校は、理数教育に力を入れる、「スーパーサイエンスハイスクール」として文科省に指定。学びの強みをいかし、宇宙に挑戦します。

資金については、クラウドファンディングなども活用。天文部顧問・成田英宏教諭は、「本気になると16~17歳の子でも、ここまでできるんだなと。それぞれの思いがぶつかったときに間をとったり、そういうところも含めてまぶしい。まぶしい、本当にまぶしい」と、部員たちの生き生きとした様子に笑顔を滲ませます。

1年近く取り組まれてきた同プロジェクト。打ち上げ直前になっても、まだ課題が残っていました。

成層圏から地球を撮影したあと、パラシュートで降りてくる計画のカメラ。秒速4mほどの、ゆっくりとした速度で落下してほしいのですが、パラシュートがうまく開きません。

「もう少し、北の壁側の方から飛ばしたらどうだって」と、部員たちに提案する山田部長。さまざまなアイデアが出るなか、山田部長が部員たちの意見をまとめ、現場を動かします。

その後の実験で、うまく開いたパラシュート。その様子に部員たちからは感嘆の声があがり、山田部長からは「今のはまごうことなき・・・美しい」と喜びの声がこぼれます。

パラシュートの落下速度は、部員曰く「だいたい秒速4m」。「無事、計算通りのスピードでした」と話す山田部長をはじめ、部員たちに安堵の表情を浮かびました。

バルーンは成層圏に到達できるのか!?

2024年10月13日、ついに迎えた打ち上げ当日。午前4時、部員たちは、二手に分かれました。

伊良湖岬では、山田部長率いる打ち上げチームが着々とバルーンを飛ばす準備を行います。そして、浜松市内の漁港では、カメラの回収メンバーが待機。海に落ちるカメラを、漁船に乗って回収するという計画。こちらは、打ち上げ成功を祈るしかありません。

「ガスの注入開始します。」、「手袋OK?軍手OKですね?」など、打ち上げ準備のかけ声が響く伊良湖岬。バルーンが順調に膨らみ、そのときが近づいてきました。

空も明るくなってきた午前5時半。天文部の夢が詰まったバルーンが、ついに空に飛び立ちました。「いってらっしゃい!」、「がんばれー!」「とんでけー!」など、地上からバルーンにエールを贈る部員たち。

果たして、カメラを取り付けたバルーンは、成層圏に無事到達し、地球の映像を撮影することはできるでしょうか…!?

撮影成功!歓声と拍手が沸き起こる

「こちらのデータもこのようなうねりをして、確実に静岡の方へ向かっています」と、パソコンでバルーンの様子を観察する山田部長。経過は順調のようです。

一方、浜松市内の漁港では、カメラの回収チームが漁港を出発していました。出航から約2時間、ついに海に浮かぶバルーンを発見。

「よかった、よかった!」と、船の上で回収チームは抱き合いながらカメラ発見の嬉しさを分かち合います。

無事回収することができたカメラ。漁港では、打ち上げ地点から合流してきたメンバーたちが回収チームを出迎えます。カメラを格納したラジオゾンデを運ぶ部員からは、「すごい、この重みが今までやってきた重みのように感じます」という声も。

みんなのもとへ帰ってきたカメラ。地球の映像は、撮影できていたのでしょうか。

「動いてるけど・・・画面がいったな」と、慎重にカメラからデータの入ったカードを取り出す山田部長たち。パソコンにデータを移して、中身を確認します。

真剣な眼差しでパソコンの画面を見つめる部員たち。

画面に撮影された映像が映し出されると、「おーーーーー!!!!」、「エグい!!!!」と大きな歓声が沸き起こりました。撮影は見事成功!その映像がこちらです。

伊良湖の波打ち際を映していたカメラがみるみる上昇。

成層圏に到達し、宇宙から地球をとらえます。

「これはもうフルサクセスなんじゃないですか?!」と、部員たちに呼びかける山田部長。その声に応えるように、部員たちから大きな拍手と喜びの声があがります。

無事、成功を収めた「スペースバルーンプロジェクト」。

「最初はできたら面白いよねくらいのつもりだったんですが、実際にやるぞって盛り上がっていたら、いつの間にか仲間が集まって、最終的にこれだけの仲間に支えられてここまで来ることができた」と、仲間への感謝と心境を明かした山田部長。続けて、「高校生でもできるのであれば、意外と宇宙って身近だと感じてもらえると思います」と宇宙への思いを語りました。

名物部長が生出演!「多くの人に宇宙の魅力を身近に考えてもらいたい」

2024年11月4日、中京テレビ「キャッチ!」スタジオに、“スペマサ”こと、『旭丘高校』天文部の山田真寛部長が生出演!「スペースバルーンプロジェクト」を通して感じたことや宇宙への思いを語りました。

「いろんな人に支えられてここまでもってこれた」と、プロジェクト成功について感謝を述べた山田部長。今回の挑戦にかかった費用はざっと50万円以上、残ったお金は次号機の研究費用にまわす予定だといいます。

“宇宙から地球を見たい”という思いから始まった壮大なプロジェクト。挑戦しようと思ったキッカケは、同校の天文部が掲げるモットーにあったといいます。

元々、部活内でみんなで協力して大きなミッションを出来ないかと考えていたという山田部長。「僕たちの部活のモットーは何なんだろうと考えたとき、(それは)“多くの人に宇宙の魅力を身近に考えてもらうこと”。そのためには何ができるのかと考えたとき、自分たちで(カメラを宇宙に)飛ばして、その世界を皆さんに見てもらうことだと思いました」と挑戦のキッカケを明かしました。

山田部長曰く、「パラシュートの落下速度や重量の問題」など、さまざまな困難にぶつかってきた同プロジェクト。打ち上げ日の延期もそのひとつでした。

実は当初、打ち上げは2024年8月20日を予定していましたが、風向きなど天候上の都合から延期。

当時の心境について、「(8月)20日は打ち上げる予定で、直前まで準備をしていましたが、もし不慮の事故などが起きた場合に、市街地に落下してしまう。そのような問題があったとき、大きな事故に繋がることもあるし、もし事故起こしたら、今後このような宇宙を目指していく学生たちに対する規制が強まったり、(学生たちの)道を狭めてしまうと思いました」と話す山田さん。

続けて、「それは僕たちがやりたい、“多くの人に宇宙を見せたい”ということから最も外れていること。それだけは、何としても防がなければいけない。苦渋の決断でしたが、安全第一で延期をしようと決断しました」と延期の経緯を明かしました。

「スペースバルーンプロジェクト」で撮影した“宇宙から地球を見た”映像は、旭丘高校天文部YouTubeにて公開中。また映像だけでなく、同プロジェクトでは、気温、気圧、湿度、放射線の強度など気象データも収集。それらのデータを集め、ひとつの映像にまとめた総集編の編集も進めているといいます。

小学校1年生の頃から、宇宙に興味をもっていたという山田さん。将来の夢について質問されると、「“スペマサ”と名乗っているので、NASAに入ることですね」と笑顔で答えました。

山田さん曰く、実は「校内で最大の部活」だという天文部。その部員数、なんと241人!どんな人でも参加できることを大切にしていることもあり、観測会だけ来る人や今回のようなプロジェクトに参加する人など参加スタイルは部員それぞれなのだそう。

「今回のプロジェクトを見て、多く部員が入ってくれたら嬉しいです」と笑顔を見せた“山田部長”。次号の挑戦については、「次は後輩が中心となるので、先輩としてサポートしたいです」と、天文部員たちへの思いを語りました。

最終更新日:2024年11月9日 7:00
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