両陛下7月モンゴル訪問へ 皇太子時代の訪問では慰霊や乗馬も
■両陛下 7月モンゴルへ 即位後3度目の親善訪問
──日本とモンゴルの外交関係樹立50周年を迎えた2022年にフレルスフ大統領夫妻が来日した際、大統領から両陛下に招待がありました。関係者によりますと、7月前半に訪問し、国家的な祭り『ナーダム』に出席される方向で調整が進められているということです。
天皇陛下は皇太子時代の2007年7月、モンゴルを訪問し、第二次世界大戦後に旧ソ連によって抑留され亡くなったおよそ2000人の日本人のための慰霊碑に献花されています。
天皇皇后のモンゴル訪問は初めてで、両陛下の国際親善訪問は、おととしのインドネシア、去年のイギリスに続いて即位後3度目となります。
──井上さんこのニュースをどう受け止められましたか?
ご訪問はモンゴルの招待に応える公式な親善訪問になります。両陛下の親善訪問はインドネシア、イギリスに続き、即位後3度目、天皇のモンゴル訪問は初めてになりますから、アジアの国々を大切にされてのことだと思いました。
■近くて遠い国だったモンゴル 皇太子時代からの親善
──改めてモンゴルの地図をみますと、こちらになります。
モンゴルは中国とロシアの間にある日本のおよそ4倍の広さの国です。人口およそ350万人です。13世紀にチンギス・ハンが大帝国を築き、その孫、フビライが中国全土を平定して「元」を興し、日本に来襲した「蒙古襲来」で知られます。
このモンゴルを2007年、天皇陛下は皇太子としてお一人で訪問されました。大相撲で多くのモンゴル人力士が活躍し、名前をよく聞く親しい間柄の国ですが、東西冷戦下では旧ソ連圏で、関係の厳しい、“近くて遠い国”でした。
終戦直後、旧ソ連によってシベリアに抑留された日本人のうち1万4000人が送られ、強制労働をさせられる中で寒さや飢えでおよそ2000人が亡くなりました。その慰霊碑が首都ウランバートルにあります。2007年の訪問で、天皇陛下はこの慰霊碑に供花し、両国の友好に尽くす元抑留者と会われました。
ニュースにあった「ナーダム」は、「革命記念日」から3日間にわたって行われるモンゴル相撲や競馬、弓を競うスポーツの祭典です。陛下は2007年の訪問で「ナーダム」の開会式に出席されました。
当時の大統領と一緒に馬にも乗り、またモンゴル帝国の都があったカラコルムの平原で遊牧民の伝統的な暮らしも体験されました。
──陛下のサングラス姿もそうですけれど、乗馬される姿を私たちが目にするのは珍しいですよね。
確かに珍しいシーンだと思います。外国で馬に乗られるのも珍しいですが、子どもの頃から乗馬に親しまれていまして、ごく自然な感じで乗られています。
また2022年にフレルスフ大統領が来日した際には、両陛下はモンゴルの伝統楽器「馬頭琴」のコンサートを一緒に聴かれました。
──こうした文化や伝統、暮らしというものを少しの時間でも共有されるということは意義深いことですよね。
■戦後80年の節目 “北方”の戦争犠牲者を慰霊へ
さきほどモンゴルでの慰霊の話が出ましたが、今年は戦後80年の節目です。天皇皇后両陛下の沖縄、広島、長崎、硫黄島の慰霊が検討されています。
平成の天皇だった上皇さまは、戦後60年の年にサイパン、戦後70年の年に南太平洋のパラオと、“南方”の犠牲者を海外で慰霊されました。
戦後80年の節目に、親善訪問の日程の中であっても、これまで天皇が慰霊していないシベリア、モンゴルの抑留者、“北方”の犠牲者に目を向け、追悼されるとみられ、その意味は非常に大きいと思います。
──こうした訪問で若い世代が、そうした歴史であたり両国の文化というものを知るきっかけになるといいですね。
改めてモンゴルに目を向けるということが大事だと思います。
【井上茂男(いのうえ・しげお)】
日本テレビ客員解説員。皇室ジャーナリスト。元読売新聞編集委員。1957年生まれ。読売新聞社で宮内庁担当として天皇皇后両陛下のご結婚を取材。警視庁キャップ、社会部デスクなどを経て、編集委員として雅子さまの病気や愛子さまの成長を取材した。著書に『皇室ダイアリー』(中央公論新社)、『番記者が見た新天皇の素顔』(中公新書ラクレ)