シートベルトが命を奪う?──危険な着用法をチェック チャイルドシートは年齢より「身長」…目安は?【#みんなのギモン】
そこで今回の#みんなのギモンでは、「シートベルト着用で死亡なぜ?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。
●その着用法 実は危険?
●年齢より身長 目安は?
「福岡市で18日、幼い2人の姉妹の命が失われた事故がありました。路線バスと軽乗用車が正面衝突し、軽乗用車に乗っていた7歳と5歳の姉妹が亡くなりました。2人は後部座席でシートベルトをしていましたが、腹部に強い衝撃を受けるなどしたということです」
「警察は、事故の衝撃によるシートベルトの締め付けが要因として考えられるとしています」
鈴江奈々アナウンサー
「かなりの衝撃だったと思われます。この事故の一報を聞いた時に、シートベルトを着用していたかどうかの情報が気になりましたが、着用していたということを知った時に、逆になぜ亡くなってしまったのかが大きな疑問でした」
近野解説委員
「どれだけの事故だったのか、その時車内でどういうことがあったのか。特に、シートベルトをしていたのになぜ、痛ましい結果になったのか。詳しく見ていきます」
近野解説委員
「シートベルトの締め付けが原因とみられる死亡事例は、過去にも起きています。2021年11月、埼玉・越谷市で追跡中のパトカーが民家のブロック塀に衝突する事故がありました。この事故では後部座席にいた越谷警察署の警部補(当時)が死亡しました」
「シートベルトで腹部を締め付けられ、臓器を損傷したとみられています」
森圭介アナウンサー
「大人がシートベルトを着用していてもということは、着用法が悪かったということになるんですか?」
近野解説委員
「そういうことが考えられますよね。改めて確認しておきたいのは、シートベルトはつけるべきものということです。全ての座席で着用が義務付けられています」
「ただ、警察庁と日本自動車連盟(JAF)の調査によると、去年の後部座席のシートベルトの着用率は、一般道の場合43.7%でした。半数以上の方が着用しないで乗っているのが実態で、かなり低いですよね。国も警察も着用を呼びかけています」
「警察庁によると、後部座席でシートベルトを着用しなかった場合、高速道路だと約25.9倍、一般道だと約3.3倍、それぞれ致死率が上がるというデータ(去年までの過去10年間)もあります」
「シートベルトは命を守るものです。ただ、正しく着用できていないと逆に命を奪ってしまうこともあります」
近野解説委員
「では、正しいシートベルトのつけ方はどのようなものでしょうか。正しくつけていない写真を見てみます」
「写真では、肩のベルトが首にかかっている状態です。首にあまりにも近いと、衝撃があった時に首の損傷につながる恐れがあります。また、腰のベルトがおなか(へそ)の上を通っていて、衝撃で内臓を損傷する危険性があります」
「浅く腰かけて、おしりが前に出るような状態になってしまうと、こういう状態になりがちです。正しくは、深く腰掛けることが大事です。肩のベルトは鎖骨の中央から肋骨と胸骨を通るように、腰のベルトは腰の骨を横断するようにつけてください」
刈川キャスター
「内臓の上ではなく、骨の上に当たるようにというのがポイントなんですね。ただ車に乗っていると、大人でも窮屈になって動いてしまうので、ずれてしまいます。お子さんとなると、より(骨に)当てるのが大変です」
近野解説委員
「(子どもに)『おとなしく座ってて』と言うのは、私も実体験としてあります」
近野解説委員
「子どもにシートベルトをさせる時、気をつけていることはありますか?」
鈴江アナウンサー
「2歳の次男はチャイルドシートでがっちりと緩みなく固定します。ただ、長男は小学5年生なので普通に大人と同じようにシートベルトですね」
森アナウンサー
「(身長が低いと肩のベルトが)首にかかるので、それを嫌がって動かしてしまいます。ちゃんと(シートベルトを)しているかどうかを、ミラーで確認しながら運転しています」
近野解説委員
「チャイルドシートは法律でどうなっているか。義務付けられている年齢は6歳未満です。だからといって6歳になったらチャイルドシートを使わなくていいかというと、そうではありません」
「チャイルドシートなしでシートベルトだけを使うには、身長140センチに達している必要があります。自動車メーカーのホームページを見ると多少バラツキはありますが、JAFが推奨するのは140センチです」
「どうしても身長が低いと首やおなかにベルトが来てしまうからです。そもそもシートベルトは大人向けに設計されているのが基本なので、小さい子どもが着用すること自体が難しいです」
近野解説委員
「ただ、正しくない状態で使っているケースはかなり見受けられますよね。2023年JAF/警察庁チャイルドシート使用状況全国調査によると、義務付けられているチャイルドシートやジュニアシートの使用率は1歳未満が92%ですが、1歳~4歳は78.7%です」
「問題は、5歳になると55.5%と5割ほどに減ってしまっていて、小学生に至っては21.9%(2013年3月実施のJAFユーザーアンケートより)と激減していることです」
河出アナウンサー
「5歳だとチャイルドシートを着用する義務があるとは思いますが、義務がとれたら外すという方が多くなってしまうんですかね?」
近野解説委員
「どちらかというと、身長のことよりも年齢のルールが浸透しているようで、6歳になったらもう卒業するという方も多くいます。5歳でも『そろそろいいかな』という方が多いのかもしれません」
近野解説委員
「年齢でいえば小学生などは違反にはなりませんが、問題は身長です。小学生の平均身長(令和4年度、文部科学省の学校保健統計)を見ると、JAFが推奨する140センチに達するのは女の子だと小学5年生(10歳)、男の子だと小学6年生(11歳)です」
「JAFは、正しくシートベルトを使える身長140センチ以上になる時期までは、年齢を問わずチャイルドシートやジュニアシートをぜひ使ってほしいと呼びかけています」
鈴江アナウンサー
「シートベルトをしていれば大丈夫と思っていたんですが、年齢じゃなくて身長をまず意識するというのは、とても勉強になりました」
森アナウンサー
「6歳未満ではないからもう平気なのかと思っていましたが、ルール自体を見直す余地はあるのかなという気はしますよね。6歳未満ではなくて140センチまでは、など」
近野解説委員
「確かにそういう見直しの1つのきっかけになるデータかもしれません。ちょっと近所までだから、スピードを出さない道だから、子どもがどうしても締めてくれないなど、シートベルトを正しくつけずに走る理由はそれぞれあるのかもしれません」
「ただ、重大な結果が起きてからではとにかく遅すぎます。どうか今一度、正しい着用を心がけていただきたいと思います」
(2024年8月20日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)