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こどもが意見を言える! こども基本法成立

2022年6月18日 5:38
こどもが意見を言える! こども基本法成立

ブラック校則や部活での暴力なども問題になる中、全てのこどもが自立した個人として健やかに成長できる、意見を言うことができるなど、こどもの権利を定めた「こども基本法」が6月15日、国会で成立しました。社会全体でこども施策に取り組むと掲げています。

こども基本法は、こどもに関する施策に取り組む際の「基本的な理念」を定めるもので、国の責務などを明らかにしています。

第一条には、日本国憲法や(日本政府が1994年に批准した)子どもの権利条約の精神にのっとり、全てのこどもが自立した個人として、ひとしく健やかに成長することができる社会の実現を目指すなどと明記されました。

そして、第三条には、こども施策の基本理念として、「適切に養育されること、生活を保障されること、愛され保護されること、その健やかな成長及び発達、並びにその自立が図られること、教育を受ける機会が等しく与えられること」などと書かれています。

そして第四条以降では、こうした理念に基づいて、施策を行うことは、国や地方公共団体の責務だとしたほか、企業や国民も努力するよう要請されています。

■こどもには意見を言う権利があると初めて規定

さらに、重要なポイントは「こどもには意見を言う権利がある」と盛り込まれたことです。

第三条に「年齢や発達の程度に応じて、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会及び多様な社会的活動に参画する機会が確保されること」「その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮されること」と明記されました。

つまり、こどもが自らの意見を言ったり、社会の様々な活動に参加したりする権利があるとし、大人はこどもの意見を形式的に聞くだけでなく、それを重んじること、と規定されました。

また、国や地方がこどもに関する施策を行ったり評価したりする場合、こどもや保護者などの意見を反映させるよう求めています。

■こどもが意見を言うと何が変わる?

日本が1994年に批准した「子どもの権利条約」は、子どもが意見を表明する権利を確保する、と規定し、国は、これらの規定を広く知らしめることを約束する、としていますが、実際には、こどもに意見表明権があることはあまり知られていません。

日本では、「こどもは大人に従うべきで、大人が決めることに意見を言ったり、反対することはよくない」といった傾向が根強くありますが、今回、初めて日本の法律で「こどもには意見を表す権利がある」と定められました。

こどもが意見を言う仕組みが作られ、考え方が浸透すれば、校則や新型コロナの影響による休校や授業、行事のあり方などを、児童・生徒が参加する形で考えることができるかもしれません。

また、学校の授業や部活、習い事や保育園など様々な場所での大人によるパワハラや暴力などに、こどもが声をあげることで、それを減らしていける可能性があります。

家庭でも、親への要望を遠慮せず言えるようにしたり、本当に塾に行きたいのか、進学先に納得しているのか、こどもの意見を聞いたり、旅行先を大人の都合だけでなくこどもと話し合って決めたり、といった工夫が考えられます。

■法の成立はスタートライン、予算は?

子育て支援の現場で働く人や研究者らで作る「こども基本法の成立を求めるプロジェクトチーム」は、会見を開き、待ち望んだ基本法の成立を「歓迎し、全ての関係者に心から感謝する」と述べた上で、「法の成立、施行から本当のスタートラインに立つ」と強調しました。

そして「こどもの権利や利益を守るための具体的な組織の形、人員配置、そこに予算をどれぐらいつぎ込むかが勝負」と述べ、こども関連の政策を充実させるには、年間8兆円が必要とも言われているとして、予算規模と財源のあり方を早く示してほしいと政府に求めました。

■政府の本気度は?

こども関連の政策の司令塔機能を持つ「こども家庭庁」が、来年4月に発足することも決まりました。

岸田総理は、「こども政策の予算倍増を目指す」と述べていますが、財源は示されていません。

消費税なのか、「介護保険」のように人々や企業から保険料を集める「こども保険」を創設するのか、別の方法があるのか? 予算確保にむけ、政府の本気度が試される形となります。